4節 沈黙を破る者
小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品
あらすじ
ある刑事の叙事詩 《夜の王国 ~選択と調整の病理~》
本文
## 【第4章 法則の正体】
### 【4節 沈黙を破る者】
残り時間——
二十八分。
警視庁・臨時指揮所。
モニターに映るタイマーが、
無慈悲に数字を刻んでいく。
「御門の過去案件、
洗い出しました!」
捜査員の声が飛ぶ。
「三年前。
湾岸地区再開発——
工事現場の崩落事故」
小坂の目が、
細くなる。
「死者、
七名」
「……例の数と一致します」
朝霧が、
唇を噛む。
「原因は、
資材強度の虚偽報告。
内部告発が——」
「握り潰された」
小坂が、
静かに継いだ。
「御門の判断で、
“事故”にされた」
——沈黙。
——選ばなかった。
「犯人は、
その現場にいた」
小坂は、
断定した。
「……生き残り?」
「いや」
彼は、
首を振る。
「**遺された者**だ」
朝霧が、
ハッとする。
「被害者の家族……!」
「それも、
違う」
小坂は、
モニターを指した。
「内部告発者。
唯一、
声を上げた人間」
——だが、
守られなかった。
「……名前は?」
「——黒瀬 慎司」
一瞬、
空気が凍る。
「兄弟だ」
小坂は、
静かに言った。
「告発者は、
弟。
——消された」
残り時間、
二十分。
「居場所は?」
「事故現場跡地。
今は、
解体前の廃ビルです」
小坂は、
即座に立ち上がった。
「俺が行く」
「先輩!」
朝霧が、
呼び止める。
「……一人で?」
「犯人は、
“沈黙しなかった者”を
試してる」
小坂は、
振り返る。
「だったら、
俺が行く意味は、
一つだ」
「……一緒に行きます」
朝霧は、
迷わなかった。
「今度は、
命令を待ちません」
小坂は、
短く頷いた。
「——来い」
---
湾岸地区・廃ビル。
潮の匂い。
崩れかけたコンクリート。
最上階。
そこに、
一人の男が立っていた。
「……来たか」
黒瀬だった。
目は澄み、
狂気はない。
ただ——
固い決意だけ。
「君は、
裁かれなかった」
黒瀬が、
言う。
「だから、
俺が裁く」
小坂は、
一歩前に出た。
「……君は、
声を上げた」
「無駄だった」
「違う」
小坂は、
言い切った。
「**無駄にしたのは、
沈黙した側だ**」
御門の姿が、
奥にあった。
拘束され、
震えている。
「……私は、
怖かった」
御門が、
嗚咽混じりに言う。
「組織が、
家族が……」
黒瀬の拳が、
震える。
「だから、
七人死んだ」
「……だからこそ」
小坂は、
銃を下ろした。
「今、
沈黙を破れ」
御門は、
泣き崩れながら叫ぶ。
「——私が、
隠した!
全てだ!」
その瞬間。
黒瀬の肩から、
力が抜けた。
——選ばれた。
裁きではなく、
告白。
小坂が、
手錠をかける。
「終わりだ」
黒瀬は、
静かに笑った。
「……やっと、
救われた」
---
夜明け。
朝霧が、
呟く。
「正義って……
難しいですね」
「ああ」
小坂は、
東京の空を見上げた。
「でも、
黙らないことだけは——
選べる」
朝日が、
二人を照らす。
**沈黙は、
もう選ばれなかった。**
---
(第4章・完)
作品統計
📚 本を探すなら「よみどき」(あいぺんが運営する本の発見サイト)
130万冊を超えるコミック・小説・書籍の順位と値段を毎日みて、いま読むものを決められます。