終わり、そして始まり
小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品
あらすじ
学校でいじめれ続けいていたどこにでもいる普通の少女 我慢の限界で線路えと踏み出した 気がつくとそこは何もない白い空間 目の前には『神様』!? そして神様に『異世界』に転生させられてしまって…
本文
暗い。冷たい。息苦しい。 それが葵の日常だった。
クラスメイトたちの冷ややかな視線。靴箱に投げ入れられるゴミ。机に彫られた心無い落書き。 「地味子」「キモい」「目障り」——耳にこびりついた悪口が、まるで呪いのように頭の中で何度も反響する。
(もう、いいよね……)
耐え難い倦怠感と絶望に背中を押されるように、葵は重い足取りで踏切へと向かった。 カンカンカン、と乾いた警報音が鳴り響く。遮断機が下がり、ゴゥッという地響きとともに、視界の端に鉄の塊が迫ってきた。息を吸い込み、葵は一歩を踏み出す。
瞬間——世界が白く弾けた。 痛みはなかった。ただ、意識が急速に吸い込まれていく感覚だけがあった。
「……おい。起きろ、人間の子よ」
どこからともなく響く、尊大でありながらどこか楽しげな声に、葵はそっとまぶたを開けた。 見上げた先には、光に包まれた荘厳な存在——“神様”がいた。
「おや、ようやく目を覚ましたか。数奇な運命を辿る魂よ」 「……私、死んだ……んだよね?」 「うむ。自ら命を絶つとは愚かなことではあるが……その背負ってきた絶望の重さを思えば、責める気にはならん。そこでだ、不憫な少女よ。お前に一つの“特権”をやろう。私の退屈しのぎも兼ねて、全く別の世界でやり直してみる気はないか?」
失うものなど何もなかった。元の世界に戻りたいなんて微塵も思わない。 「……うん。どこでもいい。私じゃない誰かになれるなら、どこへだって行く」 神様は満足そうに微笑み、指をパチンと鳴らした。 「よろしい。では、新たな生を楽しめ」
次に意識が浮上したとき、葵の頬を撫でたのは、ひんやりとした湿った風だった。
「……ん……」
起き上がろうとして、葵は違和感を覚えた。 まず、体が軽い。いつも感じていた胃のあたりの重苦しい緊張感がない。 手をついた地面はゴツゴツとした岩肌で、どうやら自分は薄暗い洞窟の中に横たわっていたようだ。
ふと、視界の隅にキラリと光るものが映った。 洞窟の壁際に、青白く神秘的な光を放つ石——おそらく“魔石”と呼ばれるものが転がっている。その鏡面のような表面に、自分の顔が映り込んでいた。
「……え……?」
思わず声が漏れた。 そこに映っていたのは、かつての黒髪メガネの地味な少女ではなかった。
肩の下あたりまで伸びた、絹糸のように滑らかな白い髪。 前髪はきれいに分かれた
センターパート。 そして何より――左目が深いルビーのような赤、右目が雪のように純粋な白の、鮮烈なオッドアイ。
映し出されていたのは、息をのむほど美しい、見知らぬ少女の姿だった。
(これが……私……?)
震える指で自分の頬に触れる。ひんやりとした感触と、確かな体温があった。 あの冷たい踏切の音も、教室での悪意も、もうどこにもない。ここは全く知らない世界。 けれど不思議と、恐怖よりも胸の奥から静かな熱が湧き上がってくるのを感じた。
洞窟の出口の向こう側から、かすかに新しい世界の風が吹き込んでくる。 白い髪を揺らしながら、オッドアイの少女——葵は、ゆっくりと立ち上がった。