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ハロウィンの約束(トト)続きメモ

小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品

📅 公開日: 2026/10/24 📚 シリーズ: ハロウィンの約束(トト) 📝 4,554文字 ✅ 全年齢

あらすじ

<p>ハロウィンの翌日、夜明け前の最も暗い時間。</p><p>ミリアは目を覚ました。</p><p>宿屋の小さな部屋。窓からは僅かな月明かりが差し込んでいる。</p>

本文

## 第二部

## 第8章 死神の鎌

ハロウィンの翌日、夜明け前の最も暗い時間。

ミリアは目を覚ました。

宿屋の小さな部屋。窓からは僅かな月明かりが差し込んでいる。

隣のベッドを見ると、ロウエンがいない。

「…ロウエン?」

小さく呼びかけるが、返事はない。

ミリアは身を起こした。彼の剣もない。外出しているのだろう。

時計を見る。午前四時。なぜこんな時間に?

もしかして――

ミリアは直感した。マルクは出発を考え直すと言っていたが、結局は夜明け前に出発することに決めるかもしれない。ロウエンは、それを止めに行ったのだ。

急いで服を着て、部屋を出る。

宿の階段を駆け下り、外へ。

街はまだ眠っている。ハロウィンの飾りつけが、暗闇の中で不気味な影を作っていた。さっきまでの祝祭の雰囲気は消え、静寂だけが支配している。

「ロウエン!」

小声で呼びかけながら、街を歩く。

だが彼の姿は見えない。

マルクの家の方へ向かおうとした時、街外れの方から微かな光が見えた。

「あれは…?」

ミリアは光の方へと走った。

街の門を抜け、街道へ。

そこで彼女は息を呑んだ。

トトがいた。

死神の仮装のまま。そして――

巨大な鎌を振り上げていた。本物の、刃が月光を反射して鈍く光る、死神の大鎌。

そしてその鎌の先には――

人が倒れていた。

「トト! あなた、何をしているの!」

ミリアは叫びながら駆け寄った。

トトが振り向く。

「なにって。これがボクの仕事さ」

「仕事って…。人に刃物を向けるなんて…」

ミリアは言葉を失った。

「それはあなたのような子がやることじゃないわ。今すぐやめなさい!」

「フン!君は何もわかっていないんだ」

第9章

ミリアは倒れている人に駆け寄り魔法で治療を試みるが効果がない。

トトは、すでに魂を刈ってしまったから肉体の治療をしても無駄だと冷たく言い放つ。

なぜ、トトのような子供がそんなひどいことをするのか。

ミリアは内心では激しく動揺していたが、出来るだけ冷静さを装って、人としてそんなことをしてはいけない、と諭し、トトを正しい方向へ導こうとした。

ところが、トトの反応はミリアの予想だにしないものだった。

その人が約束を破って現世に留まろうとした死者の魂だからだと答える。

ハロウィンの奇跡は死者の魂を現世に蘇らせるが、ハロウィンが終われば元の場所へ戻らなければならない。

それが約束だからだ。

約束を守れば来年もまた現世に蘇ることができる。

しかし、我慢できずに現世に留まろうとする魂がいるのだ。

約束を破った魂は悪霊化する。だからトトが魂を刈って消滅させる必要があるのだ。これは大切な仕事なのだ。

消滅した魂は二度と現世に蘇ることができない。

トトは悠久の昔からずっとこの仕事を続けている。疑問に思ったことは一度もない。

ミリアは絶句した。

「夜明けまでに全部終わらせないといけない。他にも刈らなきゃいけない魂があるんだ。ミリアもさ、ボクに余計な仕事を増やさないでね」

そう言うと、トトはその場を立ち去った。

ミリアは納得がいかなかったが、トトの言っていることは分かる。

トトのやっていることは容赦がないが、世界のために必要だった。

トトを止めることができないならば、他にミリアができることをするしかない。

今ミリアにできることは、約束を破ろうとしている魂を説得して現世に留まることをやめさせることだ。

トトは他にも刈らなきゃいけない魂があるといった。

急がなければ。

そのとき、ミリアの頭をよぎったのはマルクさんのことだった。

第10章

マルクさん。リリの父親。

彼は昨夜に夜が明ける前に街を出ると確かに言っていた。

これはつまりハロウィンが終われば死者の魂の約束を守って元の場所へ戻るということではないのか?

