推奨スコア0.01%の恋人(Geimini)
小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品
あらすじ
複数のAIに同じプロンプトで作品を作ってもらったら、どんな違いが出るのか?こちらに載せていきます。 第1回プロンプト「SNSからトレンドをリサーチして2500文字の小説を書いてください!テーマやメッセージはすべておまかせ、バズりそうなものにして!」
本文
推奨スコア0.01%の恋人(Gemini)
午前二時、スマートフォンのバイブレーションが鳴った。
枕元の端末を手に取ると、画面には無機質な通知が表示されている。
『あなたへの推奨パートナーが見つかりました。適合率0.01%。この出会いは、あなたの人生における最大のリスクであり、最大の投資です』
私は眉をひそめた。私が契約しているのは、政府公認の超高性能マッチングAI「ミネルヴァ」だ。
月額五万円も払っている理由はただ一つ。
失敗しないためだ。
無駄なデート、無意味な駆け引き、そして傷つく結末。
それらすべてを「非効率」として排除し、最短ルートで幸福へ辿り着く。
それが私の、いや、この二〇二五年の東京を生きる私たちの正解だったはずだ。
「0.01%? バグじゃないの」
私は独り言を漏らしながら、そのプロフィールを開いた。
写真に写っていたのは、寝癖のついた髪で、口の端にケチャップをつけたまま笑っている男だった。
名前はカイト。
職業、古道具屋の修理職人。
年収、私の三分の一。
趣味、散歩と昼寝。
私のプロフィール――大手広告代理店勤務、趣味は資産運用とジム通い、性格診断は「合理的・論理的」――とは、何一つ重なるところがない。
『ミネルヴァ、再検索して。これ、何かの間違いでしょ』
音声入力で訴えるが、AIは冷淡に返した。
『再検索の必要はありません。彼こそが、現在のあなたに不足している変数を補う唯一の解です』
変数を補う? 意味がわからない。
だが、ミネルヴァがここまで断言するのは珍しい。
私は「ネタ作り」と割り切って、その週末、彼と会うことにした。
SNSで「AIが選んだ最悪の相手」として投稿すれば、少しはバズるかもしれない。
そんな不純な動機だった。
待ち合わせは、下北沢の古い喫茶店だった。
約束の五分前に到着した私は、既に店内にいた彼を見て溜息をついた。
彼は文庫本を読んでいたが、その手にはまたしても何かのソースらしきものが付着しているし、着ているセーターは裏返しだった。
「あ、どうも! ミナトさんですよね? 初めまして、カイトです」
彼は私に気づくと、破顔した。
その笑顔は、これまでの「適合率90%以上」のエリートたちが向けてきた、計算された爽やかな笑顔とは対極にあった。
無防備で、隙だらけで、なんだか動物みたいだ。
「初めまして。……あの、セーター、裏返しですよ」
「えっ、ほんとだ! うわあ、恥ずかしい。でもまあ、タグが首に当たらないから、これはこれで機能的かも」
彼は恥ずかしがるどころか、ケラケラと笑った。
普通なら、この時点で「蛙化」――相手の些細な言動で急激に冷める現象――が起きるはずだ。
だらしない。
みっともない。
時間の無駄。
私の脳内の「効率化担当大臣」が、即時撤退を命じている。
それなのに。
なぜか私は、席を立てずにいた。
「ミナトさん、これ知ってます? この店のコーヒー、出てくるのに二十分かかるんですよ」
「はあ? 二十分も? そんなの時間の無駄じゃ……」
「でもね、その二十分の間、豆を挽く音が聞こえて、香りが漂ってきて、店主があくびをするのが見える。その『待つ時間』が味付けになるんです」
彼はそう言って、読みかけの文庫本を閉じた。
その後の時間は、私の人生で最も非効率な二時間だった。
彼は私の仕事の話を聞いても「へえ、すごいね」としか言わず、代わりに道端で見つけた変な形の石の話や、近所の猫の喧嘩の仲裁に入った話をした。
生産性のかけらもない。
得られる知識も、人脈もない。
けれど、コーヒーが運ばれてきた時、私は自分がスマホを一度も見ていないことに気づいた。
彼がコーヒーを一口飲んで、「熱っ!」と舌を出した時。
本来なら幻滅するはずのその間抜けな顔を見て、私の胸の奥が妙な音を立てた。
キュン、ではない。
もっと重くて、温かい何か。
ああ、これだ。
SNSで最近よく見る言葉。「蛇化現象」。
ダサいところが愛おしい。
ダメなところも含めて、丸ごと飲み込んでしまいたい。
そんな衝動。
私は完璧なエスコートを求めていたはずなのに、目の前のこの「バグだらけ」の男が、どうしようもなく魅力的に見えてしまった。
店の外に出ると、雨が降っていた。
予報では晴れだったのに。
「うわ、降られたなあ」
彼は困ったように空を見上げたが、傘を持っていないようだった。
私はバッグから軽量の折りたたみ傘を取り出そうとした。
準備万端。
いつだって私はリスクヘッジを欠かさない。
「入りなよ。駅まで送る」
私がそう言おうとした瞬間、彼は突然、雨の中へ飛び出した。
「ミナトさん!?」
「あそこの軒下まで競争! 負けた方が次のコーヒー奢りね!」
「はあ!? 意味わかんない! 服が濡れるし、メイクも崩れるし……!」
叫びながら、私は走り出していた。
傘を握りしめたまま、開くことも忘れて。
冷たい雨が頬を打つ。ヒールが水たまりを叩く。
最悪だ。
非効率の極みだ。
明日はクリーニングに行かなきゃいけない。
でも、前を走る彼の背中を追いかけながら、私は大笑いしていた。
お腹が痛くなるくらい、久しぶりに笑っていた。
その夜、私は部屋でミネルヴァに問いかけた。
「ねえ、どういうこと? あんな人、私の理想とは正反対よ」
AIのインジケーターが静かに青く明滅する。
『あなたは問いかけましたね。適合率0.01%の意味を』
「ええ。価値観も生活水準も全く違うわ」
『その通りです。過去のデータに基づく適合率、つまり「あなたが不快にならない確率」は限りなくゼロでした。しかし、ミネルヴァのアルゴリズムは、あなたの深層心理にある”停滞への恐怖”を検知しました』
停滞。
『自分と似た人間、予測可能な未来。それは安心ですが、成長はありません。生物学的にも、異なる遺伝子情報の交錯こそが生命力を高めます。あなたが必要としていたのは、完璧なパズルのピースではなく、完成していたパズルを一度壊して、より大きな絵を描き直させてくれる”異物”だったのです』
異物。
私は窓の外を見た。雨は止み、東京の夜景が滲んで見える。
思い出すのは、雨に濡れた彼の笑顔と、濡れた前髪をかき上げる自分の手。
完璧に整えられていた私の毎日は、今日、彼というバグによって完全に破壊された。
そして、その破壊された景色は、今まで見たどんな景色よりも鮮やかだった。
「……悔しいけど、あんたの勝ちかもね」
私はスマホをタップし、カイトにメッセージを送った。
『次のコーヒー、私が奢る羽目になりそう』
既読はつかない。
きっと彼は今頃、壊れたラジオか何かを修理しながら、スマホのことなんて忘れているのだろう。
返信が遅いことにイライラしない自分に驚きながら、私は少しだけ開いた窓から、雨上がりの湿った風を胸いっぱいに吸い込んだ。
効率的な幸せなんて、もういらない。
私はこの予測不能なエラーコードを、人生をかけて愛してみることにした。
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