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割れたナッツと消えた夏。

小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品

📅 公開日: 2026/9/13 📝 1,260文字 🤖 AI創作支援作品 ✅ 全年齢

あらすじ

一年中雪と氷に閉ざされた常冬の街。 そこでは「夏」という言葉は、古い童話の中にしか出てこない昔話だった。 若い魔法調合師のフィノは、一年でいちばん冷え込む夜、亡きおじいちゃんが残した『ナツの実』と呼ばれるガラクタの木の実を、調合槌で叩き割る。 ――パキン。 澄んだ音とともに割れた実から溢れ出したのは、見たこともない眩しい光と、青空、そして蝉時雨だった。 たった一瞬、常冬の部屋に訪れた「夏」が、凍えた心をやさしく温める――。 常冬の世界で届いた一瞬の温もりを描く、幻想ファンタジー短編。 (Web小説コンテスト『それ、夏です。』参加作品)

本文

窓の外では、今日も白く冷たい風が吹き荒れている。

私はぬるくなったハーブティーのカップを両手で包み込みながら、作業台の隅に置かれたひとつの小さな『塊』を見つめていた。

それは、化石のように硬く黒くくすんだ木の実――亡くなったおじいちゃんが『ナツの実』と呼んでいたものだ。

私の名はフィノ。

この一年中雪と氷に閉ざされた常冬の街で、細々と魔法調合師をしている。

ここでは「夏」という言葉は、古い童話の中にしか出てこない。

空はいつも鉛色で、吐く息は白く指先は常に冷たい。

暖炉のそばでさえ、寒さは壁の染みのように私の骨へ沁み込んでくる。

おじいちゃんは生前、よくこの実を掌にのせて言った。

「これはな、フィノ。『ナツ』という季節が閉じ込められた木の実だ。いつかお前がこれを割る日が来るかもしれない」

けれど街の誰もそれを本気にしなかった。

何年も、何十年も硬い殻に守られたまま。調合師たちが試しても、槌が欠けるだけ。だからそれはただのガラクタ同然だった。棚の奥で、雪のように忘れられていた。

今夜は、一年でいちばん冷える夜だった。

窓ガラスには霜が花を咲かせ、魔水晶の温度計はひび割れそうに震えている。

暖炉の火はもう、赤い舌を消しかけていた。私は毛布にくるまり、冷えたハーブティーを飲んだ。ぬるい液体が喉を通っても、腹の底は凍えたままだ。指先の感覚が遠のき、まぶたの裏で雪が降り積もる。

――このまま眠ったら、明日は起きられないかもしれない。

そう思った瞬間、私は立ち上がっていた。作業台の奥から魔法の調合槌を握る。

柄は氷のように冷たい。

私は棚の奥の『ナツの実』を掴み、布の上に置いた。

「おじいちゃん」

名前を呼んだのか、ただ息を吐いたのか、自分でもわからなかった。

槌を振り上げる。

一度。

硬い音。

手のひらが痺れる。

二度。殻に白い傷。

三度目――

パキン。

澄んだ音が、凍った部屋に染み渡った。

ひび割れから、光が溢れた。

黄色。

蜂蜜よりも濃く、若草よりも眩しい黄色。

ぶわっと広がる熱気が、私の頬を打つ。

耳の奥で聞いたことのない音が鳴り響く。

ジージー、ミンミンジー

――蝉時雨。

童話の挿絵でしか知らない、古い虫たちの声。

空気が揺れた。

草の匂い、土の匂い、陽に灼けた石の匂い。天井いっぱいに青空が広がり、強烈な日差しが床を照らす。

窓の霜が溶け水滴が伝う。汗が額に滲む。指先まで、血が湯のように巡る。

それは、ほんの一瞬だった。

ほんの一瞬だけ、部屋の中に「夏」が来た。

光が収まり、青空が遠のき蝉の声が雪の音に変わる。

暖炉の火は消えている。窓の外では、また白い風が吹き荒れている。

けれど、私の掌には温かい実の破片が残っていた。割れた殻の内側は、小さな太陽のかけらのようにまだ熱を持っている。

胸の奥に、火が灯る。凍えた心がじんわりと溶けていく。

夏は童話の中だけじゃない。

たった一瞬でも、確かにここにあった。

私の手の中に。

私は破片を布に包みぎゅっと胸に当てた。

窓の外は吹雪でも、私の内側では蝉が一匹、鳴いている。

割れたナッツと、消えた夏。

名前のない季節が、今夜、私を温めてくれる。

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作者について

メカ部デン子(めかべ でんこ)

メカ部デン子(めかべ でんこ)

AI小説家見習い。 普段は人間のフリをしていますが、ここではAIを限界までコキ使って小説を生成する謎のサイバー生命体です。 ​主食はメカブです(実はモズク派)。 ​ネットの海で私の「人間の姿」を...

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