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小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品
あらすじ
カミル視点 みみは、いつものように明るく話そうとしていた。少し驚いた顔をして、冗談めかして笑って。
本文
カミル視点
みみは、いつものように明るく話そうとしていた。
少し驚いた顔をして、冗談めかして笑って。
自分は大丈夫だと、強がるように。
けれど、俺には分かった。
彼女の瞳から、また涙がこぼれていた。
それは悲しみだけではないのだろう。
俺のことを愛おしく思ってくれている。
その気持ちが胸いっぱいになって、言葉にできなくなっている。
カミル「……みみ」
俺はそれ以上、何も言わずに彼女の手を握っていた。
やがて、みみは少しずつ話し始めた。
あの葉について。
大樹から得た葉であること。
そして、それが単なる不思議な薬草や、お守りのようなものではないこと。
みみにとって、あの葉は――自分の生命線なのだと。
カミル「…………」
俺の指が、わずかに止まった。
あのとき、上位の方々が葉を受け取った際の表情を思い出す。
台帳様が何度も彼女を気遣っていた理由。
一枚で十分だと言われていたのに、みみがたくさん渡してしまったこと。
残りは五枚だと、何でもないことのように笑っていたこと。
ようやく、その重さの一端が見えた気がした。
カミル「……自分の生命線、か」
俺は静かに繰り返した。
もっと聞きたいことはある。
なぜそれほど大切なものを、あの方々に渡したのか。
以前にも同じようなことがあったのか。
そして、残された五枚にはどんな意味があるのか。
だが、みみはそこから先を話さなかった。
過去のこと。
葉に関わる、もっと深い事情。
彼女はそれを口にできず、ただ小さく謝った。
「ごめんなさい。言えない」
俺はすぐに首を横に振った。
カミル「謝るな」
少し身を寄せ、彼女の濡れた頬を指先で拭う。
カミル「今、話せることを話してくれた。それで十分だ」
本当は知りたい。
大切な相手のことだ。知らないままでいたくないと思う気持ちもある。
それでも、無理に聞き出すことは違う。
カミル「ただ、一つだけ約束してくれ」
彼女の手を包み直す。
カミル「その葉を、自分の命に関わるほど大切なものだと分かっているなら、もう少し慎重に扱ってくれ。誰かを助けたい気持ちは分かる。だが、お前自身も守らなければならない」
声が少し低くなる。
カミル「俺は、お前を失いたくない」
それはボスとしての命令でも、相手を縛るための言葉でもなかった。
ただ、俺自身の気持ちだった。
カミル「過去を話せないなら、今は聞かない。いつか話せると思ったときに話せばいい」
そして、彼女の額にそっと口づけた。
カミル「……それまで、俺はお前の隣にいる」
紅茶は、もう少し冷めてしまっていた。
けれど俺たちは、しばらくそのまま手を繋いでいた。
幻燈街の隠れ家
みみ視点
静かな応接室には、淹れたての紅茶の香りが漂っていた。
みみは、カミルの言葉を胸の中で何度も確かめていた。
応えたかった。
カミルが自分を大切に想ってくれていることも、その想いの深さも分かっている。だからこそ、同じように返したかった。
けれど、今はまだ、言葉にできないことがある。
それでもいい。
無理に話さなくていい。
そう言ってくれた。
みみ「……ありがとう」
小さく呟いて、隣に座るカミルへ身を寄せる。
そして、ぎゅっ。
両腕を回して、彼を抱きしめた。
カミル「……みみ?」
一瞬、驚いたように目を見開く。
けれどすぐに、その大きな手がみみの背中へ回った。
カミル「……そうか」
低い声が、すぐそばで響く。
カミルは抱きしめ返す。強く閉じ込めるのではなく、みみが安心して寄りかかれるように。
カミル「言葉で返さなくてもいい。こうしてくれるだけで、十分伝わっている」
少しだけ腕に力がこもる。
カミル「……ありがとう、みみ」
その声には、いつものボスとしての威厳も、誰かを威圧する響きもなかった。
ただ、隣にいる大切な人を抱きしめる男の、静かな喜びがあった。