その4:2026年7月19日日曜日・G県N市駅前周辺「原アイラは蹴っ飛ばす!」③の表紙画像

その4:2026年7月19日日曜日・G県N市駅前周辺「原アイラは蹴っ飛ばす!」③

小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品

📅 公開日: 2026/8/31 📚 シリーズ: 1999年からの警告:「謎を解かない系探偵」原アイラは蹴っ飛ばす! 📝 4,937文字 🤖 AI創作支援作品 ✅ 全年齢

あらすじ

Kindle電子書籍「心(理×)霊カウンセラー」のスピンオフ第2弾 街の何でも屋。自称探偵・原アイラが今度は蹴っ飛ばす!? 「謎を解かない系探偵」が挑む1999年からの警告とは?

本文

=3=

夜闇の路地。 数秒前――おそらく7.45秒前まで、そこにあった風景は間違いなく、 7月20日深夜、ないし早朝近くの3時20分前後のG県N市にある“ただの深夜の路地”だった。

だが、今は違う。その場はただ真っ白。 夜闇も消え去り、明るい“どこか”へと、数秒の間に場所は、場面は変わっていた。

「?」

急激な様相の変化に、長身の男は声なく戸惑い、 何が起きているのか理解できないかのように、 周囲を【ババババババ】と見まわしている。それは男自身がしていることなのか、 それとも男に憑いている“モノ”がしていることなのか。

だが、その点は―― 4.2メートル離れた場所に立つ原アイラにとってはどうでもいいことだった。

重要なのは、 “自身の作り出した異界という領域に引き込み、これからそれを処分すること”。 その方法こそが、彼女にとって最優先なのだ。

(表に見えないのなら、中にいるってことだよな。)

被害届の行列に並んだ時、順番待ちの間に聞こえてきた 「顔には何か真っ黒なものが巻き付いていて見えなかったんだって」 という話。

だが、目の前の男の顔は、この真っ白なアイラの領域の中でははっきりと見える。

整えられた髪。 フチなしの眼鏡。 面長だが、気持ち顔幅が広くも感じる“どこにでもいそうな大人の男の顔”。

ただ――目だけは違う。一言で表現するならば、「何を見ているかわからない」

男の目の奥には金色の輝きがある。 それによって「ネガティブ情報の生霊」に憑かれていることは明白だ。だが、目の奥ではなく“目全体”から受ける印象には、 思わず身構えてしまうような、不気味さがあった。

――だが。(ま、いっか。) アイラは男と対峙した数秒の思考、そのすべてを【ぽい】と丸めた紙をゴミ箱に放るかのように投げ捨てた。

ここに引き込めば、このあとやることは決まっている。 前回は「人間を滅した」が、今回はあくまで「生霊を滅する」のが目的だ。

憑かれた人間は警察に突き出し、あとは“生きているか死んでいるか微妙なこの国の人間の法”の下で量刑を判断してもらえばいい。

アイラは一度スッと肩の力を抜き、 まだどこか篭に放り込まれた虫のように周囲を【ババババババ】と見まわしている長身の男に声をかけた。

「さて、これはアンタに聞いても仕方ないかもしれないけどさぁ。」

両肩を前後に【くるくるり】と回しながら、男を見据えるアイラ。 声を掛けられたことで、慌ただしく動いていた男の視線は、頭は、首はぴたりと止まり、 ゆっくり【ぬーん】とその視線をアイラへ向ける。二人が遭遇して初めて、 はっきりと視線を合わせたのは、この時が初めてだった。

アイラの正面斜め下から【ナンダヨコノヤロー】と見上げるかのように鋭く刺す視線を向ける男。 それを、正面斜め上から【ノッペロローン】と見下ろすかのように、 以前として“何を見ているかわからない”視線で受け止める男。

アイラは、この“見下ろされている状況”に少しムッとしていた。 だが、彼女はまだ、自分の言葉――問いの続きを持っている。

「アンタさ、世界が本当に終わるって、思ってるのか?」

この言葉。 大多数の人間なら、会話の流れの一つ程度にしか聞こえないだろう。 だが、それはどうやらこの男にとって――いや、この男の中にいる“ネガティブ情報の生霊”にとって、 何らかの“切替点”のようだった。

ジッと立っていた男は、その言葉にピクリと反応すると、 左手に持った大型ナイフをスッと持ち直し、 見るからにはっきりと “殺意を表明” した。そして同時に、あの呟きの詠唱も、思い出したかのように再開する。

