風狼戦記-Bullet of Queen-

小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品

📅 公開日: 2025/11/22 📚 シリーズ: 風狼戦記-Bullet of Queen- 📝 1,311文字 🤖 AI創作支援作品 ✅ 全年齢

あらすじ

経済が崩壊した近未来日本。 国家は形骸化し、企業が「株=デジタルポイント」を銃で奪い合う“合法戦場”が社会を支配していた。 弱小企業・繋士商事に入社した新人リオ・カザギは、亡き父の死の真相を追うため、 孤高の先輩・ナツ・オウガミとバディを組む。 風のように柔らかく、狼のように鋭く——正反対の二人が衝突しながらも、 次第に信頼と絆を築いていく。 だが、世界の裏を操る「元締」カムラギの陰謀が、二人を戦いの渦へと引きずり込む。 奪うか、守るか。 株と銃弾が飛び交う経済戦争の果てに、少女たちは“真の女王(クイーン)”となる。 現実と理想が撃ち合う近未来バディ戦記——『風狼戦記 -バレット・オブ・クィーン-』

本文

第8話 空白の時間

 事務所の午後は、深呼吸みたいにゆっくりしていた。

 戦闘の気配はひとかけらもなく、蛍光灯の光さえ眠たげに見える。

 こういう時間が永遠に続けばいいのに、と誰かがこぼしそうなほど穏やかだった。

 サナエが資料を抱え、ヒロミツのデスクへ近づくと、ヒロミツは椅子をくるっと回し、当然のように通せんぼした。

「ちょっと通してください」

「まぁええやないですか。俺と一息ついてからで」

「ヒロミツさん、またそういう……」

 サナエは困った顔をしているけれど、本気で怒っているわけではない。

 むしろ、あしらう技術が上手くなってしまったぶん、対応が妙に慣れてきている。

 ヒロミツはサナエの優しさに付け込み、更に近付き両足で彼女の体をホールドした。

「ヒ、ヒロミツさん、椅子近いですってば!」

「そんなん、サナエが可愛らしい顔するから悪いねん」

「……そんなこと言っても誤魔化されませんよ!」

「誤魔化してへんで。素で言うてる」

 息を呑んだサナエの耳が、ふっと赤く染まる。

 軽口なのか、本音なのか。

 彼の言葉は体温が読めないぶん、余計に心の深いところを揺らしてしまう。

 給湯器のほうでコト、と小さな音がした。

 リオが丁寧にカップに湯を注ぎ、その手元に湯気がふわりとのぼる。

 ヤクモは横目でそれを確認しながら書類を閉じた。

「ヒロミツさん、今日も……賑やかですね」

 リオの控えめな敬語に、ヤクモが口元だけで笑う。

「まぁ、あの二人は騒いでるくらいで丁度いいんだ」

「ふふ、確かに……そんな気がします」

 リオはコーヒーを受け取ってもらうと、そっと笑みを落とした。

 ヤクモはマグを受け取り、ひと口すする。

「お前の淹れるコーヒーは落ち着くな」

「ただのスティックコーヒーですよ?」

「いや、それでも味は変わる。人によって違うもんだ」

 頬を緩めて呟くヤクモの言葉に、リオの頬が少し赤くなる。

  ヤクモはその変化を見逃さず、静かに目を細める。

 背中を預けられる相手というのは、こういう温度の人間なのだろう。

「おーおー、なんや? 二人でえぇ雰囲気出してますやん?」

 すかさずヒロミツが割って入る。

 サナエは「ああもう!」と声を上げ、書類で彼の肩をぽすっと叩いた。

「ヒロミツさんは黙っててください!」

「なんでや。俺だけのけもんか?」

「そうじゃなくて……ちょ、何してるんですか!?」

 ヒロミツは甘えるようにサナエの腰に腕を回す。

「やっぱり意識してくれてるん?」

 サナエの顔が一気に沸騰する。

 どう反論しても、彼のペースに巻き込まれるが、その巻き込まれる感じが――嫌いじゃない自分がまた面倒くさい。

「……あの、お二人とも落ち着いてください」

 リオが控えめに声を入れる。敬語が少しだけ震えていた。

 ヤクモは横で静かに肩を揺らし、笑いをこぼす。

「まぁまぁ。こういう時間も悪くないだろ」

「はい……。すごく……いいと思います。こういう午後」

 コーヒーの匂い、笑い声、くすぐるような空気。

 戦場の殺気とは無関係の、ぜんぶがやわらかい時間だった。

 この穏やかさがあるからこそ、次の戦いにも立ち向かっていける。

 物語はこういう“余白”で深く息をする。

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作者について

文月 澪

文月 澪

「シリアスもラブコメも、すべては“人”の物語。」 はじめまして、文月澪(ふづき みお)と申します! SFやファンタジーを舞台に、恋とアイデンティティの物語を書いています。 異世界転生...

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