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第百四十話:リヒター総帥の熱血指導

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あらすじ

🏆【交響詩】竜の姫と絆のユニゾン ~裏切られた天才軍師は愛の和音で成り上がる - 第百四十話:リヒター総帥の熱血指導

本文

演習グラウンドには、精鋭部隊が担架で運ばれていった後の静寂(と破壊の爪痕)が残っていた。

「王立・竜の子学園」の生徒たちは、暴れすぎて少し疲れたのか、あるいはヒカルに怒られるのを察したのか、神妙な顔つきで整列している。

「……ふん。力はある。だが、それだけだ」

 沈黙を破ったのは、辺境連合軍総帥リヒターだった。

 歴戦の武人である彼は、マントを脱ぎ捨てると、グラウンドの脇に置かれていた巨大な金属製のケースを開いた。

「ジオ殿。例の『試作品』、借りるぞ」

「おうよ。データ収集も兼ねてだ、派手にやってくれ」

 ジオ・アイアンハンドがニヤリと笑って葉巻を吹かす。

 リヒターがケースから取り出したのは、無骨な鋼鉄と魔導回路が複雑に絡み合った、全身を覆う追加装甲――『対竜用魔導外骨格ドラゴンスレイヤー・フレーム・プロトタイプ』だった。

 ガシャン、ガシャン!

 重厚な装着音と共に、リヒターの全身が鋼の筋肉で覆われていく。背部の魔力炉が唸りを上げ、彼の身体能力を物理的・魔術的に強制強化する。

「ヒカル王よ。許可をいただきたい。この若き獅子たちに、『戦い』とは何かを教える機会を」

 ヒカルは、リヒターの真剣な眼差しと、その物々しい装備を見て、静かに頷いた。

「承知した。……手加減は無用だ。頼む、リヒター」

 リヒターは子供たちの前に立ち、鋼鉄の腕を組んで仁王立ちした。

「聞け、若造ども! 貴様らの力は確かに強大だ。素のBPIならば、私など足元にも及ばん」

 彼の声は、魔力拡声機能によってビリビリと空気を震わせた。

「だが! 戦場では『道具』と『知恵』が力を凌駕する! そして何より、貴様らには『連携』も『規律』もない! ただ力を振り回しているだけだ! そんなもので、王の背中を守れると思っているのか!!」

 その一喝に、ライオスがむっとした顔で反論する。

「なんだよ、おっさん! なんかズルそうな鎧着やがって! 俺たちは勝ったぞ! 強いほうが偉いんじゃないのかよ!」

「愚か者め! 戦場では勝った者が強いのではない、生き残った者が強いのだ! ……来い! 私がそれを体に叩き込んでやる!」

 リヒターが、外骨格に連結された巨大な演習用ブレードを構えた。

「へへっ、後悔すんなよ! その鎧ごと溶かしてやる!」

 ライオスが炎を纏って突っ込む。

 BPI 150超えの加速。常人なら目で追うことすら不可能だ。

 だが、リヒターのヘルメットには、ジオとイリスが共同開発した「予測演算バイザー」が搭載されていた。

「直線的すぎる!」

 リヒターは最小限の動きで身体を逸らすと同時に、外骨格のブースターを噴射。鋼鉄の脚による強烈な足払いをかけた。

「なっ!?」

 ドゴォン!!

