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1話 蘇生屋トルクのお仕事

小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品

📅 公開日: 2026/7/31 📚 シリーズ: 迷宮潜りの蘇生屋さん〜僕らの命はパンより安い〜 📝 5,080文字 🤖 AI創作支援作品 ✅ 全年齢

あらすじ

死んだ冒険者を蘇らせる事を仕事にする蘇生屋トルクは、今日も死体を探しにダンジョンへと潜る。人助け?いいや、ただの飯の種だよ。モンスター退治や宝探しみたいな夢もロマンもありゃしない。そんな冒険者の物語。

本文

「さーて、今日はあるかなっと…」

 薄暗い洞窟内に、男の呑気な声が低く響く。

 手にしたカンテラから漏れる橙色の光。

 ゆらゆら揺れるその光源が、剥き出しの土壁を不気味に浮かび上がらせる。

 歩みを進めるのは、トルクと名乗る中年男性だ。

 身につけているのは、傷だらけでツヤの消えた古びたプレートアーマー。

 足元を固める革靴も、幾度となく土を踏み固めてきたせいですり減っている。

 目の前に広がるのは、見分けのつかない無数の分かれ道。

 だが、男の脚に一切の躊躇はない。

 迷宮の構造を熟知した足取りで、淡々と深部を目指していく。

 静寂が支配する通路の脇。

 不意に、カンテラの光が一つの影を捉えた。

 倒れているのは男の死体だ。

 身にまとっているのは、まだ傷一つない新品同様の革の鎧。

 腰には小ぶりのショートソードが差してある。

 年齢は二十代半ばといったところだろうか。

 頭部から大量の血を流し、見開かれた瞳は焦点を失っている。

 うつ伏せで転がった身体には、すでに数匹の蠅がたかり始めていた。

 生臭い腐敗臭が鼻腔をツンと刺す。

 観察する目線は冷ややかだ。

「後頭部を一撃、か。見た感じ冒険者になって一月も経ってないな。

 …んじゃ、やるか」

 周囲へ視線を巡らせ、モンスターの気配がないことを素早く確認する。

 死体の横へ無造作に膝をついた。

 慣れた手つきで腰のポーチを探る。

 取り出したのは、怪しい薬品の入った小さなガラス瓶だ。

 親指で弾くようにコルク栓を抜く。

 躊躇なく、中の液体を死体の後頭部へ向けて振りかけた。

「『いお・いお・あむらと 命よ戻れ』」

 トルクの唇から、短い呪文がこぼれ落ちる。

 直後、ふりかけられた液体が淡い輝きを放ち始めた。

 まるで時間の針を逆回転させているかのようだ。

 岩肌にへばりついていた血の溜まりが、外傷へと吸い込まれていく。

 パックリと割れていた頭部の傷口が、みるみるうちに塞がっていく。

 ついに完璧な皮膚が再生を果たした。

 その瞬間、濁っていた死体の瞳に生々しい光が宿る。

「…うわぁっ!?」

 肺いっぱいに空気を吸い込み、若者が跳ね起きるように跳ね上がった。

 慌てふためく胸元を、トルクはどこか他人事のように眺めている。

「よう、運が良かったな兄ちゃん、早めに見つけて貰えて」

 死から戻ったばかりの青年に対し、男は何事もなかったかのように声をかけた。

「え、あの、あなたは…」

 青ざめた顔の若者が、震える声で尋ねてくる。

「あー、蘇生屋さんだよ。トルクって言うんだ。よろしくなルーキー」

 軽いノリで手をひらひらと振る。

 返ってくる反応は、いつも決まっている。

「え、あの…僕、死んじゃってたんですか!?」

「おう。後ろから頭を一撃でな。大方投石のトラップ踏んだんだろ。

 この程度で死ぬようじゃここから先は無理だな」

 事実を淡々と突きつけてやる。

「うっ…」

 若い顔が見事に歪んだ。

 図星だったらしい。

「んじゃ、ホレ」

 無造作に右手の掌を差し出す。

「え?」

 間抜けな声が返ってきた。

「え?じゃねぇよ。まさかタダで蘇らせてくれたと思ってんのか?

