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第十九章 白銀の静寂と継承の灯

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📅 公開日: 2026/9/13 📚 シリーズ: 百年越しの春スローバーン編 📝 10,624文字 🤖 AI創作支援作品 ✅ 全年齢

あらすじ

作者が、この物語をもっと深く、もっと長く朗読してもらいたいために、最初から書き直してもらった自己満足作品。 やはり自分のために書いてもらうのは違いますね。

本文

# 第十九章 前編一:白銀の静寂と継承の灯

 三学期の始業を迎えた学院は、一面の雪に、静かに覆われていた。

 あの初雪から幾日か経ったこの朝、降り積もった雪は、もはや、儚い名残などではなく、確かな厚みを持って、中庭の隅々にまで、その白さを行き渡らせていた。踏みしめるたびに、キュッキュッと乾いた音を立てる新雪の感触。息を吐けば、目の前が、白く、はっきりと曇る。校舎の瓦屋根にも、木々の枝という枝にも、丁寧に施された雪化粧が、まるで、この学び舎そのものを、静かに祝福しているかのように、輝いていた。

 千歳は、渡り廊下を歩きながら、その白銀の景色を、ゆっくりと見渡していた。

 窓越しに差し込む、冬らしい澄んだ陽光が、廊下の床に、長い光の帯を描いている。その光の中を、一歩、また一歩と、進んでいくたび、千歳の胸には、静かな、けれど確かな感慨が、満ちていった。

 この一年、随分と、多くの季節を、美月と共に、歩んできた。桜咲く春の始まりから、蝉の声が響く夏の高原、燃えるような紅葉の秋、そして、今、再び巡ってきた、この白い冬へと。その一つ一つの季節の記憶が、千歳の胸の内に、確かな重みを持って、積み重ねられていた。

 生徒会室に足を踏み入れると、そこには、既に、美月の姿があった。机の上には、これまでとは違う、新しい顔ぶれの名が記された、幾つかの書類が、丁寧に広げられている。

「おはようございます、美月様」

「おはようございます、千歳様」

 美月は、顔を上げ、静かな微笑みを浮かべた。その表情には、これまでの張り詰めた緊張とはまた違う、穏やかな、けれど確かな決意の色が、滲んでいた。

「次年度の生徒会役員の選出が、いよいよ、大詰めを迎えております。……こうして、後進へと、この務めを引き継ぐ準備を進めておりますと、改めて、この一年の重みを、実感いたします」

 その言葉に、千歳は、静かに頷いた。

「美月様が積み重ねてこられた、確かな実績の数々。それは、これから引き継がれる方々にとっても、何よりの、かけがえのない道標となることでしょう」

 美月は、机上の書類を、一枚、丁寧に手に取った。

「特に、この後任の会長候補の方には、これまで培ってきた、生徒一人一人に寄り添う姿勢を、しっかりと、受け継いでいただきたいと思っております。……制度や規則の運用だけではなく、その奥にある、確かな心の在り方を」

 その言葉には、この一年間、美月自身が、千歳と共に、幾度となく見つめ直してきた、あの理念が、確かに息づいていた。かつて、始業式の壇上で語られたあの言葉が、今、こうして、次の世代へと、静かに、けれど確かに、受け継がれようとしているのだった。

 千歳は、その横顔を、静かに見つめながら、胸の内で、静かに思いを巡らせていた。

 思えば、この一年前、千歳は、まだ、この見知らぬ時代の中で、自分自身の確かな居場所を、探し求め続けていた。あの、櫻葉の屋敷を訪れたときの、あの緊張に満ちた対面。当主の、値踏みするような視線。その先に待っていた、深い理解と、温かな受け入れ。

