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きつねの落とし物郵便局

小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品

📅 公開日: 2026/11/1 📝 2,930文字 🤖 AI創作支援作品 ✅ 全年齢

あらすじ

みどりが原小学校のうら山には、おかしなうわさがありました。夕暮れどき、学校のチャイムが鳴り終わるころにうら山の森へ迷い込むと、見たこともない「赤いポスト」が見つかるというのです。四年生のハルトは、放課後にそのポストの前に立っていました。

本文

みどりが原小学校のうら山には、おかしなうわさがありました。

夕暮れどき、学校のチャイムが鳴り終わるころにうら山の森へ迷い込むと、見たこともない「赤いポスト」が見つかるというのです。

四年生のハルトは、放課後にそのポストの前に立っていました。

べつに迷い込んだわけではありません。なくしてしまった「大切なもの」を、どうしても見つけたかったのです。

「本当にあったんだ……」

ハルトがつぶやくと、カサリと草が鳴り、ポストのうしろからだれかが出てきました。

それは、つやつやした茶色の毛並みに、大きな耳を立てた「きつね」でした。おどろいたことに、きつねは郵便局員の紺色の帽子をかぶり、小さなカバンを肩にかけています。

「おや、人間の男の子。ここは『落としもの郵便局』だよ。きみに届ける手紙はないはずだけど、どうしたんだい?」

きつねは、人間の言葉で、すこし気取った声で言いました。

「ぼく……探しているものがあるんだ。おじいちゃんがくれた、金色の万年筆」

ハルトは、ぎゅっとこぶしを握りしめました。

「先週、おじいちゃんが病気で亡くなったんだ。その万年筆は、おじいちゃんが『これでたくさん勉強するんだぞ』って、ぼくの誕生日にくれた大切なものなのに……どこかで落としちゃって。家の中も学校も探したけど、どこにもないんだ。ここならあるって、うわさで聞いて」

きつねの郵便局員は、ふむ、とヒゲを揺らしました。

「なるほどね。ぼくの名前はコン。この郵便局の局長さ。ここは、世界中の『なくしたもの』が、手紙や荷物になって届く場所なんだ。ちょっとついておいで」

コンがしっぽをひと振りすると、赤いポストの横の空間が、ぐにゃりと歪みました。気がつくとハルトは、大きな木のうろ(穴)の中に作られた、不思議な郵便局の中に立っていました。

棚には、たくさんの箱や、キラキラ光るガラスのビンが並んでいます。

コンはカウンターの奥から、一台の「はかり(天秤)」を取り出しました。

「ハルトくん、その万年筆をなくして、いまどんな気持ちだい?」

「すごく……悲しい。おじいちゃんに申し訳なくて、胸がちくちくして、お腹の奥がずーんと重たい感じがする」

「そうか。じゃあ、その『重たい気持ち』を、このはかりの上に乗せてごらん。手でつかむみたいにして、乗せるイメージさ」

ハルトが言われたとおりに、胸の痛みをすくい取るようにしてはかりの上にかざすと、不思議なことに、透明な青い光の玉がぽろりとこぼれ、はかりの皿に乗りました。

ガチャン!

はかりは大きな音を立てて、一瞬で下まで傾きました。

「うわあ、重たいね!」コンは目を丸くしました。「きみの悲しみの重さは、十キログラムの鉄アレイよりも重いよ。これじゃあ、毎日歩くのも大変だったろう。よし、きみの万年筆が届いているか、探してあげる」

コンは棚の奥へ向かい、一つの小さな木箱を持って戻ってきました。箱を開けると、中にはハルトが探していた、あの金色の万年筆が入っていました。

「あった!」

ハルトは手を伸ばそうとしましたが、コンはそれをパッと隠しました。

「待って。この郵便局のルールを説明しなきゃ。落としものを返す代わりに、きみは『同じ重さのもの』をここに置いていかなきゃいけない。つまり、そのはかりの上にある『悲しい気持ち』を、ぼくに引き渡すんだ」

