4節 公開される裁き
小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品
あらすじ
ある刑事の叙事詩 《夜の王国 ~選択と調整の病理~》
本文
## 【第4章 法則の正体】
### 【4節 公開される裁き】
翌朝。
東京・千代田区。
御門 輝政のオフィスが入るビルの周囲は、
異様なほどの静けさに包まれていた。
警察車両。
私服警官。
目立たない位置に配置された警備要員。
——完全包囲。
だが、小坂 凌の胸の奥にある違和感は、
消えなかった。
「……多すぎる」
小坂は、
イヤーピース越しに呟く。
「警護、ですか?」
隣を歩く朝霧が、
視線だけで応じる。
「いや……
**舞台装置**だ」
犯人は、
“見せる”ことを恐れない。
むしろ——
望んでいる。
エレベーターが、
静かに上昇する。
御門のフロア。
扉が開いた瞬間、
空気が変わった。
——人が多い。
報道関係者。
社員。
警察幹部。
形式ばった
「安全確認会見」。
御門自身が、
マイクの前に立つ。
「皆様に、
ご心配をおかけしていること——」
その声は、
よく通る。
だが、
小坂は見逃さなかった。
御門の指先が、
微かに震えている。
——彼は、
“知っている”。
「……来る」
小坂の声と、
それは同時だった。
——会場の大型モニターが、
一斉にブラックアウト。
次の瞬間。
画面に映し出されたのは、
無機質な白背景。
そして——
文字。
**『裁判を開始する』**
どよめき。
御門が、
蒼白になる。
「警備、
モニター切断!」
朝霧が叫ぶ。
だが、
画面は止まらない。
次の文字。
**『被告人:御門 輝政』**
小坂は、
前に出た。
「……これは、
俺が受け持つ」
彼は、
マイクを掴む。
「聞いているな」
静かな声。
「——俺が、
相手だ」
一拍。
そして——
音声が流れた。
『刑事・
小坂 凌』
歪んだ、
だが落ち着いた声。
『君は、
沈黙した』
映像が切り替わる。
——過去の事故映像。
——改ざんされた報告書。
——御門の署名。
『死者は、
七名』
御門が、
崩れ落ちそうになる。
「違う……
私は……」
『選ばなかっただけだ』
犯人の声が、
冷たく続く。
『君は、
止められた』
小坂は、
一歩踏み出す。
「……それは、
俺たち警察の仕事だ」
『違う』
即答。
『沈黙を裁くのは、
沈黙しなかった者だけだ』
朝霧が、
叫ぶ。
「そんな理屈——!」
『君はどうだ?
新人刑事』
画面が、
朝霧を映す。
『命令に逆らい、
真実を選んだ』
『——合格だ』
朝霧の呼吸が、
乱れる。
『では、
小坂 凌』
画面が、
彼を捉える。
『君は?』
沈黙。
会場全体が、
息を止める。
小坂は、
ゆっくりと口を開いた。
「……俺は」
視線を、
御門に向ける。
「**裁く側じゃない**」
一拍。
「守る側だ」
『……期待外れだ』
だが。
画面のノイズが、
一瞬だけ揺れた。
——感情。
それは、
確かに揺らいだ。
『ならば、
証明しろ』
最後の文字が、
映る。
**『三十分』**
**『沈黙を破れ』**
モニターが、
完全に暗転。
会場は、
混乱に包まれた。
小坂は、
即座に指示を飛ばす。
「全員、
御門の過去案件を洗い直せ!」
「犯人は、
“裁きの続きを”
どこかで見てる!」
朝霧が、
隣で頷く。
「——見せます」
「何を?」
「沈黙しない、
正義を」
小坂は、
彼女を見た。
そして、
初めて笑った。
短く、
だが確かな笑みだった。
---
作品統計
📚 本を探すなら「よみどき」(あいぺんが運営する本の発見サイト)
130万冊を超えるコミック・小説・書籍の順位と値段を毎日みて、いま読むものを決められます。