第百五十五話:砂漠の決闘・後編
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あらすじ
🏆【交響詩】竜の姫と絆のユニゾン ~裏切られた天才軍師は愛の和音で成り上がる - 第百五十五話:砂漠の決闘・後編
本文
砂漠の決闘は、凄まじい衝撃音と土煙の中で、三時間に及ぶ激闘となっていた。 不動の防衛将ガイアと獣王ヴォルグの肉弾戦は、互いの拳が岩のように固く、まさに一歩も引かない意地のぶつかり合いだった。
「グアアアアッ! 竜よ! 貴様は私を殺さぬという『優しさの枷』に、いつまで耐えられる! その枷こそが、貴様の敗因となるぞ!」
ヴォルグは、ガイアの動きを冷静に分析し、その攻撃が常に「殺し」のベクトルを避けていることを見抜いていた。彼はその優しさを嘲笑い、肉体と精神の両面でガイアを追い詰める。
「吠えるな、獣王よ! 王の拳は、貴様を殺すためにあるのではない! 守るための強さこそが、真の力だと証明するためにある!」
ガイアの全身の竜鱗は砕け、血を流していた。BPI 600の強大な力を持つ彼だが、ヴォルグの「命を懸けた武人の誇り」が、その力を封じ込めていた。
戦闘能力数値Battle Power Indexは、あくまでも参考値である。もちろん、その数字の大小は、戦局に大きな影響を与えるが、経験や技能、そして制限のある決闘という場では、その数値の差は単純なものではなくなっていた。
その時、ヴォルグがマグマのような熱量を込めた渾身の一撃を、ガイアの頭部目掛けて放った。
「終わりにしろ、竜よ! 貴様の優しさに付き合う暇はない!」
だが、ガイアは、その一撃を避けなかった。全身の魔力を右腕に集中させ、ヴォルグの拳を紙一重で受け流し、逆に、自身の右拳をヴォルグの脇腹に叩き込んだ。
ドォン!!
「う、ぐぅ……」
ヴォルグの巨体が、初めて大きく吹き飛ばされ、砂漠の岩盤に激突した。ガイアの拳は、ヴォルグの腹部を砕くことはしなかったが、戦闘不能に追い込むほどの衝撃を与えていた。
「グオオオオオッ!!」
「ヴォルグ様がやられたぞ!」
「こやつ、生きては帰さぬぞ……!」
周囲で戦況を見守っていた獣人族の戦士たちが激昂し、槍を構えて一斉に参戦しようと飛び出した。
「止まれッ!!」
しかし、ヴォルグは膝をついたまま、血を吐きながらも、武人の誇りを込めた咆哮で戦士たちを一喝した。
「引け! 貴様ら! これは武人の決闘だ! 敗者は私だ! 貴様らの血で、私の名誉を汚すな!」
ヴォルグの言葉に、獣人族の戦士たちはしぶしぶと槍を下ろした。ガイアは、満身創痍の状態で、その傍らに剣を地面に突き立てた。
「貴様の言う『力』ならば、私の勝ちだ。だが、私は貴様を殺さない。共に守る仲間が欲しいだけだ。我らの王の優しさは、貴様の命を賭けた誇りを、死ではなく生で受け止める。それが、王の武人としての仁義だ」
ガイアの揺るぎない覚悟と、彼がヒカル王の理念を否定せずに示した「愛の拳」は、ヴォルグの武人の魂を深く揺さぶった。
「……フン。ヒカル王の代理。貴様のタフさと仁義、このヴォルグ、認めよう」
ヴォルグは、立ち上がると、深々と頭を下げた。
「我が赤獅子族は、貴様らの統一王国と敵対しない。ただし、同盟ではない。不可侵条約を結ぶ。貴様らが弱さを見せた時、このヴォルグが牙を向くことを忘れるな」
ガイアは、ヴォルグの言葉に静かに頷き、その場で不可侵条約を締結した。外交は、武力という名の仁義によって、初めての突破口を開いたのだ。
◇◆◇◆◇
「さあ、昨日の敵は、今日の味方、ということですわ!」
「皆様、ご飯の時間ですよ~」
ガイアとヴォルグの決闘が終わり、テラが立ち上げた「胃袋攻略戦」の成果が表れ始めていた。
テラの献身的な愛による炊き出しは、獣人族の女性たちと子供たちに大好評だった。ソイルが手伝うテラの愛情料理は、砂漠の熱風で乾燥した獣人族の胃袋と心に、温かい安寧をもたらしていた。
「このスープは美味い! 栄養価が高く、腹持ちがいい! 竜族の食事は、軟弱かと思ったが……」
獣人族の女性たちは、テラの料理を前に、驚きの声を上げる。
「でしょう? 食べることは、生きることの基本です。戦いも大切ですが、食事も大切ですよ」
テラは、母性的な愛を込めた微笑みで、獣人族の女性たちに優しく語りかける。
【第156話へ続く】