第1話 天王寺 愛花の表紙画像

第1話 天王寺 愛花

小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品

📅 公開日: 2025/12/30 📚 シリーズ: 五色の音色に囚われて 📝 2,704文字 🤖 AI創作支援作品 ✅ 全年齢

あらすじ

天王寺愛花は学校では誰もが認める真面目な学級委員長。 しかし休日になると派手な服装で街に繰り出し、食べ歩きや路上ダンスなどの「不真面目行為」に没頭していた。 それは“優等生でつまらない自分”を崩したいという密かな願望からだった。 ある日、愛花は街で校内の人気者であるガールズバンド『五行輪舞』のヴォーカル・火口 恋と出会う。 裕福な家庭に育った恋は“ロックに大切な反骨精神のない”自分に悩んでおり、愛花が休日にしている不真面目行為に興味を抱く。 そして恋は、愛花に「不真面目を教えてほしい」と持ちかける。 こうして愛花と五行輪舞のメンバーたちの交流が始まるが、個性的な彼女たちはそれぞれに秘密や悩みを抱えていた。 幼馴染である恋に過保護ともいえる程に執着するベースの金原 涼音 子供っぽい自分にコンプレックスを抱き、大人ぶりたいギターの土屋 玲於奈 “対等”な友達を恐れ、他者を下僕として取り巻きにするキーボードの水城 海里 愛する事を諦め、可愛い物を“愛でる”道を選んだドラムの木ノ葉 芽衣 愛花は生来の放っておけない精神で彼女たちの葛藤や闇に触れ、心に寄り添い……いつしか愛花は『ただの真面目な委員長』から『彼女たちの心を揺さぶる存在』へと変わり始める。 そして五行輪舞のメンバーは愛花との交流を通じて自分たちの殻を破り、新たな一歩を踏み出していく。 これは、不器用でまっすぐな少女と、悩みを抱えた少女たちが織りなす、友情と青春の物語。 音楽と心が響き合う中で、彼女たちは何を見つけるのか―― この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません。 また作中において軽度の残酷描写、暴力描写、性描写が描かれるシーンがございます。 該当するシーンが描かれているページには『※』を付けておりますのでご了承ください。

本文

「みんなー! 盛り上がってるかーっ!?」

「「「いえぇええええええいっ!!」」

体育館の壇上。

そこに立つのは5人の女子生徒。

その中心に立つ女が威勢よく声を上げると、それに呼応するように体育館が揺れるような歓声が響く。

なお今日は文化祭だとか新入生への部活紹介だとか、そういう類の日では全く無い。

ただ先生方にお願いし、しっかり許可を取って放課後にライブをしているだけだ。

「イカしたメンバー紹介するよー!

まずはこのボク! ヴォーカル、火口 恋(ひぐち れん)!」

火口が自分を親指で指すと、一層の歓声が響いた。

この火口という女、やたらフレンドリーで男女問わず友人が多い。

またロックバンドのリーダーの癖に妙に真面目だ。

授業は普通に受ける(成績はそこそこだが)。

制服も着崩さないし、メイクやピアスもしていない。強いて言えばスカートが短いぐらいか。

教師からの覚えも良く、だからこそ今日のようなライブも許されたんだろう。

「ギター、土屋 玲於奈(つちや れおな)!」

小柄な少女が身体を後ろに倒しながらギターを掻き鳴らす。

小さくて可愛らしい見た目と豪快なパフォーマンスで人気の子だ。

時折ハメを外し過ぎる時はあるが基本は良い子。

「ベース、金原 涼音(かねはら すずね)!」

ベースを肩から下げ、いかにもクールな金原は軽く手を振る。

あまり愛想があるタイプじゃないが、そこが良いと言う奴も居る。

コイツはバチバチにピアスしているので警戒対象。

「キーボード、水城 海里(みずき かいり)!」

水城はキーボードを淡々と弾き、しかしもっと盛り上げろと観客を煽る。

見た目は清楚。艶やかな黒髪で、制服のスカートだって校則通り膝下。

しかし彼女はそんな見た目に反して口が悪く、喧嘩っ早い。

その美貌と腕っぷしで取り巻きも多く、ぶっち切りでこのバンドの問題児だ。

「ドラム、木ノ葉 芽衣(このは めい)!」

ドラムスティックでリズムを刻む木ノ葉は、長身でおっとりとしたお姉さん味のある女だ。

ただ、必要とあらばその腕力で水城を押さえ込む事もあるそうな。

金髪碧眼なのはハーフだかららしい。

「ボク達〜……五行輪舞(ごぎょうりんぶ)です! よろしくぅ!!」

火口が満面の笑みを浮かべると、それに呼応するように観客から歓声が湧きあがる。

「今日はボク達のライブに来てくれてありがとーっ!

