第26.2話 町へ
小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品
あらすじ
ゴーレムの正しい作り方 〜俺のゴーレム、絶対おかしいと言われるんですが、なにか?〜 - 第26.2話 町へ
本文
「……ここから先が沼地になったらごめんなさい」
『生態系への影響は軽微であると推測されます。問題ありません』
「アカシャがそう言うなら大丈夫か!」
俺は一つの作業が完了した事に安堵した。
――次の日
念願の注水を行う事にした。
簡単ではあるが、この場を守ってくれている大岩に感謝も含めて、注水式を行うことにした。
俺は大岩に向かって静かに手を合わせ、礼をする。
ゴーレム達も同じようにお辞儀をした。
水はもちろん、ウォーター・ゴーレムで賄う。
「よし、ついでに検証として限界サイズのウォーター・ゴーレムを作ってみるか」
俺が使っているゴーレムマスターへのリソースを全て解除。
久しぶりにこの森から全てのゴーレムが消えた。
「やるぞ!」
俺はすべての力を注ぎ込んで空気中から水の分子を集めウォーター・ゴーレムをつくり始めた。
結果、限界値は高さ約30m、質量にしておよそ500tであることが判明した。
「サイズと重さに明確な上限が存在することを確認できました。貴重なデータです」
リソースを全て使ってウォーター・ゴーレムの作成・維持を行い、地面でOrzの形になっている俺を尻目に、アカシャは晴れやかな声を脳内に響かせた。
「はぁ、はぁ、死ぬかと思った…」
理想の機動戦士を作るには、まだまだ時間が掛かりそうだ…
休憩を何度か挟んで精神力を回復させつつ、最大サイズのウォーター・ゴーレムを約5体注ぎ込むことで、巨大な池はなみなみと清らかな水で満たされた。
「よし!注水完了!」
オーバーフロー用の水路も正しく機能しており、これで異常気象でも起きない限り、拠点の水が枯渇することはないだろう。
スタレーニの栽培の方は、あのクソ鳥――グリフォンの灰が上質な肥料となったのか、すこぶる順調だった。
毎日美味しいスタレーニを安定して食べる事ができるようになり、非常に満足している。
そして、畑を拡張し続け、防壁や立派な門が着々と形を整えていくうちに――
――あのグリフォンとの死闘から、三ヶ月の月日が流れていた。
堅牢な防壁に守られた敷地内には、今や瑞々しい緑を湛えた巨大なスタレーニ農園が完成している。
「当初の予定では2ヶ月で完成、出発するはずだったんだけどな……」
『マスターのレベルアップ速度が想定よりも遅延したことが原因です。グリフォンの戦闘力は当時のマスターにとって極めて異例の規格外でした』
「一回の戦闘でスキルがレベルアップするとか。あの鳥の強さは本当に異常だったって事だよな。ああいう輩とは二度と戦いたくないな!」
『喧嘩を売ったのはマスターですが?』
「…さてと!」
俺の心をえぐるようなアカシャのツッコミを何事も無かったように交わしつつ、顔をニヤつかせた。
なぜなら、地道な苦労がやっと昨日報われ、ゴーレムマスターのスキルがレベルアップしたのだ!
「新スキル【マルチマテリアル】と【エーテルドライブ】を使ってゴーレムを再実装する!」
これにより、拠点におけるゴーレムの全自動運用が一気に現実のものとなる。
「準備は、すべて整ったな!やるぞ!」
俺はアカシャの力も借り、新たなゴーレムのイメージを膨らませつつスキルを発動させた。
地面や空気から必要な素材を集め、新たにゴーレムを作成していく。
出来上がったのは、農作業専門のマッド・ゴーレムが10体。
さらに腕部に高圧縮水レーザーを搭載した、狩猟&採取用のアイアンオーク・ゴーレム5体。
もちろん、諸々の補助スキルが組み込まれている。
「夢にまで見たフルオートゴーレム農園の完成だー!」
俺は嬉しさのあまり、その場で小踊りした。
『……マスター、なんですかその変な踊りは。あまりはしゃぎ過ぎると転倒しますよ』
脳内のアカシャの声は呆れているようでもあり、どこかすこし微笑ましく見守ってくれているようでもあった。
「ねえアカシャ、今日はビール飲んでいいよね? ねっ!?」
『特別に許可します』
俺は小さく「よっしゃ」と呟き、心の中で勝利のガッツポーズをかました。
そして――次の日。
俺はこの拠点を離れ、半年間過ごした森を抜けて町へと向かう。
空の神殿を目指すために。
「今までありがとうな、大岩さん」
大岩に向かって深く頭を下げ、感謝を捧げる。
凶悪なこの森で俺が今日まで生きてこられたのは、間違いなくこの大岩があったから。
大岩の圧倒的存在感のおかげでこの森の中を、迷わず生き抜く事ができたのだ。
俺の中では既に信仰の対象にまでなっている。
『マスター、そろそろ行きましょうか』
「ああ、そうだな。大岩さん、ゴーレムと畑の事、よろしくお願いします」
重厚な門を開けると、見送りのために並んだゴーレムたちへ大きく手を振り、俺は新たな一歩を踏み出した。