『白のラパン』に乗る前に：紙詰まりの神様が解く言葉の怪談

​あたしの名前はカミコ。人間は「紙詰まり」って呼ぶ。 スマホでもプリンタでも、文章が詰まった瞬間、アンタは白いスズキ・ラパンの運転席に強制乗車させられる。助手席には、白いフリルと赤い瞳のアタシ。 ​言葉を大事にしないヤツには容赦しない、強制お仕置きドライブの始まり。 ​古びた歌謡曲が流れる車窓の風景は、乗客の「詰まり」の心象風景を映し出す。離婚届の「理由」が書けないサラリーマン。常連客への「ありがとう」が定型文になってしまう食堂のおばちゃん。推敲の果てに自分の文章を見失った新人作家。 ​アタシの役割は、ただ一つ。 「紙を大事にしろ。言葉を大事にしろ。」 ​軽口基調のZ世代女子の口調で、時に詩的で鋭い真実を突きつけながら、アタシは乗客の人生の詰まりを解消していく。 ​これは、ノスタルジーと都市伝説が混ざり合った、言葉の付喪神が贈る連作短編・怪談ドライブストーリー。