第15節「黒い泉へ――勇者パーティ初の本格探索」
小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品
あらすじ
《蒼真、神殿に立つ ― 異界の剣聖は、美しき仲間と共に》
本文
# ◆ 第1章「蒼の勇者、降り立つ」
## ――第15節「黒い泉へ――勇者パーティ初の本格探索」――
エルナに案内され、蒼真たちは村の外れ――森の入口へたどり着いた。
森は昼間だというのに薄暗く、湿った土の匂いが充満している。
鳥のさえずりも、虫の羽音もない。
まるで森全体が息を潜めているかのようだった。
「……空気が重いですね」
みのりが小さく肩を抱く。
「ここはもう“侵食”されてる。黒い魔力に」
砂月は表情を引き締め、耳を澄ませる。
「二人とも、俺の近くを離れるな。
エルナも。絶対に俺より前に出るなよ」
「うん……!」
蒼真は周囲の気配を探りながら、ゆっくり森の奥へと歩き出す。
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## ◆ ● 蒼真の指示と、みのりの成長
「みのり、後衛から補助頼む。
美容師の技で器用に作る“魔糸(まし)”の技、もう使えるな?」
「はいっ……練習したやつ、ちゃんとできます……!」
みのりは胸の前で両手を構え、指先に淡い光を集める。
髪を扱う繊細な手の動きが魔力と結びつき、《強化糸》を生み出す。
この世界で、美容師の技術は“魔糸魔法”に適性があるらしい。
「俺が前に出るから、必要な時だけサポートしてくれ」
「わ、分かりました……っ」
みのりは緊張しているが、その瞳には確かな意志が宿っていた。
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## ◆ ● 砂月の観察と、潜む敵意
砂月は蒼真の背中を見つめながら、小さく息を吐く。
(……本当に、絵になる男よね。
剣の持ち方とか立ち姿が、もう“主人公”って感じ)
しかし、ただの憧れだけではない。
(それだけ目立つってことは、敵も寄ってくる。
さっきから……気配がひっかかるのよね)
砂月の“役者としての勘”が告げていた。
この森には、少女の母親以外にも何かが潜んでいる。
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## ◆ ● 黒い泉へと通じる道
森の奥に進むと――
土の色が変わり始めた。
腐ったような黒い染み。
ぬめりのある匂い。
「ここだな。泉の“匂い”が濃くなってきた」
蒼真は剣を抜く。
蒼い光が刀身に走り、闇を切り裂くように周囲を照らす。
「すご……いつ見てもキレイ……」
みのりはうっとりした表情を漏らす。
「蒼真、格好つけてないで集中しなさい」
砂月が小声で釘を刺す。
「いや……これは戦いの準備だ。別に格好つけてるわけじゃ――」
「“蒼気刃(そうきじん)・覚醒”とか叫ぶ人が何を言ってるのよ」
「うっ……」
(確かに叫ぶけど……)
珍しく蒼真が黙る。
みのりはクスクスと笑う。
だがその和やかな空気は――一瞬で破られた。
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## ◆ ● 影の襲撃
ズル……ズルルッ……
ぬめるような音とともに、足元の影が“盛り上がった”。
「来る――ッ!」
蒼真が叫んだ瞬間、黒い塊が地面から飛び出す。
影虫とは違う。もっと“形”が人に近い。
「……エ、エルナのお母さん……なの……?」
エルナが震えた声を上げた。
その影は、確かに“人間だった者”の輪郭を持っていた。
腕は細長く伸び、指先は鉤爪のように変形し、
口元は裂け、黒い液を垂らしている。
「……アァ……アァア……」
苦しそうな、助けを求めるような声。
だが近づけば襲ってくるのは明らかだった。
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## ◆ ● 蒼真の決断と斬撃
「みのり、砂月、エルナを守れ!」
「はいっ!」
「任せて!」
蒼真は一気に前へ出た。
相手が“元は人”だと分かっていても、迷ってはいられない。
「お母さんかどうかは、後で必ず確認する。
この場は……俺が止める!」
蒼真の蒼い魔力が裂けるように迸る。
「――蒼牙閃(そうがせん)!!」
青白い斬光が一直線に走り、影の化け物の腕を切断した。
「アアアアアアアア!!」
影は絶叫しながら後退し、黒い霧を撒き散らす。
触れた草が一瞬で枯れていく。
「くっ……回復不能の腐食か。厄介だな」
蒼真は歯を食いしばり、剣を構え直す。
「エルナ。お母さんを助けたいか?」
「……助けたい……! でも……でも……!」
「なら、ここで逃げるな。俺も逃げない」
蒼真の言葉に、エルナの瞳が大きく揺れ――
ぎゅっと唇を噛みしめた。
「……うん!」
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## ◆ ● 黒い泉の中心へ
影の化け物は森の奥――“黒い泉”の方向へと逃げていく。
「追うぞ!」
蒼真が駆け出し、みのりと砂月、そしてエルナもその背を追う。
黒い泉の正体。
少女の母親の行方。
影化の原因。
全てが泉の中心にある。
そして彼らを追う“さらに別の影”が、
静かに森の奥へと消えていった。
(――如月翔)
蒼真たちの知らぬところで、複数の運命が交錯し始めていた。
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