 あの日、雪見の間で、当主が、静かに、けれど確かに告げてくれた、あの言葉。

「……美月が、そなたを、これほどまでに、大切に想う理由が、よくわかった」

 あの言葉は、千歳にとって、ただの許しではなかった。それは、この百年後の時代において、初めて、家族という単位から、確かに受け入れられたという、揺るぎない証だった。

 過去に置き去りにされた、行き場のない存在ではなく、この時代に、確かな根を持つ、一人の人間として。美月という、かけがえのない存在の傍らに、これから先も、堂々と、立ち続けることができるのだという、その確信。

 冬の澄んだ空気の中、その確信は、これまでのどの瞬間よりも、はっきりと、千歳の胸に、根を下ろしているように感じられた。

---

 午後、生徒会の業務が、一段落した頃、窓の外には、再び、静かな雪が、音もなく、舞い始めていた。

 降りしきる雪片が、窓硝子の向こうを、ゆっくりと、けれど絶え間なく、流れ落ちていく。室内には、ストーブの柔らかな温もりが満ち、その心地よい暖気が、二人を、優しく包み込んでいた。

「随分と、積もって参りましたね」

 千歳の呟きに、美月は、窓の外を見つめながら、静かに頷いた。

「はい。……この分ですと、明日には、随分と深い雪景色が見られそうです」

 美月は、それから、資料を静かに片付けると、少し疲れたように、小さく息をついた。千歳は、そっと、その傍らへと、椅子を寄せた。

「お疲れのようでございますね」

「……はい。次の世代への引き継ぎを進めるたび、この一年の終わりが、確かに近づいているのだと、実感させられます」

 美月は、そう言いながら、静かに、その身を、千歳の方へと預けてきた。肩と肩が、そっと触れ合う。その重みに、千歳の胸が、静かに、けれど確かに、温かくなった。

「卒業という言葉が、これまで以上に、現実のものとして、胸に迫ってくるように感じます。……この学院で過ごした日々、皆様との出会い、そして、何より、あなたと共に紡いできた、この時間。それらすべてを、手放さねばならないのかと思うと、時折、胸が締め付けられるような心地にもなります」

 その素直な吐露に、千歳は、静かに、けれど確かな想いを込めて、美月の手を取った。

「美月様」

「はい」

「卒業という日は、決して、何かを手放す日ではございません。……それは、これまで積み重ねてきたすべての時間を、確かな礎として胸に抱きながら、新しい未来へと、共に、一歩を踏み出す、その始まりの日でございます」

 千歳の声は、静かでありながら、これまでのどの言葉よりも、確かな芯を持っていた。

「この学院での日々が終わりを迎えても、私たちの絆は、決して、そこで途切れるものではございません。……あなたの、ご両親が、あの雪見の間で、私を、確かに受け入れてくださったように。私たちの想いもまた、これから先、どのような形の未来であろうとも、変わらず、共に在り続けます」

 その言葉に、美月の瞳から、静かな涙が、こぼれ落ちた。

「千歳様……」

 千歳は、そっと、その涙を、指先で拭った。そして、静かに、けれど確かな力で、美月の体を、優しく抱き寄せた。

「どうか、恐れないでください。……卒業という扉の向こうにも、私は、必ず、あなたと共におります。この胸に抱く想いは、どのような時の流れにも、決して、色褪せることはございません」

 美月は、その腕の中で、静かに、けれど深く、頷いた。

「はい。……あなたのその言葉が、これから訪れる、どのような未来をも、恐れずに、迎える勇気を、私に与えてくださいます」

 窓の外では、雪が、なおも、静かに、絶え間なく、降り続けていた。その白い静けさは、まるで、この部屋に満ちる、二人の確かな絆を、優しく祝福しているかのようだった。

 二人は、しばらくの間、抱き合ったまま、その静謐な冬の午後の時間を、深く、確かに、分かち合い続けていた。降り積もる雪の一片一片が、これから訪れる、まだ見ぬ未来への、静かな、けれど確かな、祝福の証であるかのように。

