風狼戦記-Bullet of Queen-

小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品

📅 公開日: 2025/12/16 📚 シリーズ: 風狼戦記-Bullet of Queen- 📝 1,772文字 🤖 AI創作支援作品 ✅ 全年齢

あらすじ

経済が崩壊した近未来日本。 国家は形骸化し、企業が「株=デジタルポイント」を銃で奪い合う“合法戦場”が社会を支配していた。 弱小企業・繋士商事に入社した新人リオ・カザギは、亡き父の死の真相を追うため、 孤高の先輩・ナツ・オウガミとバディを組む。 風のように柔らかく、狼のように鋭く——正反対の二人が衝突しながらも、 次第に信頼と絆を築いていく。 だが、世界の裏を操る「元締」カムラギの陰謀が、二人を戦いの渦へと引きずり込む。 奪うか、守るか。 株と銃弾が飛び交う経済戦争の果てに、少女たちは“真の女王(クイーン)”となる。 現実と理想が撃ち合う近未来バディ戦記——『風狼戦記 -バレット・オブ・クィーン-』

本文

第10話 数の暴力

砂時計の砂が落ちきる前みたいな、じりじりした空気が事務所に漂っていた。

決算期が近い――株賭博の世界では、季節の変わり目よりよほど気圧変動が激しい時期だ。

ヤクモがホロ画面を開いたまま、椅子に浅く腰掛けて腕を組む。視線は真っ直ぐでぶれない。

ナツはいつも通り無表情……に見えるが、耳の後ろの小さく光る端末がかすかに脈打っていた。緊張の表れだ。

サナエはおっとり笑みを浮かべながら、温かいお茶をリオに差し出した。

「リオさん、喉を潤してからの方が頭が回りますから」

「ありがとうございます、サナエさん」

リオはカップを両手で包んだ。ほんのり温かい。緊張をほぐしてくれる。

ヤクモが、ようやく画面からこちらに目を移した。

「さて。決算期と株賭博の仕組みだ。ここからが実戦の前提になる」

リオは背筋を伸ばし、ナツは無言のまま横目でヤクモを見る。

ヤクモは指先でホログラムの円グラフを弾いた。

淡い青の光が空中に散る。

「まず、“決算期”ってのは企業の収益と損失がまとめて公になる時期だ。普通の会社もそうだが、俺たちが相手にしてるのは“戦闘企業”だ。戦闘株・サイバー株・物流株……全部、実戦結果が価値に直結してる」

ナツが静かに補足を入れた。

「戦闘株は、戦闘班の勝率と作戦達成率を基準に変動する。サイバー株は、侵入成功率やセキュリティ強度……つまり、ハッキングでどれだけ“獲れるか”で値が動く」

声は淡々。けれどその目は、データの流れを飲み込む鋭さを帯びていた。

リオはその横顔を見ながら、小さく息を呑んだ。

ナツの世界は数字でできている。

そこに踏み込むのは、簡単じゃない。

「リオさん、ここまでは大丈夫ですか?」

サナエが柔らかく尋ねる。

「はい……ええと、戦闘株は“戦いの結果”、サイバー株は“侵入の成否”。それが企業の利益に直結するので、決算期には値動きが激しくなる……という理解で合っていますか?」

「合ってるよ」

ヤクモがうなずく。

「ただ、もうひとつ重要なのが“保有株”だ。お前がこれから持つ株は資産だけじゃなく、作戦の優先権にも絡む」

リオは思わず瞬きをした。

「作戦……の優先権?」

ナツが手元の端末に指を滑らせる。

新しいホログラムが開き、戦場の地図が浮かび上がった。

「株主は企業の戦力を“どこに投入するか”を左右します。だから保有株が多いほど、自分の得意分野の作戦を回しやすくなる」

「つまり、株を持つということは……責任も持つ、ということなんですね」

「責任だけじゃない。リスクもだ」

ヤクモの声音がわずかに低くなる。

「決算期は情報の価値が跳ね上がる。だから“情報戦”が増える。ヒロミツみたいなのが得意な分野だな」

リオは苦笑した。

ヒロミツの軽妙な声が脳裏をよぎる。

――情報はな、空気みたいなもんや。吸い込み方次第で毒にも薬にもなる。

ヤクモが続ける。

「情報戦ってのは、データの裏を読むだけじゃない。“意図”を読む。嘘のリークで値を揺らしたり、敵企業の戦績をわざと遅延させる連中もいる」

「そんな……」

「戦場を使った株賭博だろうが、やってることは古い“相場”と変わらんさ」

サナエがそっと苦笑した。

「でも、価値を見抜ける人には強力な武器になります」

ナツは無表情のままだが、ひとつだけ視線が変わった。

リオに、ほんの少しだけ注意を向けたような――静かな観察の気配。

「……リオ、決算期の数字は“生き物”だ。予測だけで判断すると飲み込まれる」

「はい。気を付けます」

たどたどしい返答だったが、ナツはわずかに瞬きをした。

拒絶ではなく、観察から少し距離が縮んだような温度。

ヤクモが立ち上がって、場の空気を締める。

「今日覚えてほしいのはひとつだけ。“株は戦力”。それを動かす以上、俺たちはただの作戦要員じゃない」

サナエが優しく付け足した。

「リオさんが持つ株は、きっと意味を持ちますよ。少しずつ慣れていきましょう」

リオは喉の奥で小さく息を整えた。

胸の奥に、緊張と――少しの高揚が混じる。

戦場の“数字”に触れるということは、自分が隊の一部として本当に組み込まれていくということだ。

ナツの視線が、またすっと横から刺さる。

その冷静さが、不思議と指針に思えた。

決算期はすぐそこ。

株も戦場も、生き物みたいに騒ぎ出す時期だ。

リオはカップを置いて、静かに息を吸った。

新しい戦いがまたひとつ、始まろうとしている。

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作者について

文月 澪

文月 澪

「シリアスもラブコメも、すべては“人”の物語。」 はじめまして、文月澪(ふづき みお)と申します! SFやファンタジーを舞台に、恋とアイデンティティの物語を書いています。 異世界転生...

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