第4話 初めての不真面目行為
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あらすじ
五色の音色に囚われて - 第4話 初めての不真面目行為
本文
「愛花さぁ」
「なんだよ」
「流石にカラオケは行った事あるよ」
「うるさい。私にとっては不真面目行為なんだよ。
文句言うならもう付き合ってやんねーぞ」
「あー、ごめんごめん! 拗ねないでって」
「拗ねてねー! ほら、何歌うんだよ!」
「えっとねー、じゃあ……」
恋が選んだのはなんと演歌。
かと思えばバラードとかアニソンまで歌う。しかも上手い。
「やっぱ歌上手いなお前」
「そりゃバンドのヴォーカル張ってるからねー」
「……なぁ、なんでロックなんだ? 反骨精神が分からないから満足のいくロックが歌えない、作詞出来ないって言ってたけどさ。
恋なら他のジャンルでも上手いし、それなら良い歌詞書けるんじゃねーの?」
「だってカッコイイじゃん?」
「は?」
「ロックってさ、こう……ジャギャーン! って感じでさ。
上手く言えないけど……なんか良いじゃん? だから好き」
「……そっか」
苦手な事は無理せず、とか。
成功率の高い方を、とか。
そんなんじゃなくて、好きな事を続けたい、上達させたいから苦手に向き合う。
それが、私みたいな凡人と違う所なんだろうな。
「あ、ボクだけ歌っちゃってた。ほらほら、愛花も歌って」
「やだ」
「えー、なんで⁉︎」
お前の歌を聞いた直後に歌える訳無いだろ……
そう思っても腕を掴まれて立たされてデュエットを強要される。
「良いよ良いよー! 良いシャウトじゃん!」
「うるさっ」
でも、まぁ、うん。
正直嫌では無い。
ダンスの時と言い、コイツには一緒に居る奴を楽しませる能力でもあるんだろうか。
っていうかまた肩抱き寄せて……ボディタッチ多いなコイツ。
◇◇◇◇◇
「楽しかったぁ!」
「はいはい。ようござんしたね」
「愛花は楽しくなかった?」
「別にそうは言ってねーだろ」
「にへへ」
夕焼けに照らされる恋は、改めて見ても綺麗な横顔だ。
モデルも顔負け……なんてもんじゃ無い。
やっぱ美人だよなコイツ。
そんなヤツが不真面目を教えて欲しいって言ってきて、二人っきりでカラオケする事になるなんてな。
「なんかお礼しないとね」
「礼なんていいって」
「あ、じゃあさ! またデートしようよ!」
「デートが礼になるなんて滅茶苦茶自己肯定感高けーな」
「えー? 友達ならお出かけとか普通にするじゃん」
「そっちの方かよ」
リア充は友達同士で遊ぶ事をデートと呼称する事もあるみたいだが……そのパターンか。
「別に友達じゃねーけど……まぁ、不真面目を教えてやるって約束したしな。また次は違う事教えてやるよ」
「やった! 次は何時?」
「土曜で良いだろ。歩き食いするから昼飯で腹一杯にはしてくんなよ」
「りょーかいっ!」
ビシッ! と敬礼する恋。本当に分かってんのか?
二人並んで駅に歩いて、私は着替えて、電車に乗って。
途中までまた一緒に歩いて、分かれ道で解散。
スタコラ歩く後ろ姿を眺めて、その時になってようやく恋は私の歩くスピードに合わせてくれていた事に気が付いた。
◇◇◇◇◇
「あいかぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
「どうかしましたか、土屋さん?」
翌日。
学校で朝のホームルームを待ってる間。
五行輪舞のちびっ子ギタリスト、土屋 玲於奈が半泣きで泣きついてきた。
今の私は品行方正な委員長だから見た目も口調も真面目モードだ。
「1年の範囲教えて〜!」
「習ったでしょう?」
「もう覚えてないもん!」
「そもそも何故今更1年の範囲を?」
「実は……後輩に勉強教えてあげるって約束しちゃってぇ……」
モジモジしながら弁明する土屋。
顔が良くて、小柄で、正に美少女と言って差し支えないビジュアルだ。
それでいてライブでは身体全体を使って感情を表現する。
だけど舞台を降りればガキンチョで、見栄っ張りで、時折餌付けされる愛されキャラ。
後輩からも妹キャラとして扱われている恐るべき存在だ。
恐らく勉強を教えてほしいという後輩も、単に土屋と一緒に居たいだけなんだろう。
意地を張ったりハメを外しすぎたりする事があって、その度に私を頼ってくる。
それでいて金原や水城と違ってちゃんとに反省するから個人的に好感度は(比較的)高い。
「それは良い心懸けですね。どの範囲が分からないんです?」
「ぜ、全部……」
「……それはそれは」
それは流石にやりたくねーなぁ……
「バンドメンバーの方に教えて貰う事は難しいですか?」
「だってすずねはイジワルだし、かいりは口悪いし、めいは子供扱いするし……」
「火口さんは?」
「れんは馬鹿だし」
「なるほど……」
恋も言うほど成績は悪くないが土屋とどっこいどっこいだ。
オマケに感覚派だから説明も分かり難いし、確かに教師には不向きだな。
「分かりました。放課後で良ければお付き合いします」
「ホントに!? ありがとうあいか! 今日はバンド練休みだから、たくさん教えてね!」
「今の勉強もきちんとするんですよ?」
「わ、分かってるもん……!」
不安だ。
それにしても……イジワルな金原や口の悪い水城が嫌と言うのは分かる。
しかし木ノ葉まで嫌となると……やっぱり子供扱いされるのがよっぽど嫌なんだろう。
普段意地を張ったりハメを外すのも、大半は良い所を見せようとした時だ。
今回も後輩に頼られたと思って即答したに違いない。
それでもお菓子を餌付けされる事を受け入れているのはソレはソレ、という事なのだろうか。
せめて私だけは過度に子供扱いせず、1人のレディとして扱ってやろう。
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