 こっちはこれが商売なんだよ。それとも兄ちゃん、死んだの初めてか?」

「あ、はい…」

 頭を掻きながら、困惑顔で身を縮める青年。

 世間知らずの新人にお説教タイムだ。

「だったら覚えておきな。蘇生屋に金は惜しむな。

 金ケチったら次から助けて貰えなくなるぞ」

「え、えっと…」

 慌てて腰のポーチを探り始める若者。

 取り出した小さな革袋が、頼りない音を立てる。

 中に詰まっているのは、わずかな小銭だけ。

「すいません、これしかなくて…」

 ハズレだ。

 心の中で舌打ちする。

 顔には出さず、ため息混じりに手を振った。

「全部よこせとは言わねぇよ。半分だ半分。

 多くても少なくても持ってる金の半分でいい。それが相場だ、覚えておきな」

 差し出された小銭の半分を、手際よく回収する。

「毎度あり。んじゃ、今日はとっとと上に戻りな。

 お前多分死んでから数日経ってるだろ。

 蘇生したてじゃ腹の中空っぽだからどの道今日はロクに動けねぇぞ」

 グウゥゥ、と盛大な音がダンジョン内に響き渡った。

 タイミングの良すぎる腹の音に、青年の顔が真っ赤に染まる。

「次からはもっと鍛えるか仲間を募って来るんだな」

「はい…」

 項垂れた背中が、薄暗い階段の向こうへと消えていく。

 足音が遠のくのを確認し、ポケットのコインを弄んだ。

「……チッ、しょっぺぇなぁ。まぁ、こんな階層で死ぬ奴ならこんなもんか。

 あいつが将来有名になった時に恩を売れるかもしれないし、投資と思うか…」

 ちゃり、と寂しい金属音をポーチに収める。

 カンテラの灯りを頼りに、トルクは再び薄暗い迷宮の奥へ足を向けた。

 ◇◇◇

 階段を少し下がると飯の種…もとい死体の数も増える。

 浅層とはあからさまに変わる空気の冷たさ。

 湿った土の匂いに混じり、特有の生臭さが鼻腔を突く。

 ダンジョンは下へ潜るほど実りが大きい。

 モンスターから剥ぎ取れる牙や毛皮は高値で跳ね上がる。

 壁面に覗く貴重な鉱石も一攫千金の夢を見せてくれる。

 ただしリスクは跳ね上がり、怪物どもの凶暴さも段違いだ。

 気配に神経を研ぎ澄ませ、エンカウントを器用に回避していく。

 足元に潜む危険を受け流しつつ歩くことしばらく。

 土壁の陰に転がる、鎧姿の白骨死体が目に飛び込んできた。

 骨の隙間にこびりつく、黒ずんだ僅かな腐肉。

 食い散らかされた末路なのは明らかだ。

 視線を落とすも、胸に湧き上がる感情は何もない。

 トルクは膝をつき、慣れた手つきで鎧の隙間を探る。

 引き抜いたのは、鎖に繋がれた冷たいネームタグ。

 裏面には、所有者の名前とダンジョンへの進入日付が刻まれている。

「一ヶ月過ぎたか…死体が無事でもどの道蘇生は無理だな」

 蘇生の限界点は一ヶ月。

 それを過ぎるか、あまりにも死体の損傷が激しいと奇跡は起きない。

 頭の中でギルドの掲示板を検索する。

 手元の日付と名前は、行方不明者リストの記載とぴったり合致した。

 身元判明の報告だけでも、懐に小銭が転がり込んでくる仕組みだ。

「ま、こいつも貴重な収入源だ。ありがたく頂戴させてもらうぞ。あとこれも…」

 手早くタグをポケットに回収する。

 腰のポーチを開き、蘇生薬とは別の小瓶を取り出した。

 白骨に向けて、無造作に聖水を振り撒く。

 シュウウ…と激しい蒸気が立ち上り、焦げた肉の臭いが鼻を突いた。

 骨の奥から解き放たれるように、淡い光が煙となって天井へ消えていく。

「とりあえずこれでゴーストやアンデッド化は防げた。さて、いくか」

 死体を背に、男は再び歩みを進める。

 さらに刻限を費やし、迷宮を歩き回った。

 掌の中でカチャカチャと音を立てるのは、数個のネームタグ。

「…足りない。これじゃ明日の飯代も厳しいな。

 しょうがない、もう少し下まで潜るか……」

 トルクは重いため息を吐き出し、深く暗い下層への階段を睨みつけた。

 ◇◇◇

 12階層まで潜ると、空気の質が一気に変わる。

 肌を刺す寒々しい温度。

 鼻を突く血の匂いも、上の階層とは比べものにならないほど濃い。

 ここが今のトルクにとって、安全に潜れるギリギリの限界点だ。

 それすら年々きつくなっている。

 衰えを感じずにはいられない。

 確か昔は、18階層まで平気で足を伸ばせたはずだ。

(カンテラの油も、そう残っちゃいないな)

 あまり長居はするべきじゃない。

 自分に言い聞かせ、慎重に踏み出していく。

 そのとき、泥に混じる赤黒い痕跡が視界をかすめた。

 血の跡だ。

 それは路地へ吸い込まれるように、道の脇まで延びている。

「止血ぐらいしやがれ。モンスターが寄ってくるだろうが」

 愚痴を吐きつつ、ぬかるむ足跡を追う。

 道の真ん中で力尽き、倒れ伏す若い男の姿が見えた。

 装備はそれなりに使い込まれている。

 だが、まだ新しい。

「襲われて逃げてる最中に力尽きたって所か…ん?」

 冷たくなった体を検分する手が止まる。

 男の握りこぶしから、怪しい赤光が漏れ出ていた。

 強ばった指を一本ずつ無理やり開く。

 掌に収まっていたのは、眩しいほど真っ赤に輝く鉱石だ。

「クルム鉱石か。当たりを引きやがったなコイツ」

 滅多に拝めない激レア鉱石だ。

 売れば、当分は食うには困らず暮らせるだけの金貨に変わる。

 死体から黙ってネコババする選択肢が頭をよぎる。

(まぁ、若い奴から搾取ってのもな)

