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第百八十六話:光の天使 vs 「波状攻撃・闇と水の真実の鏡」

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あらすじ

🏆【交響詩】竜の姫と絆のユニゾン ~裏切られた天才軍師は愛の和音で成り上がる - 第百八十六話:光の天使 vs 「波状攻撃・闇と水の真実の鏡」

本文

次の回廊は、物理的な境界を失ったかのような、無限の光に満ちていた。

 その光は熱を持たず、ただ圧倒的な「白」で視界を塗りつぶし、思考の輪郭さえも溶かしていく。

『可哀想な子供たち……。争いはもう終わり。私の光の中で、永遠に眠りなさい』

 光の中心に佇むのは、純白のドレスを纏った光の熾天使『セラフィム・ルーナSeraphim Luna』。

 慈愛に満ちた聖女ルーナと瓜二つの姿で、彼女は世界そのものを包み込むように両手を広げた。

 その瞬間、ヒカルの脳裏に絶望的な光景が流れ込んでくる。

 それは、ここだけではない。地上のあらゆる場所で、人々が武器を捨て、虚ろな目で空を見上げている姿だった。

 ◇◆◇◆◇

 地上では、ガイア率いる人類混成軍が、神兵の猛攻を前に立ち尽くしていた。

「……なぜ戦うのだ? もういいではないか。楽になろう……」

 屈強な獣人族の戦士が、斧を取り落とす。

「計算……不能。戦う意義が……見出せません……」

 エルフの魔術師たちが、詠唱を止めて膝をつく。

 ドワーフの砲兵たちも、大砲の轟音に耳を塞ぎ、震えている。

 天狗族も風を失い、地上へと降りていた。

「これが……神の救済……? いや、これは『思考の放棄』だ!」

 必死に抵抗する人類軍の指揮官たちの声も、光にかき消されそうになる。

『全人類、全種族の精神波長に強制介入を確認。これは洗脳ではないぞ。「戦意」という概念そのものの削除だ』

 地上側をみているカインの分身から通信が、ノイズ混じりに響く。その声には、珍しく焦りが滲んでいた。

「ヒカル様……! 私の光が、世界を……!」

 ルーナが膝をつく。自分の姿をした天使が、世界中の心を折ろうとしている現実に、彼女の心が砕けそうになっていた。

 ◇◆◇◆◇

 第一波前の覚醒:愛のフィードバック

 その時、ヒカルの心に、強く温かい意志が流れ込んできた。

『ヒカル様! 惑わされてはいけません! これは偽りの安らぎです!』

 リリアの声だ。

『王よ! 私たちは諦めていません! 地上の灯火は、まだ消えていません!』

 レオーネの凛とした声が続く。

「……聞こえるか、ルーナ。地上のみんなの声が」

 ヒカルはルーナの手を取り、立たせた。

「リリアが、レオーネが、ガイアたちが必死に抗っている。お前の光は、あんな冷たいものじゃないはずだ!」

「……はい! そうですわ。私の光は、人々の心を照らし、未来へ導くためのもの!」

 ルーナの瞳に、再び強い意志の光が宿る。

「みんな! 目を覚ませ! あの光は偽物だ!」

 ヒカルの叫びが、凍りついた空気を震わせる。

「……そうね。あんな安っぽい救済に、私の愛を上書きされてたまるもんですか!」

 レヴィアが炎を燃え上がらせる。

「論理的に考えて、思考停止は死と同義。私は生きることを選びます!」

 アクアが眼鏡を光らせる。

「行くぞ! 偽りの神を、俺たちの意志で否定する!」

 ◇◆◇◆◇

 第1波:暗黒吸収ダーク・アブソーブ(ユニゾン)

「光を遮断する! ヴァルキリア! 闇の幕を!」

 ヒカルが命じる。

 ユニゾン参加メンバーは、ヴァルキリア(闇)、ミスティ(闇)、テラ(土)、ソイル(土)だ。

 ヴァルキリアが前に出る。

「フン。眩しすぎて目障りだ。……光あるところに、影は落ちる。私の闇は、貴様の光ごときには染まらない」

 ミスティも静かに影を広げる。

「……おやすみ、偽物の光」

 テラとソイルが、闇の定着を助けるために、光を吸収する黒い土壁を隆起させる。

「大地よ、光を飲み込め! わらわの愛は、何物にも染まらぬ黒き土!」

 ヴァルキリアのティンパニ(闇)が、重苦しいリズムを刻む。そこにテラのコントラバス(土)が加わり、光の高周波(ヒステリックな旋律)を相殺するような、低周波の振動(アンチ・ノイズ)を生み出す。

