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第3話 馴れ初め(後)~善夜、持ち替えて跳ぶ~

小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品

📅 公開日: 2026/3/20 📚 シリーズ: 魔界公務員と代行者 📝 1,763文字 🤖 AI創作支援作品 ✅ 全年齢

あらすじ

魔界公務員と代行者 - 第3話 馴れ初め(後)~善夜、持ち替えて跳ぶ~

本文

 オフィサーの予告どおりだった。

 あっという間に、無数の鎖が視界を埋める。

 屋上の四方や足元から――上空に上がってからの急降下まで。

 完全に囲まれた。

 白銀の鎖が生き物のように虚空を這って迫ってくる。

「えええーーーーー!?」

 モヤを突き抜け殺到する幾条もの銀色。

 おろおろするしかない彼女に聞こえてきたのは、

『――ご安心ください』

 先ほどと変わらぬトーンのオフィサーの声。

『私の命令に従っていただければ、身の安全は保障します』

「めい、れい……?」

 彼に返事をする間もなく、善夜の右手は躍動した。

 ぎぎぎぎぎぎぎんっ!!

 耳障りな音が鼓膜に突き刺さる。

 無彩剣アーテルの黒い切っ先が虚空を走り、最短距離で鎖を斬り払っていく。

『左手に剣を持ち替え――合図で小さく跳びます』

「持ち替えて……とぶ……!?」

 これが「命令」だろうか。

 善夜は慌てて手を動かした。

 自分の両手は、思ったよりも素早く動いた。

 鎖を断ち斬りながら流れるように、剣が左手に渡る。

 左腕が左後方から殺到する鎖を粉々にする作業に淀みなく移る。

 棒立ちの善夜の腕がせわしなく動き回るというのは、本人から見ても異様だった。

『――今です。跳んでください』

「あ、はいっ……」

 善夜は無我夢中で床を蹴った。

 瞬間、縄跳びのように。

 足の下を数本の鎖が通り過ぎる。

 その鎖を、漆黒の剣が漏れなく刈り取った。

 ***

 鎖の襲撃が止んだ。

 床に散らばる銀色の破片が、鈍色のモヤに少しずつ溶けていく。

 善夜はひたすら荒い呼吸を繰り返していた。

 緊張から解き放たれたせいか、疲労感が一気に来る。

 ――と、善夜の右手から漆黒のモヤが滲み出てきた。

「ヒュッ……」

 息を飲み、肩をこわばらせる善夜。

 彼女の前でモヤは音もなく膨れ上がり、うねるように立ち上がる。

 そして一瞬にして人の形を成し――オフィサーになった。

 善夜を見下ろす彼には、自分についていたはずの剣帯が装備されている。

 右手にも、自分が持っていたはずの剣が握られていた。

「……ちょ、ちょっと待ってください……」

 次の何かが起こる前に。

 善夜は震える声で言った。

「どこにいたんですか……? あと、そこら中にあるモヤは何ですか……鼻がピリッとするし……時間固定っていうのは……なんで鎖が飛んできて……」

 質問が渋滞している。

 オフィサーは彼女の言葉が途切れるのを待って、口を開いた。

「順にお答えします。――人間界において、我々魔人は実体を保つことができません。ですから公務執行時は、人間の身体をお借りしています」

「わたしの、身体……!?」

 もう理解ができない。

 それでも、彼の解説は滔々と続く。

「時間の固定は、公務執行中に人間界に被害が及ばないようにするためです」

「あ……だから……」

「そしてこのモヤは『アニマ』といいます」

 彼の視線が、屋上のあちこちに漂うモヤを示す。

「生き物から放出される――負の感情です」

「負の、感情……」

 善夜は思わず、園庭のほうに目を向けた。

 自分と同じように家族と離れて暮らす児童たち。

 時間を止められたまま笑顔を浮かべる彼らの周りにも、鈍色のモヤは静かに沈殿している。

「人間あなた方にとっては何の価値もありませんが……」

 そんなオフィサーの前置きで我に返り、善夜は続きを待つ。

「アニマは我々の身体や物を構成する糧であり、力の源であり――金銭でもあるのです」

「! っていうことは……!」

 ふと思いついた『すごいこと』に、気持ちが少し盛り上がった。

「この世界は魔人にとって、宝物でいっぱい――っていうことですか?」

 オフィサーが頷く。

「取引などを通じて、我々は人間と上手く付き合っていきたいと考えています」

「あ……! だから『契約』……!」

 善夜の目がぱっと輝く。

「人間は大歓迎だと思いますよ! 『嫌な気持ち』と引き換えに願いが叶うんだったら……」

「――そこに問題も生じているのです」

 オフィサーの声のトーンが、僅かに低くなった。

 『魔人と築く明るい未来』に思いを馳せていた、善夜の笑顔が止まる。

「人間を欺いて、アニマを搾取する者がいます」

「え……」

 その言葉の意味を善夜が飲み込みきる前に。

 ――だんっ

 大きな容器に重いものが落ちた、鈍い音が響いた。

 オフィサーの視線が、善夜から外れた。

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まかろん まよね

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