第4話 オーダー発表
小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品
あらすじ
VVB(Virtual・Venus・Baseball)、Vtuberと女子野球が=になった世界で - 第4話 オーダー発表
本文
「ふぃー……」
練習でかいた汗を洗い流すのは欠かせない。
びちょびちょのままで授業を受けるのも嫌だし、何より臭いが気になるから……ね。
かくいう鹿倉監督も、高校時代に想い人から汗臭いと言われた事をキッカケにエチケットに人一倍気を使うようになったんだとか。
「……んお?」
あ、考え事してたらシャワー室が満室だ。
サッと流すだけだからちょっと待てば何処かしら空くけど……話のネタを作るチャンスでもある。
「付き合ってくれそうな子はー……あ、居た居た! ネリアちゃーん!」
「はい?」
「お邪魔しますねーっと」
「きゃっ!? あ、火夏先輩?」
「ご一緒して良い? そんでSNSで発信して良い?」
「あぁ、百合営業って奴ですね? どうぞどうぞ、火夏先輩となら大歓迎ですっ!」
「ありがとー」
いきなりシャワー室に突撃した私を笑顔で迎えてくれたのは後輩のネリアちゃん。
彼女もまた特待生で、1年でありながら既にVTuberとしても活動している。
華麗な守備とシュアな打撃で将来を期待されている大型ショートだ。
「流石に2人だと狭いねー」
「肌と肌が触れ合っちゃいますね♡」
「おー、それそれ! そーゆーのをドンドン発信してこうよ!」
「だったら……」
「わひゃ!?」
え、後ろから抱き締められた!? それに手が……!
「えっと、ネリアちゃん……?」
「うふふ、これも百合営業ですよね? 折角の機会なんですからファンの皆さんにサービスしないと!」
「あ、うん。そうだね……流石はネリアちゃん……!」
「ありがとうございます♡」
ネリアちゃんの手が、指が、私のお腹を優しく撫でる。
汗を洗い落としているだけっていうのは分かるけど、背中に胸が当たる程密着されて妙に意識してしまう。
「あ、ちょ……! 胸はやり過ぎかなって……っ!」
「えー? 女の子同士ならこれ位普通ですよ?」
「んん……っ」
耳元で囁かれてゾクッとしてしまう。
い、いや駄目だ! ネリアちゃんは人懐っこくて、だから百合営業の距離感が分かってないんだ。
このままされるが儘になっていると大変な事になる……っ!!
「ね、ネリアちゃん、もう良いから。今度は私がネリアちゃんの汗を流してあげるからね!」
「えー?」
ふぅ、危なかった……
流石に前を触る勇気は無くて、お湯を当てながら背中を摩るのが精一杯だ。
「『朝練終わったらシャワールーム満室だったからネリアちゃんの所に突撃したったw
洗いっこを口実にスベスベ美肌を堪能してやったぜ……!』っと。送信」
「おー、これが百合営業……私もやろっと」
「一応投稿する前に見せてね?」
「はーい。えーっと……
『シャワー浴びてたら火夏先輩が入ってきてビックリ!
ネリアの隅々まで洗われちゃいました……♡』
こんなんでどうです?」
「おー、良い感じ良い感じ」
「やった! 来週のコラボに向けて良い話のネタが出来ましたね!」
「そーだね。一応齟齬が出ないように後で軽く打ち合わせしとこうか」
「了解ですっ!」
ビシッと敬礼するネリアちゃん。
うんうん、やっぱり素直で可愛い後輩は良いものだ。
チラッとSNSを覗くと、私の投稿に早速コメントが付いていた。
《また別の女に手を出して……》
《裸で触りっことかもう完全に“それ”じゃん》
《ひなねりも好きだ……》
うんうん、反応も上々! 楽しんでもらえたみたいで一安心だ。
「よし、授業も頑張りますかー」
パンパンと頬を叩いて気合いを入れた。
なお、さっきの投稿を見たのか教室に向かう途中でアヤにお尻を抓られた。
これも百合営業のネタにさせて貰おう。
※※※※※
「よーし練習終わり! 全員集合!」
「「はいっ!」」
授業を終えて放課後。
午後練習が終わり、監督に集合を掛けられた。
「今までよく頑張った。只今より夏大会のオーダーを発表する!」
「「……!」」
来た! 皆この瞬間を心待ちにしていた。
レギュラー未経験の人はここで選ばれて、初めてVTuberの身体が与えられる事で本格的な配信活動を行えるようになる。
仮にプロになれなくても、VTuber活動実績の有無で大学・社会人野球に進む場合の待遇も違ってくる。
3年生にとっては特に正念場だ。
ちなみにウチはベンチ入りでも身体は貰えるけど、中にはそうじゃない学校もある。
その場合、出場する際は汎用の黒子衣装で出る事になる。
そして既にVTuberとして活動している私達特待生であっても当然ながら試合に出たいし、その為に努力してきた。
去年はすぐ上がゆら先輩だった事もあってベンチ入りも出来なかったけど、今年こそは……!
「一番、センター……町田 揺蘭」
わっ、と斜め前の先輩が両手で顔を覆って泣き出した。
今までVtuberの身体が無かった人……この瞬間、町田先輩は初めて女子野球選手としての一歩を踏み出せたんだ。
「二番、ライト……ミラ・オーロラ」
「〜〜〜! ありがとうございます! 全力で頑張りますっ!!」
その後も発表は続いていく。
「三番、ショート……星乃 メリア
四番、ファースト……神延 紅蓮
五番、サード……椿原 かのん
六番、レフト……火橋 美帆子
七番、セカンド……めうめう
八番、キャッチャー……アイリス・ヴェール
九番、ピッチャー……霧雨 ゆら
以上がスタメンとなる」
ダメだったか……
いやまぁ、正直それは分かっていた。
ゆら先輩を差し置いて私が選ばれるなんて有り得ないし。
大事なのはここからだ。
「続いてベンチメンバーを発表する。日向 火夏、涼宮 冷。お前達はセットで運用する。
主に点差が付いた試合のリリーフで起用するので準備を怠るなよ!」
「はい!」
「心に刻み込みます!」
やった! やったやったやった!!
ベンチだけど、それでも選ばれた!
監督の言葉を信じるなら私とアヤが試合に出るチャンスも十分にある筈だ……!
「次、ネリア・エバーグリーン、天城 水月。
お前達は主に守備固めとしての起用となるが、点差が付けば打席に立つ事もあるだろう。
試合の空気を感じ、一軍レベルの球を体感し、吸収しろ」
「はい! この経験を糧とし、更なる成長をお見せする事をお約束しますっ!」
「この抜擢に、必ずや応えてみせましょう」
「うむ! 続いて……」
水月ちゃんもネリアちゃんと同じく今年の特待生。
俊足で広い守備範囲を誇る期待の1年生だ。
特待生だからって必ずスタメンやベンチ入り出来る訳では無いんだけど……それだけこの2人は期待されてるって事か。
水月ちゃんにも百合営業の誘いは掛けてるけど、中々乗ってくれないんだよなぁ……
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