第4話:写真の日付
小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品
あらすじ
スマホに映るデスゲーム配信。 そこに映る参加者は、自分と寸分違わない顔をしていた。 配信終了と同時に自室は密室と化し、制限時間1時間の脱出ゲームが始まる。 唯一のヒントは「鏡は嘘をつかない。 だが、その向こう側は——」。天井裏で見つけたもう一つの鏡。 その向こう側へ手を伸ばしたとき、自分自身の存在そのものが揺らぎ始める——。 ※AIに本文を作成してもらうとどうなるか知りたくて考えた作品です
本文
白い視界の中に、無数の鏡が浮かんでいる。
足元もない。天井もない。ただ、自分の全身を映す楕円形の鏡が、周囲を埋め尽くしている。それぞれの鏡に映るのは同じ自分——だが、どれも表情が微妙に違う。恐怖に歪んだ顔。無表情な顔。泣き出しそうな顔。
そして、その中に一枚だけ、笑っている自分がいた。
「……っ」
無意識に後退しようとして、足が何も踏みしめられないことに気づく。浮いている。この空間そのものが、重力の概念を持っていない。体は自由に動くのに、地面を蹴る感覚だけが欠落している。
「ここは……どこだ」
声が反響しない。言葉が空気に溶けて、そのまま闇に吸い込まれていく。
背後から、かすかな足音が聞こえた。
振り返ると、もう一人の自分が立っていた。目の下の隈がさらに濃くなり、唇の色が青白く変色している。彼は壁の写真から出現した存在に触れた後、ほとんど言葉を発さなくなっていた。
「お前も……来たのか」
彼が頷く。その動作だけで、肩が震えているのがわかる。
「ここが、本当の『鏡の向こう側』だ」
彼の声は掠れていた。指で周囲の鏡を指す。
「この中から、正しいものを見つけなきゃならない」
「正しいものって……何がだよ」
「出口に繋がる鏡だ」
彼は一番近くにある鏡に手を伸ばす。指先が鏡面に触れた瞬間、映像が歪んだ。水面に石を投げ込んだように波紋が広がり、別の光景が映し出される。
そこには——モニターが並ぶ部屋があった。
無数のディスプレイが壁一面に設置され、それぞれに違う部屋の映像が映っている。どの画面にも、人間が映っていた。必死に逃げ回る者。壁を叩きながら叫ぶ者。ただ座り込んで泣いている者。
その中央で、スーツを着た男たちが笑っていた。
「視聴者数が跳ね上がってるぞ!」
「こいつは面白い。次はどうする?」
「もっと追い詰めろ。死ぬ瞬間が一番の見せ場だ」
声が聞こえる。鏡越しに、向こう側の音が漏れ聞こえている。
「なんだよ、これ……」
「運営だ」
もう一人の自分が、鏡の向こうを睨みつける。
「俺たちの苦しみを、金に変えてる連中だ」
モニターの一つに、見覚えのある部屋が映る。自分の部屋だ。天井からのアングルで、スマホが床に落ちているのが見える。視聴者コメントが右から左へ流れていく。
『次はどうなるんだろ』
『早くやれよ』
『つまんねえな』
コメントの横に、数字が表示されている。視聴者数——三万人を超えていた。
「三万人……」
呟いた瞬間、運営スタッフの一人がこちらの鏡を見た。顔を上げ、まっすぐに——こちらの目を見て——笑った。
「おい、そこの鏡に映ってるやつ、こっち見てるぞ」
その言葉に、他のスタッフも一斉に振り返る。全員が、同じ笑顔を浮かべていた。あの、写真の中の存在と同じ——底冷えするような笑顔。
「やっぱりな」
もう一人の自分が、唇を噛む。
「あいつらは、ここを見てる。俺たちがどこにいても、監視してるんだ」
鏡の中の風景が、さらに歪む。モニターの一つが拡大され、別の映像が映し出される。そこには——白い空間に立つ自分たちが映っていた。今、まさにこの瞬間の姿だ。
『選択の時です』
文字が浮かび上がる。タイムスタンプは、残り三十四分後を示していた。
