その3:2026年2月25日水曜日・G県N市新町交差点「BARアムリタ」③
小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品
あらすじ
Kindle電子書籍「心(理×)霊カウンセラー」のスピンオフ 街の何でも屋。自称探偵・原アイラがぶん殴る? 「謎を解かない系探偵」が挑む連続電車飛込事故の真相は?
本文
=3=
2026年2月25日、水曜日22時。
BARアムリタからN市新町交差点を西へ渡って1分。黄泉野カレンが営むカウンセリング室の入ったビルの2階に、彼女の部屋はある。
21時にアムリタを出て帰宅したカレンは、ゆっくりとバスタイムを楽しみ、就寝前の日課である日記を書いていた。
今日の出来事、今日のカウンセリング依頼者のこと、特に印象に残った依頼者について思ったこと、その他いろいろ――。
毎日ノート1〜2ページに、書き方を気にすることなく【ばヴぁーん】と走り書きで。
よく「手が考えに追いつかず、あとで読めない字になる」という話があるが、彼女は違う。
【ばヴぁーん】という勢いで走り書きされたその日記は、高名な書道家のように踊るように達筆な草書でありながら、それでいて誰にでも読めるはっきりとした文字で構成されているのだ。
今日の日記に書かれていたのは、後輩カウンセラー・真城ナミの成長について、
今日最も印象に残った依頼人について、そして最後に――
BARアムリタでの原アイラ、柴山シンジュとの会話について。
それを書き終え、一息ついてペンを置いたカレンは、眼鏡を外し、ふとカレンダーに目をやった。
◇◆◇
2週間おきの金曜朝8時5分。規則的な間隔で連続3回起きた電車への転落事故。
アイラの言葉は「いるにはいるが、そういうのはいない」。カレンはその曖昧な表現を、「霊はいるが、犯人となるような“悪意を持った霊”は見当たらない」と理解していた。
よほど強い悪意、あるいは強大な力がない限り、霊が人を動かすことはできない。
つまりN市駅には霊はいるにしても、“人を押す”ほどの悪意を持つ霊はいないということだ。ただしもう一つ。自分の死を理解できず、強い未練を残した者の霊は、時として同じような現象を引き起こすことがある。そうだとすると……
ふう、と一息ついたそのとき――カレンの中に、ふと閃きが降りてきた。
この連続事故。もし“見えない何か”が関わっているとして、それがN市駅で起きた過去の事象からではなく、何らかの理由で――
「定期的に、その時にだけそこに現れる者が関わっているとしたら……」
2週間おきという規則的な動き。その“定期性”を持つ存在の動機は限られてくる。心理的な習慣、仕事上の定期タスク、医療に関わる定期の予定。その中でも特に、医療機関の定期通院は第2・第4金曜日に組まれる傾向がある。となれば――
「もしかすると、この転落事故に関わっている“見えない何か”というのは……」
カレンの中に、一つの推論が生まれた瞬間だった。そしてそれを手早くメモに記した彼女は、スマートフォンでメッセージにそれを書き写す。そのあて先は……
【宛先】AIRA_HARA
【件名】G県N市連続電車飛込事故について
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