 勢い余ったライオスが地面に転がり、さらにリヒターの篭手による追撃(寸止め)を受ける。

「力に頼りすぎて動きが大味だ! 次の者!」

「なら、広範囲魔法で!」

 シズクが氷の礫を放つ。

 リヒターは外骨格の肩部から「対魔力障壁アンチ・マジック・フィールド」を展開。氷の礫を蒸発させながら、ブースターによる高速機動でシズクの懐に飛び込んだ。

「予測が甘い! 敵が魔法対策をしていないとでも思ったか!」

 リヒターはシズクの目の前まで肉薄し、ブレードの腹で軽く額を小突いた。

「くっ……!」

「ボクたちが翻弄してやる!」

 リオとリベルが風に乗って空から襲いかかるが、リヒターは背部のウェポンラックから「捕縛用粘着弾」を射出。

「空を飛ぶということは、隠れる場所がないということだ!」

「うわぁっ! ベタベタするー!」

 次々とあしらわれていく子供たち。

 ドワーフの技術とエルフの理論、そしてリヒターの歴戦の技が融合した「大人の本気」の前に、子供たちの個の力は封じ込められた。

「どうした! バラバラに攻めてくるだけか! それでは烏合の衆だ!」

 リヒターの檄が飛ぶ。

 その時、混乱する子供たちの中に、一人の少年が声を上げた。

「全員、下がれッ!!」

 生徒会長、シリウスだ。

 彼は唇を噛み締め、悔しさと、そして冷静さを瞳に宿して前に出た。

「……総帥の言う通りだ。僕たちは、力に溺れていた」

 シリウスは振り返り、弟妹たちに指示を飛ばす。

「ライオス! 突っ込むな! 右翼に展開して熱波でセンサーを攪乱しろ! シズクは左翼から地面を凍らせて機動力を奪え! ソイル、正面に壁を作って総帥の視界を塞げ! リオ、リベルは上空で待機、僕の合図で粘着弾を風で弾き返せ!」

「えっ、でも……」

「いいからやれ! 僕の指揮に従え!」

 普段は温厚なシリウスの、鬼気迫る命令。

 子供たちは反射的に従った。

「ライオス、放て!」

「うおおおっ!」

 ライオスの熱波がセンサーを焼き、リヒターの視界にノイズが走る。

「むっ、目眩出か!?」

 回避しようと左へ動くが、そこは既にシズクによって凍結されていた。外骨格のグリップが効かない。

 体勢を崩したリヒターの目の前に、ソイルの土壁が隆起する。

 視界が塞がれる瞬間。

「今だ! 風よ!」

 上空からの合図で、リオとリベルが突風を巻き起こす。土壁が砕け、砂煙がリヒターを包み込む。

「……ここだッ!!」

 シリウスが、煙の中へと突っ込んだ。

 炎と水を螺旋状に纏わせた剣閃が、リヒターの胸部装甲と激突する。

 ガキィィィン!!

 重い金属音が響き渡る。

 シリウスの一撃は防がれたが、リヒターの鋼鉄の足は大きく地面を削り、後退していた。

「……見事だ」

 砂煙が晴れると、リヒターはブレードを収め、ヘルメットのバイザーを上げた。その顔には、心からの称賛の笑みが浮かんでいた。

「個々の特性を理解し、瞬時に役割を与え、装備の弱点を突き、私の退路を断った。……これぞ、用兵の妙」

 リヒターは、シリウスの肩を外骨格の手で(力加減をして)掴んだ。

「うおおおおん! 素晴らしい! これぞ新時代の戦いだ! 力だけでなく、知恵と絆で戦う……! ヒカル王の理念が、確かにここに息づいている!」

 リヒターは感極まってシリウスを抱きしめた(金属なので痛い)。

「シリウス君! いや、シリウス総司令官! 君には指揮官の才能がある! どうだ、将来は人類軍の、いや、連合軍の総帥にならないか!?」

「え、えええ……? く、苦しいです、総帥……硬いです……」

 シリウスは白目を剥きかける。

「ふふん、当然だろ! 俺たちの兄貴んだからな!」

 ライオスが鼻をこする。

「……まあ、兄さんの指示なら、従わざるを得ませんね」

 シズクも眼鏡を直しながら満更でもない様子だ。

 ジオが満足げに葉巻を吹かした。

「へっ。俺の最高傑作プロトタイプに傷をつけるたぁ、大したガキどもだ。データも取れたし、改良のしがいがあるぜ」

 ヒカルは、その様子を見て安堵の息を吐いた。

「……やるじゃないか、シリウス」

「王よ!」

 リヒターがシリウスを抱えたまま、ヒカルに向かって叫んだ。

「この少年は、国の宝です! 私が責任を持って、武人の魂と、この『対竜用外骨格』の操縦法を叩き込みます! 週末は私の道場へ通わせてください!」

「あはは……。シリウスが良ければな」

 ヒカルが答えると、シリウスは助けを求めるような目でこちらを見たが、最後は覚悟を決めたように敬礼した。

「……光栄です。僕は、王の臣下として……最強の盾になるために、学びます!!」

「うむ! 良い返事だ!」

 こうして、シリウスの「苦労人」としてのキャリアに、「熱血総帥の直弟子」および「パワードスーツのテストパイロット」という新たな(そして胃の痛い)肩書きが加わったのだった。

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ざつ

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