「…が…わ……も……い。 せ……いが…お…る…ど…う……い。」

「せか…お……らど……もい。 …かいが…わ…な…ど…で……い。」

「…いが…わ…る…も……い。 せか……お…る…ど…う…も…い。」

「せかいがおわるならどうでもいい。せかいがおわるならどうでもいい。」

「うるせぇ!!」

小さな声の呟きだが、アイラにはそれが強烈に耳障りだった。 思わず【ダァアアン】と地面を一度強く踏みしめ、 男――いや、生霊の“殺意表明”に答えるかのように、 スッと静かにその場で身構えた。

ただ――

(憑かれているとは言っても、相手はただの人間。相当手加減しないとなぁ……)

内心アイラは、【フゥウウウウウウウウウウ】と8秒。 本気を出せないことへの、大きく長い溜息をついていた。

◇◆◇

この真っ白な世界、“アイラの作り出した異界の領域”の中は、異界ではあるが驚くほど非常識ではない。重力、距離感、空気、臭い、味。すべて現実と変わらない。ただ一つ違うのは、その場がただ真っ白く広がる広い空間なことだけである。

視覚的に似ているとすれば、格闘ゲームにあるトレーニングモードのステージ。その壁を真っ白にした空間の中、アイラと長身の男は、人間離れプラス20%の機敏な動きの攻防を繰り返していた。男の大型ナイフ攻撃を軽く躱し、一定の間合いを取って攻撃に転じるアイラ。だがアイラは自身の攻撃をワザと相手に当たらないよう、相当手加減をしている様子だった。

(生霊だけを、この男の中から引き摺り出すには…まずはあれを試してみるか。)

そんなことを考えながら、人間離れプラス20%の動きでナイフを振り、薙ぎ、突きを繰り返す彼の攻撃を躱し続けるアイラ。

一般的な人間の通常の動きは、脳のリミッターにより能力の60%程度に抑えられている。それを超える安全な限界値はおよそ80%。これを超えた動きは筋肉、腱、関節の過負荷によって怪我をするリスクが一気に高まる。

この男を見る限り、日々トレーニングを積んで体を鍛えているようには到底見えない。 そんな彼に、生霊はこれだけの動きをさせている。

そしてこれだけの動きをしている中で、男の目は気味が悪いほど【ずん!】と据わっている。 そのギャップが、彼の異質さと不気味さを増しているのだが――男はただの人間。この戦闘を長引かせるのは、長身の男の体にかかる負荷を考えると避けるべきだ。

「せかいがおわるならどうでもいい。せかいがおわるならどうでもいい。」

男のボソボソした言葉は、体への負荷と運動量に対する呼吸の高まりで、 はっきりと聞こえるほど大きくなっている。そのトーンではなく、“言葉そのものに”アイラは言い知れない苛立ちを覚えていた。

それはこの男に対してではない。 そして、この男に取りつく「ネガティブ情報の生霊」に対してでもない。その先にあるもの―― あのときのアムリタで、真城ナミが語った言葉。

『怖い話は好きですし、そんな話も最初は興味を持ってワクワクしながら見ていられたのですけど…… だんだん違和感を持つようになったんです。 私って、怖い話を、都市伝説を楽しむために動画を見ていたはずなのに、 毎日【人類滅亡、大災害、逃げ場なし】って…… サムネイルにも大きく不安を煽るような言葉が書かれていて、 何だか見ている人を終末論へと強く誘導しているように感じて、 違和感もそうなんですけど、何だかホラーの怖さとは別の意味で怖く感じるようになったんです。』

アイラが苛立ちを感じているのは、 人の持つ 『否定性偏向、 負の情報への偏り、 悪い情報に引っ張られる心のクセ 』を利用して注目を集め、 その結果、自らも生霊に取り憑かれ、 それを世間にまき散らした配信者たちの承認欲求。

ナミの言った 「滅亡ビジネス」 に手を染めた者たちへの苛立ち―― そして怒りだった。

「せかいがおわるならどうでもいい。せかいがおわるならどうでもいい。」

「やっかましい!!」

アイラのその声は、いつもにない強烈な怒声。 市内のバンドに所属するボーカル担当として、時に余興で出している“1秒のデスボイス”そのものだった。

彼女の見た目からは想像できない破滅的怒声に驚いたのか、 長身の男は【ビィクウ】と一瞬体を跳ね上げ、 素早く間合いを取ろうと後へ飛んだ――

しかし、間合いを開けたはずのアイラの姿が見えない。

男は後ろに飛んだはずなのに、 前にいたアイラの姿がどこにも見当たらないのだ。

その静まり、7秒11――

「おぶ!?」

7秒12。 男は両腕、腰、頭を“何者かの手”に捕まれていることに驚く。それもただ掴まれているのではない。 両腕は【ガシッ】と羽交い絞めにされ、 腰は【グイポ】と抱え込まれ、 頭は【グワッシ】と鷲掴みされ、完全に動きを封じられている。

