突撃! 帝都の晩ごはん
小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品
あらすじ
まだ未熟だったAIといっしょに書いた小説。AI特有のおかしな構文とすっとぼけた冷静さを活かして書き上げた、数ある中では最もよくできた作品
本文
――「ならば、あの夜の出来事は?」
たとえば、一九四二年七月二〇日の夜。
あの夜、帝都は無尽蔵ともいうべき石油産出量と終わることのない神武景気を誇っていた。帝都臣民は皆、赤飯を頬張り、白酒をかたむけ、豪華な祝宴を楽しんでいたのだ。そして翌日にはやはり同じ場所で、同じような祝い事が繰り広げられているのであった。もしもあのときの帝国臣民たちがまだ生きていたのならば……。
「そうだ!」 少年は思いついた。
記憶をあの日の夕方まで遡ることにしよう。
するとどうだろう。その日、銀座の街は突如出現した異形の化け物に襲われて廃墟になってしまった。逃げ惑う人々。阿鼻叫喚。狂騒乱の中で人々は何を見ただろう? 街頭テレビでも緊急報道番組が流れていたに違いない。
『ご覧下さい! アレです!!』カメラの望遠レンズが捉えたもの。『あれはまさしく鬼女であります!』
そこには確かに人型をした恐ろしい怪物の姿が映っていた。
怪物の姿は醜悪であった。全身に青黒い血管が浮き上がり、肌は病的なまでに白く不気味である。瞳は赤く光っているがそれ以外は特に口うるさい風紀科教師と呼ばれる人間そっくりであり、身長二〇メートルを超える巨体はまさに腐敗した肉塊のようであった。
腕は細く長く、脚もガニ股ではあるが長く、爪先にいたるまで尖っていた。指の数も多い上に長いので、十本以上あるのかもしれなかった。首からは細い縄のようなものが伸びており、その先に結びつけてあるのは多数の人間の生首であった。どうやら何者かが首を絞めて殺害したもののようだ。絞められた時の苦悶の表情がそのままに残っている。手足の先には鋭い鉤爪がついており、まるでベンガルの猛虎かアムールの豹のような外見をして脅していた。その上、脅しだけでは済まない力も持ってたのだ。
(ああ、間違いない。……)少年の目に狂気の色が宿る。(……秘めた欲望は人間をこんなにも変貌させるのだ)
この事件こそが少年を狂気へと導いたのであった。
それがあってからというもの、少年は指紋を消して、目隠しをし夜に備えて視力を養生するようになった。
彼は夜毎、帝都の家々を襲っては晩餐を強奪した。時には市民の家を燃やして、火事にして食べたのである。そうやって食った晩ごはんの味はどんなものだったかなど覚えてはいない。
ただ、襲撃のその夜だけは、いつも同じ夢を見た。そう、それはかつて夢で見た怪物の食事の光景と同じものだった。つまりそれは悪夢ではなく、現実に起こった出来事だったということなのだ。
帝都臣民は恐怖した。また人が死ぬのかという怯えもあったが、何より恐れたのは自分たちの生活が壊されるかもしれないことであった。だがしかし一方で、少年が凶行を繰り返すたび、人々の心に浮かんだ感情があった。
というか一つの疑問。財産も権力も役に立たないのならどうやって欲望を満たせばよいのだろうと不安になったのだ。
彼らは薄々知っていたのだ。富や権力も役に立たないのなら怪物になるしかないことを。
人々はようやく欲望の怪物が望みを果たして溜飲を下げる姿を覗き見たように思ったからだ。そうではないのか? もし、そうなら……そうではない、疑問を抱くのは間違いなら答えだって正しかろうはずがない。
それにもう一つ、一体誰なのだろうかという疑問だ。帝都臣民ではないことは明らかだった。何故なら帝都臣民たちの中に少年の正体について思い当たる者が誰一人として存在しなかったからだ。では外国の人間なのかと推測してみるものの、そのような話は聞いたことがない。もちろん帝都内にも外国人はいるが、彼らは帝都に対して友好的で、積極的に交流があるはずだった。帝都中に広がっている新聞やラジオの放送でそういったニュースが取り上げられていることはなかったのだから。また彼らの中には軍人もいるはずだが、政府軍のトップを務める皇宮警察庁長官ですら正体を知らないと言う。
不安の故にこそ人々は願った。貧乏人は富裕層への復讐を諦めて、富裕層は怪物によって、財産や権力を失い飢えて死んだ者がいるということを忘れて、終わることのない神武景気がこの先もずっと続くことを。願いつつ、祝飯を炊いた。
『帝都を救いたい』という祈りを捧げるように、帝都臣民は日々、より豪華な晩餐を競うように作った。
これが最後の晩餐となるかもしれなかったから……
ついに自分が誰なのかを知った夜、少年は息つくまもなく鬼女の洗濯板で摩り下ろされた人間たちの残骸のような山盛りの赤飯を掻き込んだ。
少年は赤飯に顔を埋めて死んでいた。
神武景気が終焉を告げるある日のこと。
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