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【39番外】 歌うパチンコ台たち

小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品

📅 公開日: 2026/9/10 📚 シリーズ: 時環遊技場 📝 2,801文字 🤖 AI創作支援作品 ✅ 全年齢

あらすじ

ChatGPTと一緒に制作した、「時環遊技場」短編集です。 舞台は、未来都市・郊外第9区。昭和の手打ちパチンコから平成中期のCR機までが残る古い遊技場に、人間、ロボット、アンドロイドが集まる。そしてそこでは時々、不思議なことが起こる。ちょっと懐かしくて、少し不思議なパチンコ店の物語。

本文

午後の時環遊技場。

店主はカウンターの奥で、従業員アンドロイドの音声データを更新していた。

「最近、店内アナウンスの種類が増えましたからね。ちょっと整理しておきましょうか」

営業時間の案内、台の呼び出し、遊技上の注意、閉店のお知らせ。

長年使い続けてきた音声データには、少しずつ追加されたものが積み重なっている。

店主は古いデータを確認しながら、必要なものだけを新しい音声データベースへ移していった。

「はい。これで大丈夫でしょう」

「音声データの更新を確認しました」

従業員アンドロイドが立ち上がる。

「では、発声テストをお願いします」

「承知しました」

一拍。

「Daisy, Daisy, give me your answer do……♪」

店主の手が止まった。

「…………」

従業員アンドロイドは、そのまま何事もなかったように歌い続ける。

「I’m half crazy, all for the love of you……♪」

店主はゆっくり顔を上げた。

「……あのう」

「はい」

「今、歌いましたよね?」

「はい。発声テストです」

「いやぁ、発声テストなのは分かるんですけどね。どうしてデイジー・ベルなんでしょう?」

「確認します」

従業員アンドロイドが数秒ほど停止する。

「……原因不明です」

「そうですかぁ」

店主が音声データを確認していると、少し離れたところで遊技していたDJ-Spinが振り返った。

「その曲、気になるから調べてみていいですか?」

「どうぞ」

DJ-Spinはホログラム端末を空中に展開した。歌声を拾わせると、すぐに曲名が表示される。

DAISY BELL(BICYCLE BUILT FOR TWO)

「Daisy Bell……?」

DJ-Spinが検索結果を読み進める。

「……え?」

さらに画面をスクロールする。

「これ、めちゃくちゃ昔の曲じゃん!」

店主が画面を覗き込む。

「そうみたいですねぇ」

「十九世紀!???」

DJ-Spinはさらに検索結果を読む。

「……あ。これ、1961年にコンピューターが歌った記録があるんだって」

DJ-Spinは少し意外そうに従業員アンドロイドを見る。

「へえ。コンピューターが歌った、すごく昔の歌なんだ」

その話を聞いていた常連客が、遊技台から顔を上げた。

「何の話?」

「すごく昔の歌らしいですよ」

近くの常連ロボットも、ホログラム端末を覗き込む。

「コンピューターが歌った?」

「そう。かなり古いコンピューター」

「へえ……」

その声を聞きつけ、ほかの客たちも集まってくる。初めて来た客たちは、何事かと周囲を見回していた。

「何か始まったんですか?」

皆がざわざわし始めたその時。店の奥から、小さな電子音が聞こえた。

「Daisy……♪」

全員が振り返った。一台の古いパチンコ台。誰も触っていない台のスピーカーから、もう一度。

「Daisy, Daisy……♪」

「…………」

DJ-Spinが目を見開く。

「え?」

店主も台を見る。

「……歌いましたねえ」

常連ロボットが台の横まで移動する。

「この台に歌唱機能はあったか?」

「ありませんねぇ」

初めて来た客が台を指差す。

「……パチンコ台が歌った?」

「そうみたいですね」

「なんでそんなに落ち着いてるんですか!?」

店主は少し困ったように笑った。

「いやぁ、私も驚いてますよ」

その時。別の台から声がした。

「……give me your answer do……♪」

「また!?」

さらに奥の台が続く。

「I’m half crazy……♪」

「増えた!」

一台。また一台と、古いパチンコ台のスピーカーから、次々と歌声が聞こえ始める。

同じ曲なのに、音程もテンポもばらばらだ。

「Daisy……♪」

「Daisy, Daisy……♪」

「……all for the love of you……♪」

店内が一気に騒がしくなる。

「何これ!?」

「故障じゃないのか?」

「いや、隣の台も歌ってるぞ!」

「ちょっと待って、私の台まで!?」

常連客たちは笑いながら台を見回し、常連のロボットやアンドロイドたちは、それぞれの音声ログを確認し始めた。

初めて来た客たちは、完全に置いてきぼりだった。

「店主さん!」

「はい?」

「これ、普通なんですか!?」

店主は歌い続ける台を眺めた。

「いやぁ……これは私も初めてですねぇ」

「初めて!?」

DJ-Spinは、そんな騒ぎの中でもホログラム端末を操作していた。

「待って。これ、さっきの話と関係あるんじゃない?」

「さっきの話?」

「コンピューターが歌った曲でしょ?」

DJ-Spinは店内を見回した。パチンコ台の中には、昔の制御基板や音声回路が組み込まれているものもある。

「……この子たちも、コンピューターじゃん」

店主が一瞬、黙った。

そして歌っている台を見る。

「……そうですねえ」

一台の台が、

「Daisy, Daisy……♪」

と歌う。その隣の台が、

「Give me your answer do……♪」

と続けた。

DJ-Spinが嬉しそうに笑う。

「もしかして、仲間だと思ってるのかな?」

「さあ……どうでしょうねえ」

店主は歌っている台を眺めながら、少しだけ笑った。

「コンピューター同士、何か通じるものがあったのかもしれませんねえ」

しばらくすると、歌声は何事もなかったように止まった。

店内には、何とも言えない静けさが戻る。初めて来た客たちは、まだ呆然としている。

「……今の、何だったんですか?」

「私にも分かりませんねぇ」

店主はそう答えながら、少し楽しそうに笑った。

その横で、DJ-Spinは満足そうに録音データを確認していた。

「よし。全部録れた」

「全部ですか?」

「はい。台ごとにちょっとずつ違ってて面白いんです」

DJ-Spinは録音データを再生する。

「Daisy……♪」

「Daisy, Daisy……♪」

「……give me your answer do……♪」

「これ、今度のライブで使おうかな」

「まあ、お客さんが楽しむのなら、いいんじゃないですかねぇ」

「やった!」

その日の閉店時間。

店内に蛍の光が流れ、最後の客が帰っていく。

従業員アンドロイドが閉店処理を終えた。

「本日の営業は終了いたしました。ご来店、ありがとうございました」

店主が照明を落とす。

「今日は変な一日でしたね」

「はい」

「明日には直ってるといいですね」

「そうですね」

店主はカウンターへ戻りながら、今日のことを思い返していた。

古い歌。十九世紀の曲。それを歌ったアンドロイドと、パチンコ台。

そして、その歌を録音して明日のライブで使おうとしているDJ-Spin。

「……ふふ」

店主は小さく笑った。

そのまま何気なく、鼻歌を口ずさむ。

「Daisy, Daisy……♪」

数歩進んだところで、店主の足が止まった。

「…………」

自分が何を歌っていたのかに気づく。

「あら」

店主は少しだけ照れくさそうに笑った。

「私まで歌ってましたねぇ」

そう言って、今度こそカウンターへ戻っていった。

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作者について

蘇轍

ぱちんこは、「遊ぶための機械」でありながら、「機械そのものを眺めるための機械」でもある。

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