【35番外】鍵の記憶
小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品
あらすじ
ChatGPTと一緒に制作した、「時環遊技場」短編集です。 舞台は、未来都市・郊外第9区。昭和の手打ちパチンコから平成中期のCR機までが残る古い遊技場に、人間、ロボット、アンドロイドが集まる。そしてそこでは時々、不思議なことが起こる。ちょっと懐かしくて、少し不思議なパチンコ店の物語。
本文
古い遊技場の管理をしていた人物から、店主は一本の大きな鍵束を譲り受けた。
「もう店はないんです。台も全部なくなりました。でも、これだけは捨てられなくて」
鍵束には、大小さまざまな鍵がついていた。小さな札に台番号が書かれているものもあれば、文字が擦れて読めなくなっているものもある。
店主はその中の一本に指を触れた。
すると、古い遊技場の光景が浮かんだ。
開店前の店内。まだ客のいない遊技場で、店員がその鍵を使って一台の扉を開けている。内部を確認し、扉を閉め、もう一度鍵を回す。
次の鍵に触れる。
今度は昼間の店内だった。常連客がいつもの台に座り、玉の音が途切れず響いている。店員がその台の前で立ち止まり、客と二、三言葉を交わしている。
また別の鍵には、故障した台を店員が開けて修理している記憶。
別の鍵には、閉店後の店内。
客が帰り、明かりの落ちた遊技場で、店員が一台ずつ扉を閉めていく。鍵を回すたび、小さな金属音が響く。
一本一本、記憶が違っていた。
「……全部、いろいろな店の記憶があるね」
店主はしばらく鍵束を眺めた。
最後に残った一本に触れる。
そこにあったのは、その遊技場が最後に営業した日の記憶だった。
最後の客が帰り、台の電源が落とされる。店員が最後の台を閉め、管理人が鍵を一本ずつ確かめていく。
やがて、すべての鍵が一つにまとめられた。
誰もいなくなった店内を、管理人がしばらく見渡している。
そこで、記憶は途切れた。
店主は現実に戻ると、その鍵束を時環遊技場の鍵棚へ持っていった。
時環遊技場には、古い台も多い。もちろん、今ある台の鍵と合わないものもある。
それでも店主は、一本も外さなかった。
「これはスペアにしましょう」
対応する台がない鍵を、従業員アンドロイドが不思議そうに見る。
「店主。こちらの鍵には、対応する遊技台がありません」
「そうだね」
「では、保管する必要は?」
店主は鍵束を棚の奥へしまった。
「いつか必要になるかもしれないからね」
それが本当にスペアキーとして使われる日が来るのかは、店主にも分からない。
それでも、時環遊技場の鍵棚には、現役の台を開ける鍵と一緒に、もう存在しない遊技場の鍵が並ぶことになった。
開ける扉のない鍵。
それでも店主にとっては、どれも捨てる理由のない鍵だった。
作品統計
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