 思考を切り替え、腰の小瓶へ手を伸ばした。

 薬を振りかけ、短い呪文を唱える。

「うわっ!」

 数分後、勢いよく上体を起こす男。

「よう」

 慣れた調子で軽く手を挙げてみせる。

「蘇生屋か…って事は俺死んだのか」

「おう、ご愁傷様だったな。そういうわけだ。

 俺もちゃっちゃと帰りたいから代金払ってくれ」

 トルクは無造作に右の掌を突き出した。

 だが、起き上がった男の表情が露骨に曇る。

 視線が泳ぎ、体全体で出し渋る気配を隠そうとしない。

「あ、いや…悪いけど、今ちょっと手持ちが無くて…」

 男はあからさまに、手に握った鉱石を背中へ隠そうとする。

 そのみっともない悪あがきに、冷ややかな視線を送った。

「現金が無いならその石でいいぞ。それ、半分に割って山分けで手を打とう」

「ふ、ふざけんなよ。これは俺が見つけたんだ!」

 青筋を立て、不満を爆発させる若い冒険者。

 トルクの眼光が一気に鋭さを増す。

「そっちこそふざけんな、だアホ。

 生き返らせてやったんだから持ってる物の半分は駄賃として払うのが相場なのは知ってるだろうが。恨むなら死んだ自分を恨めマヌケ」

「い、生き返らせてやったってなんだよ!そっちが勝手に生き返らせたんだろうが!そんな恩着せがましいことを」

「そうかい」

 ドスッ

 男が文句を言い終える前にトルクが死角から構えていたスティレットが若い男の喉元を貫いた。

「あ…お、ご……」

 男は血を口から噴きだし、後ろに倒れ込み暫く痙攣すると再び動かなくなった。

 死体の片手には、死角で鋭い殺意を放つナイフが固く握られている。

「正当防衛だ、悪く思うなよ。……ったく、蘇生薬一つ損しちまったじゃねぇか」

 溜め息とともに血のついた刃を拭う。

 重苦しい空気の底から、不気味な唸り声と湿った足音が這い寄ってきた。

 時刻はそろそろ夕刻。

 暗闇に潜む怪物どもが一斉に空腹を訴え、凶暴性を増す危険な時間帯だ。

「…潮時だな」

 転がる死体の手元から、血に汚れた赤い鉱石を容赦なく剥ぎ取る。

 カンテラを握り直し、早足でその場を後にした。

 背後から迫る気配はない。

 今の自分よりも、できたてホヤホヤの新鮮な肉がすぐ足元に転がっている。

 メキリと骨の砕ける嫌な音と、生々しい咀嚼音が暗闇に響く。

 それを合図に、トルクは一気に階段を駆け上がった。

 ◇◇◇

「ああ、こりゃ火打ち石だね」

「…は?」

 ダンジョンから帰還し真っ先に向かった鑑定屋で告げられた言葉に、トルクは固まった。

「よく似てるから間違えやすいんだよ。見てみな、ほら」

 小さなハンマーが鋭く振り下ろされる。

 カンッ、と乾いた音が室内に響いた。

 二つに砕け散った断面は、赤ではなく泥のような黒。

「表面の赤い奴はたまにある。それに、本物のクルム鉱石はもっと明るい赤だ。

 第一冷静に考えてみろ、12階層でそんなレア物が出てくるわけないだろ」

 鑑定士の容赦ない言葉に一気に徒労感が押し寄せてくるトルク。

「ま、丁度火打石が欲しかった所だし今日は特別に買ってやるよ。ほれ、毎度アリ」

 チャリ、と手のひらに転がり落ちてくるわずかな金属片。

 小遣い程度の小銭を手にし、トルクは鑑定屋を後にした。

 その足で向かった冒険者ギルド。

 受付のカウンターへ、回収したネームタグをまとめて放り出す。

 提示されたのは、スズメの涙よりちょっとマシレベルの報酬金。

 減りきった薬品の棚を前に、懐のコインが一瞬で消えていく。

 補充する分の蘇生薬と蘇生薬を買って残ったのは本当に小銭だけだった。

「………」

 重い足取りで石畳の街を歩く。

 どこからともなく流れてくる、香ばしい焼き上がりの香り。

 パン屋の店頭には、夕食の買い物客を狙って焼き立てのパンが店頭で売られていた。

 ゴクリと喉が鳴り、空腹の胃袋が悲鳴を上げる。

 提示された値札の数字に対し、手元の小銭はあまりにも心もとない。

「……はぁ」

 トルクは肩を落とし、根城にしている安宿への道を行く。

「明日もダンジョンに潜らなきゃならねぇなこりゃ…」

 人を蘇らせる秘法が確立した今、冒険者の命はパンよりも安かった。

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作者について

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思いつく限りの物を好き勝手にAIに書かせてます。主にファンタジー物がすき

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