俺の無勇伝
小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品
あらすじ
平凡なサラリーマン、坂本浩二。 毎日リモコンのボタンを押すように繰り返すだけの人生。 そんなある日、彼は新任の美しい秘書・結城美咲と出会う。 完璧に見えた彼女が抱える“秘密”に触れた瞬間、坂本の世界は静かに軋み始めた。 ――社長室のパソコン、消せない契約ファイル、そして「見られている」という警告。 操作されるのは、会社か、自分か。 日常が音もなく壊れていくオフィス・サスペンス。 ※こちらは友人の作品を代理で投稿しています※
本文
第二章 歯車がずれた音
「坂本さん、今日少しお時間ありますか?」
昼休み、給湯室のドアの隙間から顔を出した結城さん。
その声はいつもの柔らかさを失っていた。
「え、ああ……。カップ麺なんで、いくらでも時間ありますよ」
「……屋上、行きませんか?」
***
昼の屋上。ビル風がスーツをはためかせる。
紙コップを持つ彼女の手が小刻みに震えていた。
「社長のこと、どう思います?」
「どうって……怖いですよね。あの目。笑ってても冷たい。」
「ええ。――あの人は、人を壊す笑顔をします。」
その言葉の冷たさに、思わず息を飲む。
「私、あの人の“契約相手”なんです」
「契約?」
結城さんは、唇をかすかに噛んでから、静かに語り出した。
新社長が就任した直後、社長室に呼ばれたこと。
“君の能力を正しく使いたい”と言われ、昇進と引き換えに「個人契約書」にサインさせられたこと。
そこには、業務外の“接待・同伴”という曖昧な項目が並んでいた。
「断れば左遷。受け入れたら、監視。どっちにしても地獄なんです」
その声は震えていたが、涙は出なかった。
泣く気力すら、もう残っていないのだとわかった。
「最近、社長が私のPCに遠隔監視ソフトを入れたみたいで……。でも証拠がない。
だから、あなたにお願いしたいんです」
「俺が? 一体何を……」
「社長室のPCに、私の“契約ファイル”が残っているはずです。フォルダ名は『E.Y_confidential』。それを削除してほしい。」
社長の裏の顔。
完璧な笑顔の下にある“支配欲”。
それを暴く鍵が、そこにある。
「お願いします。あなたなら、誰にも疑われません。――坂本さんって、優しい人だから。」
俺は答えられなかった。
ただ、うなずいた。
彼女の言葉の奥に、同じ“操り人形”の痛みを見たからだ。
作品統計
📚 本を探すなら「よみどき」(あいぺんが運営する本の発見サイト)
130万冊を超えるコミック・小説・書籍の順位と値段を毎日みて、いま読むものを決められます。