第21話 ようこそ、『まるふく』へ(終)

小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品

📅 公開日: 2026/1/19 📚 シリーズ: まるふく日和 📝 2,354文字 🤖 AI創作支援作品 ✅ 全年齢

あらすじ

まるふく日和 - 第21話 ようこそ、『まるふく』へ(終)

本文

そんなある日の事。

「千紘っ!」

「ん、どしたー?」

「これ着て!」

「うん?」

柚葉が差し出してきたのは無地の白ワンピース。

柚葉も同じものを着てるけど……

「お、お揃い……っ」

「うん、そっか。じゃあ有り難く着させてもらうね」

まさかこの為にお金を貯めていたんだろうか。可愛い奴め。

「どう?」

「可愛い!」

「ありがと」

可愛いって柄じゃないんだけど……柚葉の中ではそれが一番の褒め言葉なのかな。

「ちょっと待ってて! 良いって言うまで来ちゃダメだからね!」

「え」

柚葉はシュタタ! ドアの向こう側……『まるふく』の営業スペースに向かった。

ドアが閉じられて様子は分からないけど何やらドタバタ。

一丁前に悪戯でもしようとしてるのだろうか。

「良いよ!」

「はいはい」

柚葉からのお許しが出て営業スペースに出て……

「んぇ?」

我ながら間抜けな声が出てしまった。

何せ常連さん……茂さん徳さん。かー兄にけん兄、雲母と鈴華、オトセさんまで居るんだから。

制服の雲母以外はみんな一様に黒い服……いや、かー兄は神父服、かな?

カウンターにホールケーキに大量の駄菓子とラムネ瓶。

そして、折り紙の花で作られたブーケ。

これは……

「千紘っ、結婚式……しよ!」

「あぁ……」

そうか、柚葉はその為にお金を貯めてたんだ。

ワンピースはウェディングドレス。

ホールケーキはウェディングケーキ。

駄菓子とラムネは……柚葉にとってのご馳走だもんね。

折り紙のブーケはベーゴマ仲間の子供達と作ったんだろうか?

きっと柚葉なりに精一杯考えて、頑張って結婚式を作ったんだ。

「千紘さん、コレ」

「あぁ、うん」

雲母から渡されたのは大きいダイヤ型のキャンディがくっついたプラスチックの指輪。

結婚指輪? もう可愛すぎて頬が緩んでしまう。

指輪を嵌めると、かー兄が狭い店内を横ばいになりながら近付いて来る。

「では新婦のお二人は指輪交換を」

「はい!」

「はい」

夜中だから歌も曲も無しで。

それでも、みんなの笑顔に溢れた素敵で穏やかな結婚式。

柚葉の手を握っめ指輪交換。

その掌の温もりは、かつての砂で汚れた50円玉を持つ少女の冷たい手とはまるで違う。

指輪交換をして、柚葉はこのキャンディを食べたそうにしてるけど、まだ式の途中だからかグッと我慢している。

指輪交換を終えて、かー兄が聖書(?)を開いて誓いの儀式。

「椎名 柚葉。貴女は吉岡 千紘を妻とし」

「はい!」

「吉岡 千紘。貴女は椎名 柚葉を妻とし」

「はい」

「共に病める時も健やかなる時も愛する事を誓いますか?」

「「誓います」」

「では、誓いのキスを」

「千紘っ……」

柚葉が目を瞑って上を向く。

柚葉が背伸びをしないと届かない距離は少しもどかしい。

「ん……」

柚葉のぷっくりとした柔らかい唇に吸い寄せられる。

私と柚葉の影が一つになって……

「おめでとう」

「おめでとー!」

「にゃあ!」

みんなから拍手と共に祝福されながら唇を離す。

「千紘、お花……」

「ありがとう。これは柚葉と友達で作ったの?」

「うん! えっと、頑張って結婚式作ったけど……どう、だった?」

これだけの事をしてくれたのに。

不安そうに上目遣いで見て来る柚葉が愛おしくて。

「可愛い事してくれちゃって〜! うりうり〜」

「にゃ〜」

柚葉の頭をわしゃわしゃと撫でる。

嬉しすぎて何時もより荒っぽくなっちゃった。

「あはは、とっても嬉しい! ありがとう、柚葉」

「えへへ! うんっ!」

どん、と勢い良く抱き着いてきて。

よしよしと背中を撫でてあげる。

みんな席に座って、ラムネで乾杯して、ケーキと駄菓子を食べて。

甘味の暴力に一部の人は悶絶していたけど、柚葉は満足そうだ。

慎ましいながらも、最高の結婚式で……終わる瞬間は不覚にもうるっとしてしまった。

◇◇◇◇◇

??年後

「行ってきます!」

「行ってらっしゃい」

柚葉を保護してから何年経ったんだろう。

少しずつだけど、柚葉は実年齢と精神年齢が近付きつつある。

そんな柚葉はかつての『お手伝い業』から更に発展して、雨樋や網戸の修理やペンキの塗り直し、祭りやイベント手伝いなども請け負う『町のなんでも屋さん』になっていた。

ベーゴマの改造がやたら上手かったから、元々手先は器用なのかも。

今日の仕事は網戸の修繕。すぐに終わるみたいだから、駄菓子屋でベーゴマを回してから帰ってくるのかな?

「いやぁ、上手くなったもんだなぁ」

「うどんもベーゴマもなんでも屋も……柚葉は努力の天才やなぁ」

「またそれ? 柚葉が褒められるのは嬉しいけど、同じ話しを何回もするのはいよいよだよ?」

そして徳さん茂さんも相変わらず。

雲母は大学生になって、かー兄は彼女さんと結婚した。

けん兄は最近彼女が出来たみたいだけど、順調なんだろうか。

鈴華は柚葉への教育の経験が活きたのか、どんな子にも分かりやすく、粘り強く教える良い先生だと評判だ。

と、そんな事を考えてると、『まるふく』の引き戸が開けられた。

「千紘……」

「あれ、早かったね? 駄菓子屋に子供居なかっ……え」

困惑とか、不安とか。

そんな表情の柚葉の隣には1人の少女。

顔色も悪く、何かに怯えている様な表情。

年齢こそ違うけど、かつての柚葉みたいだ……

「ほら、出してみて。大丈夫だから」

「う、うん……」

少女はおずおずと近付いて、小さな右手をゆっくりと開く。

そこにあったのは砂で汚れた50円玉。

あぁ、こんな所まであの日にそっくり。

優しく、にっこりと。その子を安心させる様に微笑んで……

「素うどんなら50円で提供出来ますよ」

パァ、と少女の表情が明るくなった。

此処は下町の一角にひっそりと建っているうどん屋『まるふく』。

地元の人の憩いの場。

そして、悩める人に温かいうどんとおもてなしを提供する場。

そんな人達の居場所になれる様な……そんな願いを込めて、今日も柚葉と一緒に伝える。

「「ようこそ、『まるふく』へ!」」

fin

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作者について

生獣(ナマ・ケモノ)

生獣(ナマ・ケモノ)

ほのぼのな百合も過激な百合も好き。

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