「4元ユニゾン――『暗黒吸収ダーク・アブソーブ』!!」

 漆黒のドームが展開され、セラフィム・ルーナの光を飲み込む。

 世界を覆っていた「白」が、一時的に「黒」に塗りつぶされ、人々の目に理性の光が戻る。

 だが、光は闇の隙間から漏れ出し、精神への干渉を止めない。

『闇もまた、私の光の一部……。全てを包み込みましょう』

 ◇◆◇◆◇

 第2波:信仰の盾と物理反射(連携技)

「闇だけでは防ぎきれません! もっと強い『意志』が必要です!」

 シルヴィアが叫ぶ。

「シルヴィア、クラリス! 祈りを! 偽りの光を弾き返す、人の心の強さを見せろ!」

 ヒカルの言葉に、二人の女性が祈りを捧げる。

 連携技参加メンバー: シルヴィア(信仰)、クラリス(愛)、ユリウス(知恵/鏡面シールド)。

「王よ! 私たちの愛は、洗脳などされません!」

 クラリスの透き通る声と、シルヴィアの祝詞が重なる。

「光よ、真実を照らせ! 偽りの救済を退けよ!」

 その祈りは、物理的な光となって兵士たちの正気を取り戻させる。

「はっ……! 俺は一体……!」

 地上の兵士たちが我に返り、再び武器を握る。

「僕が光の屈折率を計算する! 鏡面シールド、展開!」

 ユリウスが杖を振るい、光を反射する多面体の結界を構築する。

「その光は偽物です! 真実の光は、人の心を縛らない!」

 キンッ! キンッ!

 セラフィム・ルーナの光線が、鏡面シールドに弾かれ、あちこちに散乱する。

 ◇◆◇◆◇

 第3波:真実の鏡ミラー・オブ・トゥルース(ユニゾン)

「今です! 跳ね返された光を、逆利用します!」

 アクアが勝機を見出す。

「ヴァルキリア! 貴女の闇を鏡の裏側に! シズク、マリン! 水鏡を極限まで研ぎ澄ませて! そして……アルテミス!」

 アクアが叫ぶ。

 アルテミスが震えている。自分の母と同じ顔をした天使を攻撃することに、恐怖を感じていたのだ。

「ママ……」

「アルテミス」

 ルーナが娘の手を握る。

「あれは私ではありません。あれは、悲しみが生んだ幻影。……貴女の光で、本当の救済を教えてあげて」

「……うん。わかった!」

 アルテミスが顔を上げる。その瞳に、迷いのない光が宿る。

 ヴァルキリア(闇)、ミスティ(闇)、アクア(水)、シズク(水)、マリン(水)、ルーナ(光)、アルテミス(光)がユニゾンに参加する。

 ヴァルキリアとミスティの闇が、空間に巨大な「黒い板」を作り出す。

 その表面を、アクア、シズク、マリンの水流が覆い、完全な平面――「鏡」へと変貌させる。

 水の流麗な旋律(弦楽器)が、闇の静寂(休符)の上で、歪みのない鏡面世界を描き出す。

 そこに、ルーナとアルテミスのホルン(光)が、解決の和音(ドミナント・モーション)を響かせる。それは、偽りの安らぎを否定し、真実を突きつけるファンファーレ。

「5元ユニゾン――『真実の鏡ミラー・オブ・トゥルース』!!」

 巨大な闇の水鏡が出現する。

 セラフィム・ルーナの放った精神汚染の光が、鏡に吸い込まれ、増幅されて跳ね返った。

 だが、跳ね返ったのは「汚染の光」ではない。鏡の中で「真実の光」へと変換された、浄化の奔流だ。

『な……!? 私の光が……私を……!? あたたかい……?』

 自らの放った「思考停止の光」ではなく、愛に満ちた「真実の光」を浴びた天使は、その機能に矛盾(パラドックス)を生じさせた。

「救済」をプログラムされた存在が、自らを「救済(停止)」させてしまったのだ。

 光の中で、天使の表情が初めて和らいだように見えた。

「……パパ」

 アルテミスが、光の中で崩れゆく天使を見つめていた。

「あのお姉ちゃん、泣いてるみたい」

「……ああ。あれは、誰も救えなかった悲しみの形かもしれないな」

 ヒカルは、消えゆく光に祈りを捧げた。

「さあ、次が最後だ」

 回廊の最奥。

 そこには、全てを拒絶するような、深淵の闇が口を開けて待っていた。

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ざつ

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