その後、マルクさんはその発言を撤回した。「明日のことは明日考える」と。

約束を破ってはいけない。

ミリアはかつてないほどの焦燥感にかられていた。

マルクさんを説得しなければ。

それだけではない。

ロウエンはマルクさんが絶対に旅立たないように念押しをしに行ったはずなのだ。

急がなければ取り返しのつかないことになる。

第11章

ミリアはリリの家「エルサのパン工房」へ走った。

急がなければ。

まだ夜が明ける前の暗い時間だったが、パン工房には明かりが灯っていた。

エルサがすでにパンの仕込みを開始していたのだ。

ミリアは息を切らせながらマルクの安否を確かめる。

エルサによるとマルクは既に旅立った後だという。エルサはマルクを街の入口まで見送ったのだという。

よかった。間に合ったのだ。

リリには気の毒だが来年また会える。

エルサは何故そんなに焦っているのかと尋ねた。真実を何も知らないようだ。

それでいい。エルサにわざわざ真実を言う必要がない。

ミリアはすっかり安心し、ロウエンが来ていないか尋ねた。早くロウエンに真実を知らせなければ。

エルサは驚いてロウエンは来ていないと言う。

第12章

ミリアは街の入口へ向かった。

門番によると、エルサがマルクを見送るところは見たが、それ以外は誰も通っていないと言う。

ロウエンはどこに行ったのか。

なぜか胸騒ぎがする。

息を切らして街中を走り回るがロウエンの気配は一向に感じられない。

ミリアは途方に暮れていた。

宿にいったん戻り、ロウエンが帰ってくるのを待とうか。

そう思ったが、そうしてはならない気がして仕方なかった。

第13章

焦ってはいけない。

ミリアは自分を落ち着かせようと目を瞑った。

ロウエンとの思い出を振り返り、彼ならどうするか考える。

ロウエンの普段の行動から行き先を推測しようとする。

ところが、突然気になる記憶がフラッシュバックした。

先日、騎士団が森で魔獣と戦った時の記憶。

ロウエンが深手を負った後の記憶がない。

第14章

「まさか……ロウエンもマルクさんと同じ……?」

そんな恐ろしいことは考えたくもなかった。

「いいえ、そんなはずない!ロウエンが私に黙って去ってしまうなんてありえないわ!」

ミリアは強く自分に言い聞かせた。

「そうよ。ロウエンはまだこの街にいる。当り前でしょう?だって、彼は死んでなんかいないんだから」

しかし、それならば何故、ロウエンは自分の前に姿を現さないのか?

不安がミリアの心を埋め尽くす。

「ロウエンは死者の魂なんかじゃない。彼は自分が死んでいるなんて、今まで一度だって私に話したことはないわ」

──他にも刈らなきゃいけない魂があるんだ。

もし、ロウエンがハロウィンの約束を破って現世に留まろうとしているとしたら──。

第15章

ミリアは最悪の可能性に思い至っていた。

必死にロウエンを探す。

夜明けまでに間に合わなければ大変なことになる。

街を走り回っていると、さぼって酒を飲んでいる夜警団の男たちがいた。

「ロウエン?そういえば、アンタみたいに必死で仲間を探している若者がいたなあ」

!!

「そうです、その人です!どこに行きましたか?」

「ハハハ、知らんよ。もう十年以上前の話だ。俺がまだグリムフォードの街にいた頃のな」

「ものすごい剣幕だったよ。だから今でもはっきり覚えてる」

そんな昔のことなんて聞いてない!もっと真面目に答えて!

「そうじゃありません!今日の話です!見かけませんでしたか!?」

「さあな。こんな夜更けだ。出歩いてるのはお前さんくらいだよ」

ワッハッハと大声で笑い合う男たち。何がそんなにおかしいのか。

もう時間がない。イライラが募る。

「見かけたら伝えてください!トトに逆らっちゃいけないって!それから、すぐに宿に戻ってって!」

「ヒック!おう、任せとけ。大船に乗ったつもりでいろよ。アハハ!」

この人たち、あてにならない!やっぱり私がしっかりしないと!