ーーー

# 第十九章 前編二:後輩たちの眼差しと積雪の黄昏

 引き継ぎの作業が、いよいよ大詰めを迎えたその日、生徒会室には、次年度の役員候補となる、幾人もの後輩たちの姿が、集まっていた。

 窓の外には、相変わらず、静かな雪が、絶え間なく降り続けている。室内には、ストーブの温もりと共に、これまでの一年間を締めくくる、確かな緊張と、それでいて、温かな親しみに満ちた空気が、静かに流れていた。

 美月は、これまで積み上げてきた記録簿や、日々の運営における細やかな心得を、一つ一つ、丁寧に、後輩たちへと伝えていった。

「規則というものは、確かに、この学院を支える大切な柱でございます。……ですが、何より大切なのは、その規則の奥にある、一人一人の生徒の想いに、耳を傾けることでございます」

 その言葉に、次期会長として選出された、一年生の少女が、静かに、けれど確かに頷いた。彼女は、しばらくの間、言葉を選ぶように、俯いていたが、やがて、意を決したように、顔を上げた。

「あの……この一年、会長様と、白城先輩の元で、生徒会の活動に携わらせていただきましたこと。本当に、貴重な経験となりました」

 その声には、隠しきれない、深い感謝の色が、確かに滲んでいた。

「私、去年の春、入学したばかりの頃、右も左もわからず、この学院に、うまく馴染めるかどうか、とても不安でございました。……ですが、会長様が壇上で仰った、あのお言葉を、今でも、はっきりと覚えております」

 少女は、静かに、続けた。

「一人では成し得ないことも、誰かと支え合うことで、確かな力へと変わる。……あのお言葉を聞いた瞬間、この学院でなら、きっと、大丈夫だと、そう思えたのです」

 その言葉に、美月の瞳が、静かに揺れた。

「そして、あの春の親睦茶会。あの温かな香りと調べに、どれほど心が安らいだことでしょう。それに、あの秋の学園祭、後夜祭でのご挨拶。……会長様が、この一年間、どれほど、私たち一人一人のことを、真摯に考えてくださっていたか。今、こうして引き継ぎをさせていただく立場になり、あらためて、その重みを、実感しております」

 別の役員も、静かに、言葉を継いだ。

「白城先輩の存在も、私たちにとって、大きな支えでございました。会長様の隣で、いつも、静かに、けれど確かに、寄り添っていらっしゃるお姿。……そのお二人の信頼関係を拝見するたび、私たちも、こんなふうに、誰かを信じ、支え合っていきたいと、そう思うようになりました」

 その言葉に、千歳もまた、静かな感慨を、胸に抱いていた。

 この一年、確かに積み重ねてきた歩みの一つ一つが、こうして、次の世代の胸にも、確かに、根を下ろしていたのだった。過去を敬い、今を誠実に生き、未来へ希望を繋ぐという、あの建学の精神が、今、まさに、目の前で、確かな形として、受け継がれようとしていた。

 やがて、少女たちの一人が、丁寧に包まれた、小さな包みを、そっと差し出した。

「これは、生徒会の皆で、心を込めて用意したものでございます。……会長様と白城先輩への、感謝の気持ちを込めて」

 美月は、その包みを、静かに受け取り、丁寧に開いた。

 中には、一冊の、手作りの冊子が、収められていた。表紙には、丁寧な筆致で、感謝の言葉が、綴られている。頁を開くと、そこには、この一年間、生徒会に関わった、幾人もの生徒たちからの、寄せ書きが、隙間なく、書き込まれていた。

