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第9話 決着

小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品

📅 公開日: 2026/3/20 📚 シリーズ: 魔界公務員と代行者 📝 2,614文字 🤖 AI創作支援作品 ✅ 全年齢

あらすじ

魔界公務員と代行者 - 第9話 決着

本文

 『床の裂け目に飛び込んでください』

「はい!」

 オフィサーの声に従って。

 善夜は裂け目に向かって床を蹴り――

 そのまま落下した。

「~~~~~!!?」

 風が頬を叩く中、真っ逆さまに落ちていく。

 無数の鎖が不規則な動きで飛来する。

 が、彼女の右手が振るう漆黒の刃が全て捌く。

『狼狽えず、しっかりと着地してください』

「わかって……ます……!」

 彼女の体が縦にくるりと回り――善夜の身体が園庭に着地する。

 安堵の溜息をつく暇もなく、

『3時の方向へ走ります』

 下された命令に従い、寮舎から離れるように走る善夜。

 その時――背後から、地響きのような音が聞こえてきた。

 振り返った善夜の目が大きく見開かれる。

 寮舎の奥から現れたのは、淡い緑がかった白銀色の巨大な蛇。

 無数の鎖で構成された身体は直径だけでも2メートル以上か。

 鎖という素材でできているからか、園庭に散らばる児童や職員などものともしない。

 鎖を鳴らして並走するように移動している。

『絶対に逃がさねーぞ……!!』

 聞き慣れた声は巨大な蛇から聞こえた。

 このガラの悪い喋り方は……

「ヒドゥン、さん……!?」

『ええ。彼が魔人化した姿です』

 圧倒される善夜に、オフィサーの声がいつものトーンで告げる。

『自身の特性を最大限に行使する時――我々は、本来の姿に戻ります』

 善夜はふと、異形のオフィサーを思い出す。

 あれが、彼が魔人化した姿なのだろうか。

 巨大な蛇――魔人化ヒドゥンが善夜を追い越し、僅かに進路を変えた。

 前方に回り込むようにカーブを描き始める。

『差し支えがなければ、私にアニマを込めてください』

 アニマを込めて、大変なことになった気がするのだが……

「……それって、辛いことを思い浮かべるんですよね?」

『ええ』

「また過剰摂取? になったらどうするんですか?」

『不意打ちでなければ問題ありません』

 念入りに確認した直後。

 断続的に響く金属音のリズムが変わった。

 じゃじゃじゃじゃじゃっ、という重い物を引きずるような音。

(なに……?)

 意識を向けてすぐ、善夜は息を飲んだ。

 急カーブに合わせてドリフトしているのは、大きく長い尻尾。

 前方に回り込んでいた巨大な蛇が、真っ直ぐに突進してくる。

 緑の目がギロリとこちらに狙いを定めている。

 このままでは……

『――このまま駆け抜けます。足を止めないでください』

『はっ、そんな細い剣で何ができるってんだ!』

 耳を疑う命令の直後、もっともな彼の主張が聞こえる。

 金属製の太い胴体に、どうやって対抗するつもりなのだろうか。

 いや、それ以前に……

『このまま飲み込んでやるっ』

 鎖の蛇がジャラリ、と口を開けた。

 緑の光に包まれながら。

 巨体が食らいつくように、さらに加速する。

 スピードに乗って、大きな胴体が飛び石のようにバウンドしながら迫ってくる。

 喉の奥まで見える口の中では、無数の鎖が渦巻いている。

 錆びた鉄の臭いが鼻をつき、喉にざらつきを残す。

「っ……!!」

 大きく息を飲んだまま、呼吸が止まる。

 このままじゃ……

 それでも、彼は『駆け抜けろ』と言った。

 だから飲んだ息は、吐かない!

 その代わり――

「うわああああああああああ!!!!」

 思いっきり吐き出した雄叫びとともに。

 善夜は、地面を踏みしめる足にさらに力を込めた。

『上出来です』

 猛々しい善夜の叫び声が響き渡る中。

 彼女の右手が動いた。

 流れるような動作で剣帯に無彩剣アーテルを収めたあと。

 隣にぶら下がるドア型のキーホルダーを掴み頭上に放り投げた。

 ドア枠から飛び出したのは、無彩剣と同じ作りの柄。

 頭上に伸びた右手がそれを掴み、肉迫する魔人化ヒドゥンに向かって振り下ろす。

 ドア枠を押し広げ引き出されたのは、真っ黒な大剣。

『両手で持ってください。そして……』

「……はい!」

 構え直された大剣が、大きな口を開けた蛇の上顎にめり込む。。

 ――が、それだけだった。

 刃の侵攻と善夜の足が止まったのは、誰の意志でもない。

 無数の鎖を撚り合わせてできた、魔人化ヒドゥンの身体が押し返しているのだ。

 両足は力いっぱい踏ん張っているようだが、後退が止まらない。

 さらに切れた鎖が大剣に絡まって、身動きも取れない。

『武器を大きくしたところで無駄だ。代行者がへなちょこだったら……』

 ――断砕剣クレイモア・過負荷オーバーロード

 嘲笑うヒドゥンの声を飲み込んだのは、燃え上がるように大剣を駆け上がる黒。

 それは善夜が込めたアニマから変換された、オフィサーの魔力。

 荒れ狂う闇をまとった刃が、進み始めた。

『では改めて――駆け抜けましょう』

「わかりました!」

 応えて、善夜は素早く地面を蹴った。

 ***

 黒く燃え上がる刃は巨大な蛇の上顎を深く侵攻し、胴体の幾重もの鎖を砕きながら前進を続ける。

『お前なんかに何ができる!?』

 斬り裂かれ徐々に外光が差し込んでいく蛇の体内に、ヒドゥンの呼びかけが響く。

『いいから足を止めろ! 今度こそお前の思い通りに繋いでやる!』

 まだ言っている。

『お前一人じゃ絶対に無……』

「――やっちゃってくださいオフィサーさん」

『承知いたしました』

 善夜が追加で込めた怒りアニマにより、纏う闇が一層深まり勢いを増す大剣。

『やめろおおおおおおおおおおおお!!!!!』

 ヒドゥンの最後の絶叫を聞きながら。

 善夜の意志が、断砕剣を豪快に振りきった。

 ***

 巨大な蛇の姿は消えた。

 その輪郭にわだかまる暗緑色のモヤが、一つの方向に流されていく。

 床に置かれた扉型のキーホルダーが、ヒドゥンだったアニマを吸い込んでいた。

 善夜が興味深そうにそれを眺めていると、

「携帯型空間短縮装置で結紮者リゲーターヒドゥンを魔界に送還しています」

「けいたいがた…………?」

 最初に使っていた折りたたみ式の黒い端末を耳に当てたまま、オフィサーが親切に解説してくれた。

 しかし、善夜は聞き慣れない長い言葉は覚えられない。

「『携帯型扉』でも通じます」

「あ……携帯型、扉……」

 善夜がその言葉を反芻するのを見たあと、

「オフィサーです。公務は無事に完了しました」

 オフィサーはすぐに目を伏せて電話の向こうの誰かと会話を始めた。

 善夜は、彼の横顔を見つめる。

(公務、完了……)

 これで、終わり。

 ってことは――

 善夜は自分の胸に手を当てた。

 落ち着きかけた鼓動が、また激しく脈打っていた。

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まかろん まよね

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