第14節「リュミエ村の異変――黒い泉の噂」
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あらすじ
《蒼真、神殿に立つ ― 異界の剣聖は、美しき仲間と共に》
本文
# ◆ 第1章「蒼の勇者、降り立つ」
## ――第14節「リュミエ村の異変――黒い泉の噂」――
リュミエ村へ近づくにつれ、空気にかすかな違和感が混じり始めた。
草の匂いの奥に、どこか鉄っぽい――焦げたような匂いがある。
「……魔力の残り香、ですね。
しかも……普通じゃない」
砂月が鼻を押さえる。
女優として鋭い感覚を持つ彼女は、匂いにも敏感だった。
「みのりたち、気をつけろ。
このあたりの魔力、少し濁ってる」
蒼真は剣の柄に軽く手を添えつつ、前方を見据えた。
「蒼真さん……あの黒い虫の残りみたいな、そんな感じ……ですか?」
「ああ。近いな。ただ、もっと濃い」
みのりが不安そうに袖をつまむのを見て、蒼真は優しく微笑む。
「大丈夫だ。何が来ようと、俺が守る」
「……はいっ」
みのりはほっと胸を押さえた。
砂月もさりげなく視線を逸らしながら、唇を引き結ぶ。
(……格好つけすぎ。だけど……悪くない)
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## ◆ ● 村の入口で泣いていた少女
村の木製アーチが見えた時――
「た、助けてください……!」
小さな影が草むらから駆け寄ってきた。
十歳ほどの少女。
泣き腫らした目をして、蒼真に縋りつく。
彼女は日本人ではない。
一般的なこの世界の子どもだ。
「どうした? 何があった」
「お、お母さんが……黒い沼に行ってから、帰ってこないの……!」
黒い沼。
その言葉に、蒼真たちの表情が一気に緊張した。
「黒い沼……って、もしかして……」
「最近できた“黒い泉”のことだな」
少女は何度も頷き、さらに蒼真の手を握る。
「村のみんな、怖がって近づかなくて……
でも、お母さんは薬草を採りにいって……
生きてるかどうかも……」
言葉が涙に溶けていく。
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## ◆ ● 蒼真の決断
「蒼真さん……どうします?」
「決まってるだろ」
蒼真は少女の頭に優しく手を置いた。
「黒い泉に行こう。お母さんを助けに」
「ほ、本当に……!?
でも……危ないよ……!」
「危険な場所ほど行く価値がある。
困ってる人を放っておくわけにはいかない」
蒼真の言葉に、少女は胸に手を当てて震える。
「……ありがとう、お兄ちゃん……!」
「名前を教えてくれ。俺は蒼真だ」
「わ、わたし……エルナっていいます……!」
「よし、エルナ。黒い泉の場所を案内してくれ」
「う、うん!」
エルナは涙を拭き、決意した瞳で先を指差す。
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## ◆ ● みのりと砂月の心境
「……蒼真さんって、ほんと誰にでも優しいですよね」
みのりは少し羨ましそうに呟く。
(でも……そんな優しさに惚れちゃったんだけど……)
「困ってる子を助けるのは当然でしょ。
……あたしだって、そうするし」
砂月は涼しげに言うが、内心は複雑だ。
(この人は……誰をも惹きつける。
みのりちゃんの気持ちも分かる……けど……)
砂月は小さく息をつく。
(……油断してると、いつの間にか距離を詰められる。
蒼真って、そういう男)
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## ◆ ● 新たな事件の影
蒼真たちが村へ向かって進む一方――
村のはずれの森の奥では、黒い霧が濃く渦巻いていた。
そして――
その中から何かがゆっくりと“形”を作り始めていた。
影虫よりも大きい。
より人型に近い。
声にならぬ呻きが漏れる。
「……ア……ァ……」
それは“人を材料にして生まれる影”だった。
黒い泉の“歪み”が、生きたまま人を変異させている。
そして影の化け物は、蒼真の方角へ向かって動き始めた。
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