 それぞれの、素直な言葉。共に過ごした日々への感謝。そして、これから旅立つ二人への、温かな祝福の言葉。

 美月は、その頁を、一枚、また一枚と、静かにめくっていった。その指先が、微かに、震えている。

「……このように、心を込めて、用意していただけましたこと。何と、御礼を申し上げればよいか」

 美月の声は、感極まったように、微かに震えていた。目の縁には、堪えきれない涙が、静かに滲んでいる。

「この一年間、私が、皆様のために、何かを与えられたのだとしたら、それ以上に、私自身が、皆様から、数え切れないほどの、大切なものを、いただいておりました」

 その言葉に、後輩たちもまた、静かに、涙ぐんでいた。

 千歳は、その光景を、静かに、けれど深い感慨と共に、見つめ続けていた。美月がこの一年間、注ぎ続けてきた、確かな誠意と情熱。それが今、こうして、揺るぎない形として、この場に、確かに結実しているのだった。

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 役員たちが、それぞれ、丁寧に一礼をして、生徒会室を後にした頃には、既に、外はすっかり、夕闇に包まれていた。

 窓の外に広がる雪景色は、沈みゆく夕陽の残照を受けて、淡い茜色に、静かに染まり始めている。降り続く雪片の一つ一つが、その光を受けて、まるで、小さな宝石のように、きらきらと輝いていた。

 美月は、あの寄せ書きの冊子を、大切そうに、胸に抱いたまま、静かに窓辺へと、歩み寄っていった。千歳も、その傍らへと、そっと寄り添う。

「あの子たちの言葉、一つ一つが、胸に染み渡ります」

 美月の声には、深い充足と、それでいて、微かな寂しさが、静かに入り混じっていた。

「この一年、私が、確かに、正しい道を歩めていたのだと、ようやく、実感することができました」

 千歳は、静かに、その肩に、そっと手を添えた。

「美月様が、この一年間、積み重ねてこられたものは、決して、消え去ることはございません。……こうして、後輩たちの胸の中に、確かに、受け継がれていくのですから」

 その言葉に、美月は、静かに、けれど深く頷いた。そして、そっと、千歳の肩へと、頭をもたせかけた。

「私が、この学院に遺せたもの。それは、確かに、これで、完成したのかもしれません」

 美月の呟きに、千歳は、静かに、その体を、優しく抱き寄せた。

「はい。……そして、これから始まるのは、私たち二人だけの、まだ見ぬ、生涯にわたる旅路でございます」

 窓の外では、雪が、いよいよ、夕闇の中に、その白さを溶け込ませ始めていた。降りしきる雪片の静けさが、二人を、優しく、確かに、包み込んでいく。

「これまで、この学院で紡いできたすべての想い出を、胸に抱きながら」

 千歳の声は、静かでありながら、確かな決意に満ちていた。

「これから先も、あなたと共に、新しい季節を、一つ一つ、大切に、重ねて参りましょう」

 美月は、その言葉に、静かに、涙を拭いながら、微笑んだ。

「はい。……あなたと共に、これから先の、すべての未来を」

 二人は、静かに、寄り添ったまま、夕闇に染まりゆく、雪の校庭を、しばらくの間、見つめ続けていた。

 この一年、確かに積み重ねてきた、数え切れないほどの記憶。それは、今、こうして、次の世代へと、確かに受け継がれ、そして、二人自身の中にも、揺るぎない、かけがえのない財産として、静かに、その輝きを、増し続けていくのだった。

ーーー

# 第十九章 中編:白雪の夜に灯る熱と誓い

 夜が深まるにつれ、窓の外の雪は、いよいよ、その勢いを増していった。

 降りしきる雪片が、外灯の淡い光を受けて、はらはらと、音もなく、闇の中を舞い落ちていく。その静けさは、まるで、この学院の敷地全体を、外の世界から、静かに切り離してしまったかのようだった。

