1・綴れない風景

小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品

📅 公開日: 2026/1/21 📚 シリーズ: 声の届け方 📝 1,555文字 🤖 AI創作支援作品 ✅ 全年齢

あらすじ

発達障害により言語表現に困難を抱えながらも、「物語を書きたい」という夢を諦められない一人の男性。彼がAIと出会い、初めてコンテストに挑戦するまでを描いた短編小説。「自分の力で書いていないのでは?」という葛藤と、「それでも伝えたい」という衝動の狭間で揺れる主人公の姿は、創作に関わるすべての人、そして「何かが足りない自分」に悩んだことのあるすべての人に問いかける。夢の叶え方は、ひとつじゃない。

本文

僕の頭の中には、いつも物語がある。

金曜日の夜、帰宅ラッシュの電車に揺られながら、僕は向かいの座席に座る女性をぼんやりと眺めていた。三十代前半くらいだろうか。ベージュのトレンチコートを着ている。

彼女は膝の上に小さな紙袋を抱えていた。どこかのケーキ屋のロゴが見える。手土産だろうか。誰かの家に行くのかもしれない。

彼女の瞳は、少しだけ潤んでいるように見えた。泣いているわけではない。ただ、何かを堪えているような、そんな湿り気を帯びた目。視線は窓の外に向けられているけれど、流れていく夜景を見ているようには到底思えなかった。もっと遠くの、ここではないどこかを見ているような――。

僕は勝手に想像する。

彼女は今朝、誰かと喧嘩をしたのかもしれない。恋人か、あるいは家族か。言い過ぎたことを後悔している。だからケーキを買った。仲直りのために。

でも、電車の中で一人になった今、不安が押し寄せてきている。許してもらえるだろうか。また同じことを繰り返してしまうのではないか。

そんなことを考えながら、彼女はぼんやりと窓の外を見ている——。

もちろん、全部僕の妄想だ。実際には、ただ仕事で疲れているだけかもしれない。目が乾燥しているだけかもしれない。ケーキは自分へのご褒美で、これから一人で食べるのかもしれない。

でも、僕の頭の中では、もう物語が動き始めている。

彼女が帰宅する。玄関を開ける。「ただいま」と言う声が少しだけ震えている。リビングには誰かがいて、テレビの音が聞こえている。彼女はケーキの紙袋を持ったまま、その人の背中を見つめて佇む——。

その先は、まだわからない。でも確かに、僕の中で何かが形を成そうとしているのだった。

電車が駅に着いて、女性は降りていった。紙袋を大事そうに抱えたまま、人混みの中に消えていく。僕は彼女の後ろ姿を目で追いながら、頭の中の物語の続きを考えていた。

こういうことが、昔からよくある。

コンビニで小銭を数える老人の、震える指先。スマートフォンを見つめながら、時折ため息をつくサラリーマン。カフェで友人と笑い合っているのに、どこか目が笑っていない女子大生。そういう人たちを見るたびに、僕は勝手に彼らの物語を想像する。

この人は昔、何かを失くしたことがあるのだろう。この人は今、誰かを待っているのだろう。この人は本当は、ここにいたくないのだろう。

人の心の奥にあるものを、僕は勝手に覗き込む。覗き込んで、そこに物語を見出す。それが癖のようになっていた。

職場でもそうだ。

後輩が上司に叱られた後、給湯室でそっとため息をつく横顔。あの子は怒られたことを悔しがっているんじゃない、と僕は思う。怒られた内容が正しいことはわかっている。でも、それをうまく言い返せなかった自分が情けないのだ。もっと違う言い方をすればよかった。なぜあの時、ああ言ってしまったのか。彼女が悔やんでいるのは、ミスそのものではなく、ミスの後の自分の振る舞いなのだ——。

そんなことを考えながら、僕は自分のデスクに戻る。誰にも言わない。言う必要もない。ただ、頭の中で物語が静かに紡がれていく。

物語が、僕の頭の中にはいつもある。

人の心を想像することが、僕は好きだ。誰かの目の奥にある感情を読み取ろうとすることが、たぶん得意だと思う。それを物語にすることができたら、きっと素晴らしいものになる。そう信じている。

ただ——。

それを言葉にすることが、僕にはできなかった。

電車が僕の降りる駅に着いた。ドアが開くと同時に、夜の空気が流れ込んでくる。僕は鞄を持ち直して、ホームに降りた。

今日見た女性の物語は、きっと明日には忘れている。昨日見た誰かの物語も、一昨日見た誰かの物語も、全部僕の頭の中で溶けて消えていった。

形にできないまま、消えていく。

いつも、いつも、そうだった。

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作者について

あいの

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あいぺん毎日更新中! AIと読書が趣味なのでAI小説を作り始めました。自分の想像した世界を、AIの力を借りながら文字に起こす毎日を楽しんでいます。

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