第2話:のんびり巫女さんと、温もり溢れるお湯のなかで
小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品
あらすじ
のんびり巫女さん
本文
異世界にやってきて最初に訪れたのは、山あいにひっそりと佇む穏やかな温泉街だった。
そこの神社を預かる巫女さんは、まさに街の空気をそのまま形にしたような、おっとりとした大人の女性だった。
豊満な身体をゆるやかな巫女服に包み、いつも「ふふっ」と優しく目を細めている。
女神様からの連絡もすでに行き届いていたようで、俺が「結界の補強に来ました」と伝えると、彼女は深々とお辞儀をして迎えてくれた。
「遠いところからようこそお越しくださいました。旅の疲れもあるでしょう? まずはお風呂でさっぱりしましょうね」
そう言って案内されたのは、神社の中庭にある天然温泉の露天風呂だった。
湯気が立ち上る木枠の浴槽。周囲を囲む緑と、心地よいお湯の温度が体に染み渡る。
「……あたたかいですね」
「ええ、自慢のお湯なんですよ。あ、そうそう……秘術のお手入れ、でしたよね」
湯船の縁に腰かけた彼女が、ふわりと微笑みながら腕をそっと上げた。
お湯から覗いた豊満な胸元と、その横にあるまろやかな脇のくぼみ。そこには、湯気に濡れてしっとりと生え揃った、驚くほど美しくしなやかな毛並みがあった。
神聖な霊力を秘めた、天然のままの美しさ。
俺は息をのむのを忘れ、思わず背筋を伸ばした。
「……すごく、綺麗です」
「ふふ、そう言っていただけると嬉しいです。少し恥ずかしい気もしますけれど……『あなた』の手、とってもあたたかそうですもの。よろしくお願いしますね」
俺は【聖毛の加護】を手に宿し、お湯を軽く手にすくうと、彼女の脇の下へそっと触れた。
「~っ……あ……」
俺の手が触れた瞬間、彼女から可憐な吐息が漏れた。
加護の力が作用し、手のひらから心地よい温もりがじわじわと毛根へ、そして彼女の全身へと伝わっていく。
俺は焦らず、優しく丁寧に、毛並みに沿って湯を馴染ませるように指先で撫でていく。
指を通すたび、細くしなやかな毛が絹のように手触りを変え、かすかな光を帯びていくのが分かった。
「ん……ぁ……すごく、気持ちいい……。なんだか全身の力が抜けて、ぽかぽかしてきます……」
彼女はうっとりと目を閉じ、俺に身を委ねるように少し体を寄せてきた。
上気した頬と、うっすらと開いた唇から漏れる吐息が湯気に混ざり合う。
「痛くはないですか?」
「全然……むしろ、もっと触ってほしいくらいです……。あなたの手、すごく優しくて……心が解けていくみたい……」
彼女の言葉に応えるように、俺は念入りに慈しむように手入れを続けた。
撫で上げるたび、彼女の体から満ち溢れるような魔力が湧き出し、湯船全体に淡い光の粒が広がっていく。弱まっていた結界の核が、急速に力を取り戻していくのが肌で感じられた。
「あ……体の中に、すごく元気が満ちてくるのが分かります……ふふ、でも……とっても眠くなっちゃいそう……」
「お疲れでしたね。結界の補強も、バッチリ完了しましたよ」
「ありがとうございます……『あなた』みたいな親切な方が来てくれて、本当によかった……」
お手入れが終わったあとも、彼女はすっかりリラックスした様子で、俺の肩にぽてんと頭を預けてきた。
「今夜は美味しいお酒とごはんを用意しますね。明日も……またこうやって、のんびりお手入れしてくださったら嬉しいです……」
「ええ、もちろんですよ」
湯煙のなか、気持ちよさそうに目を細める彼女の横顔を眺めながら、俺たちののんびりとした旅はまだまだ続いていくのだと、温かい心持ちで実感していた。