 千歳の部屋には、控えめな灯りだけが灯され、卓上には、湯気を立てる茶器が、静かに置かれていた。窓辺に寄せられた小さな長椅子に、二人は、並んで腰を下ろしている。

「今宵の雪は、随分と、深く積もりそうでございますね」

 千歳の呟きに、美月は、湯呑みを両手で包みながら、静かに頷いた。

「はい。……明日の朝には、一面、真っ白な景色が広がっていることでしょう」

 その声には、これまでの、後輩たちとの温かなやり取りの余韻が、まだ、確かに残っているようだった。あの寄せ書きの冊子は、今、卓の隅に、大切そうに置かれている。

 千歳は、その冊子を、そっと見つめながら、静かに、自らの胸の内を、辿り始めていた。

「美月様」

「はい」

「今宵は、少し、昔語りを、お聞きいただいてもよろしいでしょうか」

 その申し出に、美月は、興味深そうに、千歳へと視線を向けた。

「もちろんでございます。……どのようなお話でしょう」

 千歳は、湯呑みを静かに卓へと置き、窓の外に降りしきる雪を、しばらくの間、見つめ続けていた。

「私が、目覚めたばかりのあの日のことを、時折、思い出すのです。……硬く冷たい容れ物の中、闇に沈んだまま、意識だけが、ゆっくりと戻ってくる、あの感覚を」

 美月は、静かに、その言葉に耳を傾けていた。

「何もかもが、朧げで、輪郭を持たぬ、あの感覚。……ただ、冷たさだけが、はっきりとした実感として、この身に刻まれておりました。目を開けても、そこに広がるのは、見知らぬ光景ばかりで。誰も、私のことを知らず、私もまた、誰のことも知らない」

 千歳の声は、静かでありながら、その奥に、確かな感慨を、湛えていた。

「あの時の私は、まるで、時という川の流れから、たった一人、切り離されてしまったかのような、そんな、深い孤独の中におりました。……百年という歳月が、私から、家族を、友人を、故郷のすべてを、奪い去っていたのですから」

 美月は、静かに、千歳の手を取った。その冷たさを、確かめるように。

「けれど、あの日、初めて目を開けたとき、最初に見えたのは、あなたの瞳でございました」

 千歳は、静かに、美月を見つめた。

「あの、深く澄んだ、紺碧の瞳。……何もかもが朧げな中で、その瞳の色だけは、不思議なほど、はっきりと、私の中に、焼き付いておりました」

 美月の瞳が、静かに、潤み始めていた。

「あれから、この一年、あなたは、いつも、変わらず、私の傍らに、寄り添い続けてくださいました。……凍りついていた私の心を、少しずつ、少しずつ、あなたの温もりが、溶かしてくださったのです」

 千歳は、そっと、美月の手を、両手で包み込んだ。

「弓を通して、過去の自分と、和解することができました。書庫での発見を通して、失われたと思っていた時代の記憶が、確かに、今この時代の誰かの役に立つのだと、知ることができました。……そして、あなたのご実家で、初めて、この時代に、確かな家族として、迎え入れていただきました」

 千歳の声は、次第に、その熱を、増していった。

「そのすべての瞬間に、あなたが、いてくださいました。……美月様、あなたは、私にとって、単なる、この時代への案内人ではございません。あなたこそが、この百年の孤独を、真の意味で、終わらせてくださった、かけがえのない、光そのものでございます」

 その言葉に、美月の頬を、堪えきれない涙が、静かに伝った。

「千歳様……」

 美月は、静かに、けれど確かな想いを込めて、千歳の胸元へと、その身を、そっと預けてきた。千歳は、その体を、優しく、けれど確かな力で、抱き寄せた。

「私こそ、あなたに、どれほど救われてきたことでしょう」

 美月の声は、微かに、震えていた。

「これまで、副会長として、そして今は、会長として。常に、完璧であろうと、自分を律し続けてきました。……ですが、あなたの前でだけは、ありのままの、弱い自分を、さらけ出すことができました。それが、どれほど、私の心を、軽くしてくれたことか」

 千歳は、静かに、その髪を、優しく撫でた。

「あなたが、私に、生きる場所を与えてくださったように。……私もまた、あなたに、ありのままでいられる場所を、お返しできていたのだとしたら。これほど、嬉しいことはございません」

