第67話 新たな出会いと懐かしい気持ち(終)
小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品
あらすじ
ガールズ・バント・フライ 〜打ち上げてんじゃねーよバカヤロー! と怒られるバント下手な野球少女。異世界転移し『バットに触れた物を少し浮かせる』スキルで空から落ちて来るのじゃロリ王女を助け従者になる〜 - 第67話 新たな出会いと懐かしい気持ち(終)
本文
「イオリ! アイスとは何じゃ!? 氷魔法とは違うのか!?」
「私の知識で言うなら、甘くて冷たいお菓子です」
「おぉ……! イオリは知っておるのじゃな? ならば買ってきてほしいのじゃ!」
「かしこまりました」
ヴァルドハイムの魔王裁判を終え。
事前の予想通り特にお咎めは無かったが、偉い人同士はまだ話があるらしく暫く時間を潰してほしいと言われたエステル達はスターシュの街を散策していた。
「あ……」
「ぐへーっ!?」
伊織がアイス屋に向かう最中。
曲がり角で一人の女性とぶつかった。
フィジカルの差かその女性が一方的に後方に倒れ、伊織は間一髪で彼女を抱き支えた。
「申し訳ございません! お怪我は……あれ?」
「ひゃ、あ……か、顔が良い…近っ……!」
「あの、貴女はもしかして……」
「エレナさん……?」
「はっ!? ソ、ソフィア様……!? こ、これは違うんです!!」
「どうしたイオリ……む?」
「あら?」
イオリがぶつかり、そしてその人に声を掛けたのは先程の魔王裁判で見た二人。
カルネージ王国の若き女王、ソフィア・カルネージ。
そして彼女を支える魔神使い、エレナ・クライドだった。
「エレナさんが申し訳ありません。あの人顔が良い女性を見るとすぐにああなってしまうので……」
「構わぬ。ぶつかったのはお互い様じゃからな」
エステルとソフィアは対面してすぐ打ち解けていた。
片や女王、片や国の重要な役職。そして両名とも王族。
だと言うのに幼い見た目なのでどこか微笑ましさすら感じる。
同じハーフという事も関係しているのだろう。
「あ、そうだ! エステルさんは汽車に興味はありませんか?
お望みならばヴァルドハイムにノウハウをご教示しますよ」
「キシャ、とな?」
「あぁ、えぇと……線路という専用の通路を走る鉄の馬車と言いましょうか。
一度に多くの人や物資を運べる素晴らしい乗り物なんですよ」
「ふむ? それは妾の飛行魔法より凄いのかの?」
「はい? いえ、汽車はあくまで交通機関なのでエステルさん個人の飛行魔法とは関係無……あぁ」
ソフィアはエステルの見解を訂正しようとして、途中で止めた。
エステルは初めて出会えた同じ境遇の"友人"に自分の技量を自慢したいのだと伊織はすぐに察して。
そして、対面のソフィアも気付いたのだろう。
クスッと一笑いして、エステルに優しく微笑んだ。
「はい。参考までにエステルさんの飛行魔法をお見せ願えますか?」
「任せよ!」
エステルはふふーん! と鼻息荒く鉄箒に跨る。
「『バン・ト!』『バン・ト!』『バン・ト!』」
「え、あの、そんなに重ね掛けしては……」
ソフィアに良い所を見せようと張り切っているのだろう。
緊急時しかしない重ね掛けを行い、鉄箒の尻に装着されている筒からは普段よりも強い光が放出されている。
「エステル様、これ以上は……」
「『フライ!』ぬぉ……!?」
普段よりも遥かに高い速度で飛翔したエステル。
操作しきれず、直撃は免れたものの鉄箒の尻が街頭に当たり大きな音を立てた。
その衝撃で筒が歪み、エステルを乗せた鉄箒は螺旋を描いて高く上空に舞い上がり……やがて振り落とされて、地上に向けて落下していく。
「いけない! アガレ……」
「大丈夫です、ご心配なく!」
何らかの行動を起こそうとするエレナを制止して伊織は駆け出す。
幸いにも殆ど真上に飛んでいったので、エステルの落下地点はすぐそこだ。
伊織は余裕をもって落下地点に辿り着きバットを構える。
(……懐かしい)
伊織はふとエステルとの出会いを思い出した。
日本でトラックに轢かれ、この世界この街に転移して。
空から落ちてくるエステルをこのスキルで救った事から全てが始まったのだ。
日本で野球をしていた頃は苦手な事で、それでチームの役に立てた事も無くて。
しかしこの世界においては何度も救われ、そして何度も誰かを救ってきたこのスキルの名を高らかに叫んだ。
「バント!」
fin
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