第14節「白蒼重奏 ― 女神を斬る理由」
小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品
あらすじ
《蒼真、神殿に立つ ― 異界の剣聖は、美しき仲間と共に》
本文
# ◆ 第4章「みのり救出編 ― 白銀の夢路を駆ける者」
## ――第14節「白蒼重奏 ― 女神を斬る理由」――
空間が、静止したかのように感じられた。
影の幾何学は裂け、
女神の領域は不完全なまま揺らいでいる。
それでも――
セレスは立っていた。
『……見事です』
その声は、もはや敵意だけのものではない。
どこか、試練を終えた者のような、穏やかさを含んでいた。
『蒼真。白の巫女。
あなたたちは“力”ではなく、“理由”でここまで来た』
みのりは、胸元に手を当てる。
激しい魔力消費で息は荒い。
薄着の衣装が上下し、そのたびに蒼真は一瞬だけ視線を逸らした。
(……戦闘中だぞ、俺)
そう思いつつも、
守りたいという衝動が、さらに強くなる。
「理由なら、簡単だ」
蒼真は一歩、前へ出た。
「仲間を縛る力があるなら、
それが神だろうと女神だろうと――俺は斬る」
『……強いですね』
セレスは、ふっと笑った。
『いいえ。
本当に強いのは……』
彼女の視線が、みのりへ向く。
『恐怖の中でも、誰かと“共にある”ことを選べる心』
「……っ」
みのりの頬が、赤く染まる。
◆ ◆ ◆
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セレスが両手を広げる。
影が、彼女の背後で大きく波打つ。
『ならば――
最後は“正面から”』
空間が収束する。
余計な演出も、
召喚もない。
純粋な――
**女神と剣士の一対一**。
「みのり」
「……はい!」
蒼真は、振り返らずに言った。
「最後の支援だ。
全部、俺に預けろ」
みのりは、ほんの一瞬ためらってから、
強く頷く。
「……全部、受け取ってください……!」
その言葉と同時に、
白の紋章が完全に開放された。
「スキル最終展開――」
声は震えていない。
「**白輝全譲**!!」
◆ ◆ ◆
白光が、奔流となって蒼真へ流れ込む。
熱い。
眩しい。
だが――不思議と、優しい。
(……みのりの魔力……
いや、想いか……)
蒼真の剣が、
蒼でも白でもない、**澄んだ銀光**を帯びた。
「……ありがとう」
蒼真は、剣を構える。
これ以上、スキル名はいらない。
彼自身が、
一本の“答え”になる。
『――来なさい、蒼真』
セレスもまた、構えた。
影と光が、正面から激突する。
◆ ◆ ◆
音はなかった。
衝撃も、爆発もない。
ただ――
剣が、影を“通り抜けた”。
セレスの胸元に、
一本の白蒼の軌跡。
『……そうですか』
彼女は、静かに息を吐いた。
『私は……
斬られるべき女神だった』
影が、ゆっくりと霧散していく。
重圧が消え、
白の空間が、元の温度を取り戻す。
みのりが、膝をついた。
「……はぁ……
終わ……った……?」
蒼真は、すぐに駆け寄り、
彼女の肩を支える。
「無理すんな。
よくやった」
「……蒼真さん……近い……です……」
みのりの声は、弱々しく、
けれど、どこか甘い。
蒼真は、照れ隠しに咳払いした。
「……後でな」
◆ ◆ ◆
セレスの身体は、光の粒子へと変わりつつあった。
『白の巫女……
あなたの旅は、ここで終わらない』
『蒼真……
あなたの剣は……多くの女を惹きつけるでしょう』
「……余計なお世話だ」
だが、否定はしなかった。
『いつか……
また、会いましょう』
そう言い残し、
影の女神は完全に消えた。
静寂。
そして――
新たな物語への、余白。
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