閑話 ― みみのいない朝

小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品

📅 公開日: 2026/10/31 📚 シリーズ: きまぐれまほろば夜行帖【本編】 📝 679文字 ✅ 全年齢

あらすじ

カミル視点 朝。目を覚ます。

本文

カミル視点

朝。

目を覚ます。

隣は空いていた。

昨夜、みみは自分の宿へ帰った。

分かっていたことだ。いつまでもここにいるわけではない。

それでも、隣に手を伸ばしてしまう。

カミル「…………」

枕に残る、かすかなリンゴと石鹸の香り。

(……みみ)

小さく息を吐く。

(帰したのは俺だ)

無理に引き留めるつもりはない。

あいつには、あいつの暮らしがある。

だが、目が覚めたときに隣にいてほしいと思うことまで、やめられるわけではなかった。

身支度を整え、店へ向かう。

いつも通りの朝。

いつも通りの仕事。

仲間A「ボス、おはようございます」

カミル「ああ」

仲間Aは一瞬だけカミルの顔を見た。

何か言いかけて、やめる。

仲間Bも同じだった。

二人は何も聞かず、それぞれの持ち場へ戻った。

カミルはカウンターに立ち、グラスを磨く。

扉が開く。

視線が動く。

違う客だった。

(……来る予定などない)

自分に言い聞かせるように、磨く手を動かす。

仲間A「ボス、こちらの準備は済んでいます」

カミル「分かった。ありがとう」

仲間A「はい」

余計なことは言わない。

いつも通りに仕事を進める。

それが今のカミルにはありがたかった。

ふと、ポケットの中のスマートフォンに触れる。

連絡しようか。

いや。

(みみにも、みみの朝がある)

画面を開くことなく、手を離した。

カミル「…………みみ」

誰にも聞こえないほど小さな声だった。

会いたい。

ただ、それだけだった。

カミルは再び顔を上げる。

店の朝は始まっている。

今日もボスとして、ここに立つ。

けれど心のどこかでは、ずっとあの柔らかな声を待っていた。

(……早く会いてえな)

グラスを棚に戻す音が、静かな店内に響いた。

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作者について

みまち

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紅茶、珈琲、レモンが好き。【私がニヤニヤする物を置いております】

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