 二人は、しばらくの間、抱き合ったまま、その静けさに、深く身を委ねていた。窓の外では、雪が、なおも、音もなく、絶え間なく、降り続けている。

「卒業という日が、いよいよ、近づいて参りましたね」

 美月が、その胸元で、静かに呟いた。

「はい。……ですが、もう、恐れることはございません」

 千歳は、静かに、けれど確かな声で、続けた。

「あの、百年前の冷たい眠りが、この時代で、あなたと出会うための、一本の橋であったのだとしたら。……この学院を巣立つ日もまた、私たちが、二人だけの、まだ見ぬ、生涯にわたる旅路へと踏み出すための、新しい始まりの扉に、他なりません」

 美月は、静かに、顔を上げた。涙に濡れたその瞳が、まっすぐに、千歳を見つめている。

「はい。……あなたと共にであれば、どのような未来であろうと、恐れることは、何一つございません」

 千歳は、そっと、その頬に触れた。

「これから先、どれほどの時が流れようとも。……この胸に抱く想いだけは、決して、色褪せることはございません。あなたは、私にとって、生涯、ただ一人の、かけがえのない存在でございます」

 美月は、静かに、その言葉に、頷いた。そして、そっと、千歳の胸に、再び、身を寄せた。

「私も、同じ想いでございます。……千歳様、これから先の、すべての季節を、あなたと共に」

 窓の外に降りしきる雪は、いよいよ、その白さを、深く、確かに、積み重ねていった。その静謐な白銀の世界の中、二人は、互いの温もりだけを頼りに、しばらくの間、深く、確かに、寄り添い続けていた。

 百年の孤独を越え、ここに、確かに結ばれた、二つの魂。その絆は、これから訪れる、どのような季節の中でも、決して、揺らぐことのない、確かな灯りとして、静かに、けれど、力強く、輝き続けていくのだった。

ーーー

# 第十九章 後編二:清冽な朝光と新たな日々の足音

 夜通し降り続いた雪は、明け方になってようやく止んだ。

 カーテンを開けた千歳の目に飛び込んできたのは、雲ひとつない、驚くほど澄んだ青空だった。一晩で積もった雪は、朝日を浴びて、眩いほどの白さを放っている。空気は刺すように冷たかったが、その冷たさすら、どこか心地よく感じられるほど、視界の隅々まで、すっきりと澄み渡っていた。

