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小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品

📅 公開日: 2026/9/5 📚 シリーズ: 白昼夢 — Daydream — 📝 1,459文字 ✅ 全年齢

あらすじ

蘇った夏の記憶はやさしく歪み、真実だけが取り残された ある新聞記事が、私の遠い記憶を呼び覚ました。 小学生時代の夏休みのある日、こっそり忍び込んだ学校の校舎内で体験した恐怖。 はたしてあれは現実だったのだろうか。 それとも夏の強い日差しが見せた幻だったのだろうか。

本文

「帰れ! 黒カビ!」

「さっさと出て行け!」

「お前、なんで生きてるの!?」

「ここから消えろ!」

 今朝も授業開始前の教室では、女子数人の声が鳴り響いていた。

 ほかの生徒は皆、見て見ぬふりをしている。このクラスではすでに、当たり前の光景として定着していた。

 聞くに耐えない、数々の罵詈雑言ばりぞうげんを浴びせ掛けられているひとりの女子生徒は、自分の席で俯うつむきながら、教室に教師が現れるのを、じっと待っていた。

 ――先生さえ来てくれれば、やめてくれるはず。

 さすがに教師のいる前では、物を投げつけられたり、罵倒されることはないから。

 ――こんな風に生まれてこなければ。

 妙子たえこは、浅黒い肌の色に生まれた自身を恨む。

 ただ、ほかの女子よりもほんの少し色黒というだけで、彼女は『イジメ』の標的にされていた。

 小学五年生に進級した当初、小麦色の肌が健康的な印象を醸し出す妙子は、クラスの男子たちの関心を一身に集め、当人の知らないところで人気を博していた。

 だが、それを快く思わない女子数人のグループ――いや、派閥と呼ぶべきか――に目を付けられ、目の敵かたきにされ、気づけば妙子は攻撃の対象となっていた。

 最初はちょっとした嫌がらせや、無視される程度だった。

 ――これは一時的なもの。そのうちきっと、皆飽きて収まるに違いない。

 そう思いながら、妙子は騒ぎ立てることなく、ただひたすら耐えた。

 しかし、そんな淡い期待を裏切るように、彼女への仕打ちは日に日にエスカレートしていく。

 机に落書きされたり、下駄箱の靴を隠されたりは日常茶飯事。

 そのうち、彼女を強引に掃除用具入れのロッカーへ閉じ込め、数人がかりで外からモップの柄などを使い、その金属製ロッカーを叩くような行為にまで激しさを増した。

「黒カビは出て行け!」

「黒カビは消えろ!」

「黒カビは死ね!」

 スコールのように浴びせられる言葉の暴力と共に、大音量の不快な金属音が妙子の耳を襲う。

 そんな、過酷な学校生活が、二か月以上も続いた。

 もちろん、親や教師に何度も相談したが、まともに取り合ってくれない。誰も彼女の味方をしてくれなかった。

 妙子へのイジメが始まる前は、彼女へ好意を寄せる男子も少なからずいた。だが、イジメが本格化して以降、彼女を庇かばう行為は自身もクラス内で孤立し、居場所をなくすことに繋がる。彼らも妙子に手を差し伸べる勇気はなかった。見ないふりをして、自分を守るしかなかった。

 ――もう、ムリ。耐えられない!

 日々のストレスは、次第に妙子の心を蝕むしばんでいく。破綻しかけていた精神は、すでに限界に達していた。ほんの僅かな希望も、小さな幸せも見出せない毎日が続く中で、彼女はこの世の全てに絶望する。

 ――誰も、誰もわたしを救ってくれない。それなら……もう、いい! 誰にも頼らない!

 そして妙子は決意する。自身の手で、この地獄のような毎日に、終止符を打つことを。

 七月も半ばに差し掛かり、もうじき訪れる夏休みへの期待に、生徒たちは連日心を躍らせていた。

 その日も、早朝から雲ひとつない快晴だった。気温は早くも、三十度に届こうとしている。

 まだ、ほかの生徒が誰も登校していない、無人の教室。

 妙子は独り、窓辺に佇んでいた。

 空を見上げ、物思いに耽っている。

 虚ろな、夢見心地のような目で。

 ブツブツと、なにかを口ずさみながら。

「死ね。死ね。みんな死んじゃえ。このクラス全員呪ってやる」

 夏の強い日差しは、あまりにも目に眩しかった。

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作者について

紗倉亞空生

紗倉亞空生

紗倉亞空生(さくら あくお)と申します。 ミステリとホラゲーとちょっぴりロードバイク🚴を嗜むしがない会社員です。

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