「えっ? 悲しい気持ちを置いていけば、万年筆が戻ってくるの?」

「そうさ。きみはおじいちゃんを亡くした悲しさも、万年筆をなくした苦しさも、ぜんぶ忘れてすっきりできる。どうだい、いい話だろう?」

ハルトは一瞬、それはすごく素敵なことのように思えました。毎日胸が苦しくてたまらなかったから、これが消えるならどんなに楽でしょう。

でも、ハルトは立ち止まりました。

「待って……。おじいちゃんが死んで悲しいっていう気持ちをぜんぶ忘れたら、ぼく、おじいちゃんとの思い出も忘れちゃうの?」

「思い出は消えないよ」とコンは言いました。「でも、おじいちゃんの顔を思い浮かべても、もう涙は出なくなる。『へえ、そんな人がいたっけな』って、他人のことを思い出すみたいに、なにも感じなくなるだけさ」

ハルトは、胸が締め付けられるように痛みました。

おじいちゃんは、ハルトが自転車に乗れるようになったとき、自分のことみたいに大喜びしてくれました。ハルトが風邪をひいたときは、ずっと手を握っていてくれました。

あの温かい手の感触や、おじいちゃんの優しい笑顔。それを思い出したときに「なにも感じなくなる」なんて、そんなの、おじいちゃんが本当にいなくなってしまうみたいで、絶対に嫌だと思いました。

「……やっぱり、いらない」ハルトは静かに首を振りました。

「え? 万年筆はあきらめるのかい?」

「ううん。この『悲しい気持ち』は、ぼくが持っていく。悲しいのは、ぼくがおじいちゃんを大好きだったからだもん。これをなくしちゃったら、おじいちゃんのことが大好きだった自分まで、いなくなっちゃう気がする。万年筆は……おじいちゃんには謝るよ。見つからなくても、おじいちゃんがくれた言葉は、ここに残っているから」

ハルトは自分の胸に手を当てました。

コンはしばらくハルトをじっと見つめていましたが、やがて、にこりとキツネの顔をほころばせました。

「合格、さ」

「え?」

「きみがもし、その悲しみをあっさり捨てていたら、ぼくはこの万年筆を渡さなかったよ。自分の痛みを忘れるために、大切な人への気持ちまで捨てるような子には、この万年筆を使う資格はないからね」

コンははかりの上に乗っていた青い光の玉を、ふっと息で吹き消しました。すると、ハルトの胸の奥にあった重みが、すーっと消えていきました。悲しみが消えたわけではありません。でも、冷たくて重かった塊が、ぽかぽかと温かい光に変わったような気がしたのです。

「きみはおじいちゃんの愛をちゃんと心に持っている。だから、この万年筆はきみの元へ戻るたびをしてきたんだよ。はい、どうぞ」

コンは、金色の万年筆をハルトの手に握らせました。

「ありがとう、コンさん!」

「どういたしまして。さあ、もうすぐ夜になる。お家の人に怒られないうちに、人間の世界へ帰りなさい。あ、その万年筆で、最初におじいちゃんへお手紙を書いてみるといいよ。届かなくても、気持ちは必ず空へ進んでいくからね」

コンがしっぽをもう一度振ると、目の前が白い霧でいっぱいになりました。

次にハルトが気がついたとき、彼は学校のうら山の入り口に立っていました。手の中には、ずっしりと心地よい重みのある、金色の万年筆が握られています。

ハルトは急いで家に帰ると、机に向かい、ノートを開きました。

おじいちゃんからもらった万年筆のキャップを外し、ゆっくりと文字を書きます。

『おじいちゃんへ。万年筆、なくしちゃってごめんなさい。でも、きつねの郵便局でちゃんと見つけたよ。ぼく、この万年筆でたくさん勉強して、おじいちゃんみたいに優しい大人になるね』

書き終えると、窓からさわやかな夕方の風が吹き込んできて、ノートのページをパタパタとめくりました。まるで、おじいちゃんが「よくがんばったね」と言って、頭をなでてくれたような気がしました。

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作者について

海歌ゆきな

海歌ゆきなです。 前は東方Projectの二次創作を執筆していましたがこれからは一次創作を執筆します。

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