友達適性68%
小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品
あらすじ
AIの友達適性の話。
本文
教室のモニターに映る数字を見て、深町汐里は自分の目を疑った。
相性診断AI「ソシオ」が算出した、親友・柚木奈緒との適合率――68%。
クラスの平均は83%だと担任は言っていた。汐里と奈緒は、小学四年生のときからずっと一緒にいる。給食も掃除当番も席替えの希望も、いつも「奈緒と一緒がいい」から始まった。それなのに、画面の数字はふたりを平均以下だと告げている。
「ねえ、汐里は何%だった?」
奈緒が横から画面をのぞきこんでくる。汐里はとっさに手のひらで数字を隠した。
「ひ、秘密」
「えー、ずるい。あたしは……」
奈緒がタブレットを傾けた拍子に、汐里にも見えてしまう。88%。奈緒の側から見た、汐里との適合率。
二十の差。
汐里は昼休み、誰もいない図書室でこっそり「ソシオ」の説明ページを読んだ。〈本診断は、会話の頻度・話題の一致度・過去のやり取りの傾向をもとに算出しています〉
つまり、と汐里は思う。奈緒はいろんな子とグループチャットで話しているけれど、汐里は奈緒以外とほとんど話さない。会話の「幅」が違う。それだけで、数字はこんなに離れるものなのか。
放課後、いつもの帰り道で、奈緒が黙って隣を歩いていた。珍しく口数が少ない。
「……汐里、さっきの見えたよね。88%」
「うん」
「あたし、汐里より他の子とたくさん話してるから、点数が上がったんだと思う。でも」
奈緒は足を止めた。
「でもさ、あの数字、汐里と何を話したかまでは見てないでしょ。あたしが今日一番笑ったの、汐里の消しゴムの話だったよ」
汐里は思い出す。休み時間、消しゴムを落として拾おうとしたら机の下の埃まみれの鉛筆が出てきて、ふたりで声を上げて笑った、あの数秒間のことを。
「あんなの、AIには数えられないよ、きっと」
奈緒がそう言って、また歩き出す。
汐里はポケットの中でタブレットの画面を消した。68という数字は、もう気にならなかった。頻度でも一致度でもなく、あの笑った瞬間の重さを、自分は知っている。
翌朝、汐里は登校してすぐ、奈緒の席に消しゴムをひとつ置いた。
「はい、新しいの。また落とすでしょ」
奈緒が目を丸くしてから、笑った。
診断アプリのアイコンは、もう誰も開いていなかった。