第15話 鉱山王女、レオノーラ
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あらすじ
無垢な王女と貧民少女のスラム改革〜培った人脈で魔鉱石採掘労働者の職場環境を改善せよ!!〜 - 第15話 鉱山王女、レオノーラ
本文
まず最初に手を上げたのは南方に位置する第一鉱山の経営者、グロース・アッカーソンだった。
結果的に見れば彼は最も傷が浅かったと言える。
グロースの鉱山を買い取ったレオノーラは早速体制改造に着手。
第五鉱山と同じく8時間×3回というサイクルで採掘作業を進めた。
そうなれば困るのは未だに鉱山を手放していない他の3人だ。
何しろレオノーラ式は他鉱山と比べて鉱夫の動員数が3倍。
しかも好待遇となれば益々他の鉱山からは人が居なくなった。
そして人が居なくなると魔物も増え更に採掘は難しくなり……少しでも高く売ろうと我先にと手を上げた。
ゼニスが最後まで渋ったものの、結局はヴェールバルド全ての鉱山はレオノーラの手中に収まったのだった。
なお資金は尽きたがスヴェンが無利子で貸してくれた上、父にも黙っていてくれたので事なきを得た。
「すぅ〜〜〜……!」
「レオノーラ様……」
山場の一つを越えた開放感からか、レオノーラは私室でリアのつむじの匂いを嗅ぎまくっていた。
「ふぅ……落ち着いたわ」
「お役に立てたのなら何よりですが……これでスラムの改革は進むのですか?」
「その第一歩、と言ったところね。鉱山は増えたけど一つ一つに掛かるコストが減った訳では無いから」
「鉱山だけでは満足に動けるだけの資金は生み出せない、と」
「そう。1から全部作り直さないといけないもの。
十分な衣食住。同行魔法使いもメイドに頼りっぱなしじゃなくてバイトを雇えるようにしたいわね。それに女性の雇用も増やしていきたいわ」
「私にはどれ程のお金が必要なのか想像も付きませんが……きっと、とても大変なのでしょうね」
「えぇ。でも、皆のおかげでその足掛かりは出来たわ。だから、あと少しよ」
「はい。私も微力ながらお手伝い致します。何でもお申し付け下さいませ」
「ありがとう。本当に頼もしいわね、リアは」
「そんな……勿体ないお言葉です……」
レオノーラがリアの頭を撫でると、彼女は頬を赤く染めて俯いた。
そんなリアに愛しさと触れたいという欲望が鬩ぎ合いつつ、レオノーラは脇に控えているミルラに声を掛ける。
「ミルラ、例のデータは?」
「こちらに」
「ありがとう」
ミルラが差し出した書類を受け取り、レオノーラは目を通す。
リアも覗き込むが、まだ識字が十分では無い為読み取りに苦労しているようだ。
「リア、ユークレッドという人は知っているかしら?」
「い、いえ、申し訳ございません……」
「謝らないで、リアとは本来関わり合う事の無かった人物なのだから仕方のない事よ。
この人は貿易総監……つまり外国と物の売り買いする部署の偉い人ね」
「という事は……魔鉱石も?」
「えぇ。寧ろ魔鉱石が主役ね。
ヴェールバルドの経済を一手に支える特産品。
魔鉱石の扱い如何で国力が左右されると言っても過言ではないわ」
「それは方々で聞き及んで知識としては知ってはおりますが……それが資金調達と関係があると?」
「そうよ。このユークレッドという人はね、昔から黒い噂が絶えない人なの。
具体的には立場を利用して私腹を肥やしている、という噂ね」
「はぁ……? それを暴く、という事ですか?」
「正しく! 今回鉱山を全て買い取ったのもその為よ。
スラムの人達に正しい労働環境を提供したいと言うのも本当だけど、魔鉱石の産出量を正確に測る為でもあったの」
「それで結果は……」
「ビンゴよ。嬉し悲し、ね。お父様から信頼されてこの任を任されていたのに、という悲しみ。
けれどそのおかげで計画が進む、という喜び。
このユークレッドはね、幼い頃はよく私とお兄様に外国のお話やお土産を持ってきてくれたのよ」
「そう、だったんですか……」
「えぇ。でも悪事は白日の下へ晒さなくてはいけないわ。
魔鉱石は我が国の誇りであり生命線。立場を、誇りを、信頼を裏切ったとあらばお父様は決して許しはしないでしょう。
逆にそれを暴いた私の評価は上がる筈。そうやって信頼を得て……予算を勝ち取るわ」
「それがスラム改革の計画……」
「あれだけ広大で多くの人が住むスラムを作り替えるなんて一つの事業から出る利益では到底不可能よ。
お父様に信頼され、そしてスラム改革の有用性を訴えて国家プロジェクトとして推進する……これが、私が描いた計画よ」
「俺……私では想像すら出来ない壮大な計画です。
私に手伝える事があれば良いのですが……」
「リアの役目は私の身の回りの世話と護衛だもの。政は私の領分よ……でも、そうね……」
「レオノーラ様?」
「うん。実際のところかなり危険な賭けではあるの。
ユークレッドはお父様から信頼されているし、何より長年この世界で生き残ってきた老獪さがある。
お父様のアイデンティティとも言える魔鉱石と富を不正に利用したという決定的な証拠があるとは言え、やっぱり恐怖は拭いきれないわ」
「はい。せめてその不安を軽減出来るよう、精一杯……」
「だ、だからねっ!」
「え、あ、はい……?」
つい大声を出してしまった……とレオノーラは少し顔を赤らめて咳払いをする。
だが自分はこれからもっと恥ずかしい事を言うのだから……と軽く頬を叩いてリアに向き直る。
「リア。もし上手くいって、予算を組んで貰えたら心身共に余裕が生まれると思うの。お互いに」
「そう、ですね……?」
「だからね? その、そうなったら……もう一歩、踏み込んだ関係に、なりたいな……って……」
「それは……」
「ご、ごめんなさい! スラムの人達の人生が掛かってる計画にそんな約束をしては駄目よね! 今のは忘れて……」
「分かりました」
「……え? あ、あれ?」
「元より私とレオノーラ様は妻同士……愛し合う事に何の障害がありましょう?
一段落着いた、という状況なのであればお互いの温もりを感じる時間も大切かと思います」
「リア……!」
「ですが……」
「え、な、なに……?」
不意に目を伏せたリアに、レオノーラは不安な表情を見せる。
レオノーラは顔を覗き込もうと近寄り……顎を掴まれて上を向かされた。
「手加減出来なかったらごめんな? レオノーラ」
「きゅふっ⁉︎♡」
唇が触れそうな距離で囁かれて、レオノーラはへなへなと腰砕けになったのだった。
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