「これは、また、見事な晴れでございますね」

 千歳がそう言うと、寝室の奥から、寝間着姿の美月が、眠そうに目をこすりながら、顔を覗かせた。

「おはようございます……わあ、本当に。まぶしいくらいです」

 美月は、窓辺に歩み寄り、大きく伸びをした。その仕草には、生徒会長としての、あの凛とした佇まいはなく、ただの、朝が少し苦手な、一人の少女の姿があった。

「お茶を淹れて参りますね」

 千歳は、そう言って、小さな給湯室へと向かった。しばらくすると、ポットの湯が沸く音が、静かに響き始める。

「今朝は、濃いめでお願いします。まだ、頭がはっきりしなくて」

 美月の声に、千歳は、小さく笑った。

「かしこまりました。……美月様も、こうして見ますと、随分と、普通の学生でいらっしゃいますね」

「……それ、褒めていらっしゃいますか」

「もちろんでございます」

 淹れたての茶を挟んで、二人は、卓を囲んだ。湯気の向こうに、窓の外の、雪景色が、白く輝いている。

「今日は、荷物の整理を、進めてしまいましょうか」

 美月の提案に、千歳は頷いた。

「はい。卒業式まで、もう、そう日もございませんし」

 二人は、朝食を済ませると、早速、部屋の隅に積まれていた、幾つもの段ボール箱に、手をつけ始めた。

「この本棚の分、どういたしましょう。持っていくものと、寄贈するものに、分けたいのですが」

 美月が、書棚を見上げながら、そう尋ねる。千歳は、一冊ずつ、丁寧に、背表紙を確かめていった。

「こちらの古典の全集は、持って参りたく思います。……あの、卒業後に住まう場所には、書斎はございますでしょうか」

「はい、小さいながらも。あなたの本のために、少し、広めに棚を作っていただくよう、既に、大工の方にお願いしてございます」

 その返答に、千歳は、少し驚いたように、美月を見た。

「……もう、そこまで、お手配なさっていたのですね」

「もちろんです。あなたが、新しい住まいで、快適に過ごせるようにと、随分前から、少しずつ、準備を進めておりました」

 美月は、そう言いながら、鞄の中から、一枚の紙を取り出した。広げてみると、それは、簡素な間取り図だった。

「こちらが、卒業後、私たちが移る予定の住まいでございます。学院の理事会が管理する、研究者向けの住居の一つで……この部屋が、居間、こちらが、寝室、そして」

 美月は、指先で、図面の隅を、ちょんちょんと、突いた。

「ここが、あなたの書斎になる予定の部屋です。日当たりも良く、静かな場所でございますので、きっと、お気に召していただけるかと」

 千歳は、その図面を、じっと見つめた。四角い線で描かれただけの、簡素な図面。それでも、そこには、これから始まる、具体的な二人の暮らしが、確かに、描き込まれていた。

「……随分と、現実味を帯びて参りましたね」

「はい。……これは、決して、絵空事などではございません」

 千歳は、静かに、その図面を、両手で受け取った。指先が、微かに、震えている。それは、これまでの、感傷的な涙とは、また違う、確かな実感からくる、静かな震えだった。

「この、書斎の窓からは、どのような景色が見えますでしょうか」

「小さな庭が見えるはずです。あなたが、お好きだと仰っていた、白い椿を、植えられないか、庭師の方に相談しているところでございます」

 その言葉に、千歳は、思わず、頬を緩めた。

「椿でございますか。……嬉しゅうございます」

 美月も、その微笑みに、優しく、笑みを返した。

 二人は、それから、しばらくの間、荷物の整理を続けた。千歳が、弓道場で使い続けてきた道具一式を、丁寧に、木箱へと収めていく。

「この弓は、もちろん、持って参ります」

「はい。あちらにも、小さいながら、弓を引ける場所を、確保してございます」

「……美月様、随分と、用意周到でいらっしゃいますね」

「あなたのことになると、どうしても、抜かりがなくなってしまうのです」

 その、少し照れたような答えに、千歳は、小さく吹き出した。

「それは、大変、心強いことでございます」

 美月は、少しむっとしたように、頬を膨らませたが、すぐに、それもまた、小さな笑いへと変わっていった。

 窓の外では、朝日が、いよいよ、その高度を上げていた。降り積もった雪の上に、二人分の影が、くっきりと、長く伸びている。

 片付けを進めるうち、美月が、ふと、壁に掛けられた暦へと、目をやった。指先で、日付を、静かに、数えていく。

「……卒業式まで、あと、七日でございますね」

 その呟きに、千歳も、静かに、その暦を見上げた。

 これまでのような、感傷に沈むことは、もう、なかった。ただ、その七つの数字の先に、確かに待っている、新しい暮らしの輪郭を、静かに、けれど、確かな期待と共に、思い描いていた。

「七日でございますか。……それまでに、この荷物を、すべて整理し終えねばなりませんね」

「はい。忙しくなりそうです」

 二人は、顔を見合わせ、どちらからともなく、小さく、笑い合った。

 澄み渡った冬の朝の光が、部屋いっぱいに、降り注いでいた。積み重ねられた段ボール箱の一つ一つが、これから始まる、新しい日々への、確かな足音のように、静かに、けれど、着実に、その数を、増やし続けていた。

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作者について

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家事や仕事の間にAIに物語を書いてもらってます。 好きな花は紫陽花。 座右の銘、チャンスをもたらしてくれるものは冒険である 夢うつつな時に閃くものがネタだったりします(笑)

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