ロウエン、どこにいるの!?

第16章

時間がない。

ミリアは完全にパニック状態に陥っていた。

そのとき、トトが静かにミリアに近付いてきた。

「ミリア」

ミリアは発狂し、トトを問い詰める。

「トト!あなた、ロウエンに何かしたの!?」

「ボクは何もしていないよ」

「待って!まだ間に合うから!ロウエンは絶対に約束を守るわ!何かあっても私が絶対に説得する!だからロウエンに何もしないで!」

トトは呆れたような顔でミリアを見つめて言った。

「やっぱり君は何もわかっていないんだ」

トトがゆっくりと近づいてくる。

「ロウエンは死者の魂じゃない」

良かった。やっぱりロウエンは死んでいなかったのね。でも、それならどうして……。

──アンタみたいに必死で仲間を探している若者がいたなあ

──もう十年以上前の話だ。

「ロウエンは死者の魂じゃない」

第17章

「君は何もわかっていない」

トトがゆっくりと近づいてくる。

「死者の魂は──君だ」

「えっ?」

意味が分からなかった。私はロウエンを探しているだけだ。

「どういうことなの……」

「昨日一緒に遊んだよしみで、君自身が自力で気づくのを待っていたけど──」

トトがゆっくりと近づいてくる。

「もう手遅れみたい」

トトは大鎌を振り上げた。

第18章

「ミリア、ボクが刈るのは君の魂だ」

ミリアは全てを理解した。あのとき死んだのは自分。それに気づかずにハロウィンの約束を破ってしまった。

「今頃気付いても、もう遅い。君は今から消えるんだ。永遠に」

「ロウエン、助けて!」

「ロウエンは来ないよ」

「嘘よ!」

「ロウエンは最初からいなかったんだ」

「ロウエンは、いる!」

「いや、いない。君の『理想の騎士さま』は、君自身の記憶が作り出した人形さ。一日限りの偽物だ。とっくに期限切れ。ハロウィンが終わって自然に消えたんだ」

そんな……。昨日一緒に過ごしたロウエンが嘘だったなんて──。

そんなはずはない。

何故、昨日過ごしたハロウィンの一日が全て否定されなければならないのか。

そんなはずはない。そんなはずはないのに──。

一筋の希望も残っていなかった。

ミリアは絶望に打ちひしがれ観念してその場にへたり込んだ。

トトの大鎌が振り下ろされる。

第19章

ギィィイイン!!

大きな音がしてトトの大鎌が弾かれて地面に落ちた。

「えっ、何これは?」

トトが驚いて振り向くと、無精髭のおっさんが鬼のような形相で立っていた。

「ミリアから離れろ」

おっさんはトトを押しのけるとミリアを庇うように自分の背後へ引き寄せた。

「邪魔をしないで」

トトは大鎌を拾い上げるとおっさんに向かって冷静に話しかけた。

「黙れ。ミリアを傷つける奴は誰であろうと俺が倒す」

第20章

トトはおっさんを見た。この男、只者ではない。

続いてミリアを見た。

トトはふぅっと息をつき、大鎌を下した。

「わかったよ。ミリアもわかってくれたみたいだし、それなら良いんだ。ボクはもう行くよ。じゃあね」

トトは去っていった。

* * *

「ミリア、しっかりしろ。お前は銀狼の牙の騎士だろ?」

おっさんは優しい顔でミリアに手を添えてゆっくりと立たせた。

姿形はすっかり変わっていたが、それでもミリアにはすぐに分かった。

目の前にいるのは、ロウエンだ。

魔獣との戦いでロウエンは生き延びていた。あの時から十年以上の時が流れていた。

「どこに行っていたの?ずっと探していたんだよ?」

「お前を見失って、俺はお前を探した……、それで、見つからなくて、俺は……本当に済まない」

「ううん、良いの。ありがとう、助けてくれて」

* * *

夜明けがすぐそこまで近づいている。

「来年また、会えますか?」

「ああ、約束だ」

来年もまた、必ず。

(了)

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冥界焔つむぎ

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