「選択って……何を選べってんだ」
「日記に書いてあっただろ」もう一人の自分が、ポケットから古びた日記を取り出す。
『鏡を壊せ。そうすれば、どちらかが救われる』
——その文字を指でなぞる。
「この言葉の意味が、わかった気がする」
「まさか……俺たちのどちらかを犠牲にしろってことか?」
「違う」彼は首を振る。
「あの日記を書いたやつも、ここに辿り着いたんだろう。そして、同じものを見たんだ。運営の連中を——このゲームの本当の姿を」
彼は顔を上げ、まっすぐにこちらを見る。
「鏡を壊すってのは、物理的な鏡じゃない。この構造そのものを壊せってことだ。俺たちを監視して、笑いものにしてるあの連中の——支配の構造を」
その言葉が、胸の奥に刺さる。
「でも……どうやって」
「わからない」
彼が苦笑する。
「だが、少なくとも一つだけわかることがある。あいつらは、俺たちが鏡を通じて何かをすることを恐れている」
彼が指を差した先に、一枚の鏡があった。他の鏡とは違う。表面が曇っていて、何も映していない。
「あれが、多分——」
彼が言いかけた瞬間、空間全体が揺れた。
無数の鏡が一斉に波打ち、映像が乱れる。運営の制御室の風景が消え、代わりに現れたのは——あの写真の中の存在だった。
不気味な笑顔が、すべての鏡に浮かんでいる。
『こっちにおいで』
声が、頭の中に直接響く。耳ではなく、脳の奥底に染み込んでくるような、冷たい声。
「来るな!」
もう一人の自分が、叫ぶ。彼の体が震え、顔色がさらに青ざめていく。
「あれに触れたら終わりだ。存在を——消される」
鏡の中の笑顔が、ゆっくりと手を伸ばす。鏡面を突き破って、白い空間に指先が現れる。その指が、こちらを指差す。
『お前は、もうここにいる。逃げられない』
笑顔が、さらに広がる。口の端が耳元まで裂け、歯がむき出しになる。
「くそっ……」
後退しようとして、また足が空を切る。逃げ場がない。周囲すべてが鏡で囲まれ、どこを見てもあの笑顔が映っている。
『選択の時だ』
声が、空間全体に響く。
『どちらかが救われる。どちらかが——消える』
鏡の中の存在が、両手を広げる。右手の先に映るのは、もう一人の自分。左手の先に映るのは、自分。
「やめろ……」
もう一人の自分が、声を絞り出す。
「俺たちは、同じ存在だ。分かれただけだ。だから——」
彼が、こちらを見る。その目に、何かを決意した色が浮かんだ。
「お前が、生き残れ」
「何を——」
「日記には『どちらかが救われる』と書いてあった。ならば、俺が消える」
彼が、鏡に向かって歩き出す。その背中を、笑顔の存在がじっと見つめている。
「待てよ!」
叫んでも、彼は振り返らない。
「俺は、もう長くないんだ」
彼が、かすれた声で言う。
「最初から、わかってた。お前と会った時から——俺の存在は、もう消えかけていた」
彼の体が、半透明になり始めている。輪郭がぼやけ、向こう側の鏡が透けて見える。
「だから——せめて、お前だけは」
彼の指が、曇った鏡に触れる。
その瞬間、鏡の表面が砕けた。
ひび割れが走り、ガラスが砕け散る。破片が白い空間に舞い、すべての鏡が同時に割れ始める。
『な——に——』
笑顔の存在の声が、歪む。鏡の破片が、無数の光を反射し、空間全体が眩しい光に包まれる。
「行け!」
もう一人の自分が、叫ぶ。彼の体は、もうほとんど見えない。輪郭だけが、かすかに浮かんでいる。
「鏡を壊せ——本当の意味で!」
光が、すべてを飲み込む。
視界が白く染まり、音が遠のく。体が浮遊感に包まれ、どこかに引きずり込まれていく。
最後に聞こえたのは——視聴者コメントの音だった。
『本当に行くべきじゃなかったのに』
その声が、誰のものか——わからなかった。
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