プロローグ 可愛いだけじゃ、君の隣には立てない

小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品

あらすじ

■ 紹介文 【ガチ空手×失恋リベンジ×青春ラブコメ】 「ごめん。俺、かっこいい女の子が好きなんだよね」 卒業式の日、愛らしい美少女を目指していた私は、その一言で玉砕した。 失意のまま入学した高校で出会ったのは、一撃で大男を吹き飛ばす女傑・冴島先輩と、地獄の武道「空手」。 「可愛い」は捨てた。私は「最強」になる。 ■ あらすじ  「ごめん、凛。俺、かっこいい女の子が好きなんだよね」  中学の卒業式。一ノ瀬 凛(15歳)は、長年片思いしていた幼馴染・颯人にあっけなく振られた。  彼好みの「守ってあげたくなる可愛い女の子」を目指してきた努力は、その理不尽な性癖の前に全否定されたのだ。  失意の底で迎えた高校入学式。  灰色の青春を過ごす凛の前に現れたのは、部活動紹介で大柄な男子を一撃で沈める、空手道部の女主将・冴島玲奈だった。  美しい残心。肌を刺すような殺気。そして、物理法則を無視したかのような強烈な「突き」。  (これだ……! これになれば、あいつを見返せる!)  不純な動機で道場の門を叩いた凛を待っていたのは、青春の輝きとは程遠い、汗とゲロと筋肉痛にまみれた「地獄の修行」だった。  鬼のような美人先輩、仏のような顔をした世界最強の顧問、そして個性豊かな仲間たち。  これは、握力40kgの元・乙女ちっく少女が、拳一つで全国の頂点(テッペン)を殴りに行く、血と汗の記録。  かつての想い人を後悔させ、あわよくば「参りました」と言わせるその日まで――少女の拳は止まらない。 ※注:この作品は『部活ごっこ』ではありません。 解剖学に基づいた打撃理論、吐瀉物まみれのサーキット、骨が軋む音が聞こえる超・本格空手描写でお送りします。 運動不足の読者様は、筋肉痛にご注意ください。

本文

三月の風は、まだ少しだけ冷たかった。  舞い散る桜の花びらが、私の視界をピンク色に染めていく。中学校の卒業式が終わった放課後の、校舎裏。  誰もが憧れるシチュエーションで、私は人生最大の絶望を味わっていた。

「ごめん、凛(りん)」

 目の前に立つ幼馴染、颯人(はやと)は、困ったように眉を下げていた。  その表情があまりにも優しくて、だからこそ、続く言葉が鋭利な刃物のように私の胸を突き刺す。

「凛はさ、すげーいい奴だし、可愛いと思うよ。妹みたいで大事だし」 「……うん」 「でも、俺さ。付き合うなら『かっこいい女の子』が好きなんだよね」

 時が、止まった気がした。  かっこいい、女の子?  私の思考が真っ白になる。颯人の好きなタイプに合わせて、髪も少し伸ばした。口調だって女の子らしく気をつけた。守ってあげたくなるような、そんな女の子を目指してきたのに。

「かっこいいって……どういう?」  震える声で絞り出す。 「こう、何かに打ち込んでてさ。凛とした強さがあるっていうか。自分の足で立ってる奴。そういうのに惹かれるんだわ。だから、ごめん」

 じゃあね、と軽く手を振って颯人が去っていく。  私はその背中を呼び止めることもできず、ただ立ち尽くしていた。

 ――可愛いだけじゃ、ダメなの?  ――守られるだけじゃ、好きになってもらえないの?

 悔しさが、遅れて込み上げてくる。  私は無意識のうちに、スカートの横で拳を握りしめていた。  ぎり、と音がしそうなほど強く。爪が手のひらに食い込み、鋭い痛みが走る。でも、胸の痛みに比べればこんなもの、何でもなかった。

 私の握力は、平均よりもずっと強いらしい。  赤く鬱血したその拳が、これから私の人生を変える「武器」になることを、この時の私はまだ知らなかった。

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作者について

角煮カイザー小屋

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