それじゃあ早速1曲目行くよーっ! 最初は……水恋火(すいれんか)!」

火口の合図で曲が始まる。

曲名やバンド名に反してアップテンポの激しい曲だ。

「眩しいな……」

「うん? 委員長何か言った?」

「いえ、大人気ですね、と思いまして」

「そりゃねー、顔面レベル高いしキラキラしてるし。ウチらとは住む世界が違うって感じ」

「そう、ですね……」

確かにそう思う。

壇上で力一杯に声を張り上げ、楽器をかき鳴らす姿は自分のような人間とは別次元の存在にしか見えない。

クラスにおいては、ただ真面目なだけで学級委員長に選ばれた自分ではなくあの火口が間違いなく話題の中心だった。

キツイ三つ編みに分厚い眼鏡。

成績は良いけど、それ以外に目立つ物は無い。

それがこの私、蒼ヶ谷高等学校2年1組の学級委員長、天王寺 愛花(てんのうじ あいか)だ。

体育館に集まった観客を見据える火口の熱視線が肌を刺す中、真面目委員長の私は知らず知らずのうちに拳を握り締め、掌に汗の湿り気を感じる。

分厚い眼鏡越しの渇望が、渋谷の夜を予感させた。

◇◇◇◇◇

「図書館に行ってきます」

「あまり遅くなりすぎないようにねー」

土曜日。

母親の言葉を背に受けて、向かう先は駅。

電車に乗って向かうのは図書館ではなく……若者が集う街、渋谷。

駅のホームのトイレに籠り、三つ編みを解き、眼鏡を外し、服を脱ぐ。

代わりに身に纏うのは完全に腹部が露出した黒のオフショルダーにデニムのショートパンツ。

靴は動き易さを重視したスニーカー。

メイクを施し、髪はエクステを付けてメッシュに。

コンタクトを付けて鏡代わりにスマホを覗く。

「……うん、完璧」

そこに映っていたのは、いかにもチャラそうな女。

どこからどう見ても、蒼ヶ谷高等学校の学級委員長、天王寺 愛花には見えない。

普段は三つ編みに分厚い眼鏡で真面目な委員長をやって、休日はこうして渋谷の街に紛れ込む。

……別にこれが本当の私だとか、これが裏の顔だとか。

そんな大層な事を言うつもりは無い。

もっと言えば大それた事をするつもりも無い。

飲酒も喫煙もしない。万引きなんて以ての外。

私は人を困らせたい訳じゃない。

ただ、優等生な自分を崩したいだけ。

だから、出来るのはこうした派手な格好をして渋谷の街を練り歩いたり。

お行儀悪くホットドッグを食べ歩いたり。

ゲームセンターで意味も無く散財したり。

誘われるつもり無いのにナンパ男と話したり。

……ライブハウスで思いっ切りはしゃいだり。

その程度なのだ、私に出来る事なんて。

人はそれをどう思うのだろう。

一線を越えないお利口さん?

悪ぶりたいだけの半端者?

……考えても意味ないか。

私の行動を評価されるという事は、今の私が天王寺 愛花だと知られているという事。

そうなれば、真面目なだけが取り柄の私は終わるのだから。

「……ん?」

酒と汗が混ざった匂い。

汗で湿った服が肌に張り付く。

そんな夜の街を適当にブラついていると聞き覚えのあるメロディが耳に入った。

私の足は自然とその方向に進む。

「やってるやってる」

街の一角に設置されたバスケコート。

そこには複数人の黒人男性が古き良きラジカセから流れる曲に合わせ、ダンスを踊っている。

私は彼等に軽く手を上げてその輪に混ざった。

「やぁ、久しぶりだね?」

「あー、うん。巡り合わせが悪くてね」

「ハハッ、なら今日は好きなだけ踊って行くと良い」

「ありがと」

彼等とはガッツリとした知り合いって訳じゃない。

自己紹介すらしてないからお互いの名前も知らない。

だけどある日、ヤケクソでダンスに乱入した私を。

見るからにノロノロとしたへっぽこダンスを踊る私を、彼等は笑って受け入れてくれた。

別に私が特別なんじゃない。

彼等は気の良い人達で、悪意なく近付いて来る人なら誰であろうと受け入れる人達なんだ。

彼等の好意に甘える形ではあるけれど、素性を明かさずに安全に非日常を体験出来る絶好の機会だ。

「うおぉぉぉぉぉぉぉっ⁉︎ イッツ、クール! スーパーグレートッ!」

「な、なに……⁉︎」

いきなり発せられた適当極まりないカタカナ英語に驚いて振り返ると、そこには私の良く知る女。

五行輪舞のヴォーカル、火口 恋が目をキラキラと輝かせていた。

「ヘイヘーイ! ベリーベリースーパーソング歌っちゃうYO!」

そしてあろう事か、この輪に乱入してきた。

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作者について

生獣(ナマ・ケモノ)

生獣(ナマ・ケモノ)

ほのぼのな百合も過激な百合も好き。

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