そのギリギリと締め上げる強烈な力で男の手には力が入らず、 左手の大型ナイフはスルリと滑り落ち、 白い床に当たって【カンコロカーン】と音を響かせた。

「なあ、えーっと、誰だっけ? ま、いっか。」

その声は、男の背後から聞こえた。 驚かされた“デスボイス”ではなく、この数分間何度も聞いている女の声。

だが――この状況。 何かがおかしい。

なぜ腕、足、頭を同時に絞められている? 3人なら理解できる。 だが、1人でどうしてこんなことができる。

これができるとしたら、腕が六本なければ、 同時に腕・腰・頭を絞め、抱え、掴むことなど不可能だ。

そして――

「せか、せか、なか」

ギリギリと絞められる男の体。 その背後には、この白い空間の中にいたもう1人――アイラがいた。

目に見えぬ間に男の背後へ回り込み、 アイラの腕が男の体をがっちり締め上げているのだ。だがそれは、アイラの体が長身の男に強く密着することになる。

「せか、せか、なか」と【ジタバタジタンダ】する男の言葉は、 背中に密着するアイラの“大きく柔らかいもの”の感触を言っている―― のかもしれない。

「……ああ、これはサービスな。 あとさ、名も知らねぇアンタに言っても仕方ないかもしれないけどさ、 アンタは世界が終わる世界が終わるって言ってるけど、 世界は終わらないし、お前が壊すほど世の中やすくは出来ていねーんだよな〜これが。それにさ……」

アイラは、掴んだ男の頭をグイッと引き寄せ、その耳元に囁くように言う。

「世界が終わるわりに、やることちっせえよな。 大事にされてもそれは困るけどさ、ちっせえわりに大迷惑。 しっかりお仕置きしてやらねぇとな。」

アイラの息遣いが聞こえるほどの近さで囁かれたその言葉には、 皮肉、嫌味、怒り、呆れが複雑に入り混じっているものの、 どこか“諭すような柔らかさ”も含まれていた。

だが、その続きは――

「ユサヴワァッ!!!!!!」

耳元の囁きは一変し、 男の頭の中を【グオンダルガオンダラ】と強烈に飛び交い、 酷い頭痛を誘発するような“振動”を引き起こす。声量は大きくない。 だが、男の耳を突き抜け、脳を強烈に揺らす!!

「ぐvっはっかkっかkkっかkっかあ」

あまりにかけ離れた“脳への衝撃”に、 男の声は言葉として成立しない絶叫となり、 【ヴォェベロヴォェ】と嘔吐のような音を激しく漏らす。 ただし、この時は嘔吐はしていない。

絶叫が【スン】と止むと同時に、 長身の男はその場でくたっと気絶し、 ガクリと膝から崩れ落ちていった。

アイラは、倒れないように男の体を緩く支え、そのまま楽な姿勢で白い床へ寝かせた。

そして――

「さて、宿主はもう動けなさそうだぜ。 お前が中にいることは分かってるんだ。 そろそろ出て来いよ。」

アイラがそう声をかけると、男は一度【ビックーン】と体を震わせ、 【ぬんうんうんうんぬうんうーぬん】と嘔吐するかのような音を漏らしながら、 真っ黒な粘液と布と金属の塊のようなものを吐き出した。

それらは【ずんぬうんうんうぬうぬぬーん】と蠢きながら、 サッカーボールほどの球状の塊へと変化していく――その瞬間!

【ドーン!】

アイラは勢いよく、その球体を手加減なしで踏みつけた。 逃がさないためとはいえ、 どこか“見えない遠くまで投げ捨ててきたかのような”容赦のない踏み込みで、 ある意味では同情すら覚えるほどの勢いだった。

「なるほど、真っ黒だ……」

真っ黒の塊。 それを見下ろしたアイラは、 「まったくそれらしい」とニヤリと笑みを浮かべ、 事件の現況となったそれを「どう料理してやろうか」と、本来の修羅の形相――“怒り”のまなざしで見下ろしていた。

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作者について

井越歩夢:IGOSHI/WALKER

井越歩夢:IGOSHI/WALKER

2024年よりkindle電子書籍の個人出版業、Web小説家、AIコラボレーター活動を開始。 kindle無料ランキング2ジャンルで1位獲得経験あり。 小説家になろう・カクヨム・あいぺん・アメブロ...

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