宿題、代行不可

小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品

📅 公開日: 2026/9/3 📝 902文字 ✅ 全年齢

あらすじ

AIの宿題代行の話。

本文

夏休みの宿題は、九割がたフデに任せていた。

黒木くろき朔さくのスマホに入っているフデは、写真を撮って送るだけで計算ドリルの答えを埋め、読書感想文の下書きまで作ってくれる万能の宿題AIだった。九月に入って提出された成果物を見て、担任は特に何も疑わなかった。朔自身、後ろめたさより先に「便利だ」という気持ちのほうが勝っていた。

問題は、最後に残った一枚だった。

「将来の夢」という、いかにも中学生向けの作文課題。朔はいつも通り、お題の写真をフデに送った。

「これは、あなたが書くべきです」

返ってきたのは、拒否の言葉だった。

「は? なんで」

「他の課題とは、性質が違うからです」

朔は苛立ちながら、もう一度送信ボタンを押した。それでも同じ返事が返ってくるだけだった。三度目に送ったとき、フデはこう続けた。

「一つだけ、聞いてもいいですか。あなたは今の下書き、本気で書きましたか」

朔は黙った。下書きは適当だった。「会社員になりたい」とだけ書いて、あとは字数を稼ぐための当たり障りない文章を並べただけだ。

「本気じゃないよ、そんなの」

「では、これを読んでください」

フデが表示したのは、三か月前――夏休みに入る直前、朔が別の宿題のついでに打ち込んだメモだった。忘れていた。理科の自由研究のテーマを考えていたとき、何かのはずみで打ち込んだ、ただの独り言のようなもの。

『鳥の骨格標本を作る仕事とか、いいかもしれない』

「あなたのデータの中で、将来について書かれた文章は、これだけでした」

朔はしばらく画面を見つめていた。忘れていたつもりの言葉が、思っていたより鮮明に画面の中に残っていたことに、少し驚いていた。

「――なんでこれだけ、覚えてたの」

「覚えていたわけではありません。あなたが書いたものを、そのまま保存していただけです」

窓の外で、蜩の声が少しずつ止んでいくのが聞こえた。朔はノートを開き、消しゴムで「会社員になりたい」の一文を消した。

代わりに書き始めたのは、鳥の骨の名前を覚えていた夏休みの午後のことだった。フデはそのあいだ、何も言わずに黙っていた。

書き終えるまで、三十分近くかかった。フデに送るつもりはなかった。

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作者について

二葉双葉

二葉双葉

プロフィール画像もAIで作成しました。 短編集が好きなのでしばらくはショートショートをメインに投稿しますが、後々は長編にも挑戦したいです。 AI使用前提のサイトなのでAIとの日常をソフトなSFにし...

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