【洒落怖】父の影が、おかしかった
小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品
あらすじ
大阪府東大阪市で起きた一連の出来事について記録します。 625
本文
投稿者:noriko_hashi ◆ 2016/03/14(月) 02:47:33.18
長文になります。読んでくれる人だけ読んでください。 怖い話というより、ずっと誰かに聞いてほしかった話です。 父が死んで、もうすぐ一年になるので。
私が小学四年生だった2004年の秋のことです。 当時うちは東大阪市の荒本のあたりに住んでいました。 府営住宅の4階で、父と母と私と齢の離れた兄の四人暮らし。
父は当時42歳で、工場勤めをしていました。 真面目で、無口で、休日は必ず私を公園に連れて行ってくれる人でした。
その年の秋から、父の様子がおかしくなりました。
最初に気づいたのは、10月の終わりごろの日曜日です。
いつものように父と近くの公園に行きました。 荒本の公園じゃなくて、少し歩いたところにある、広めの芝生がある公園です。 葉っぱが全部落ちかけた木が何本も並んでいて、ベンチがあって、細い道路が端を走っていました。
父はよく使い捨てカメラで私の写真を撮ってくれました。 でもその日は、なぜか自分の影の写真を撮っていました。
芝生に長く伸びた、自分の影を。
私が「何撮ってるの」と聞いたら、父は少し間を置いてから言いました。
「確認しとるんや」
意味がわからなかったので「何を?」と聞き返したら、
「影が、ちゃんとついてきてるか」
と言いました。
そのときは、変なこと言うなあ、と思っただけでした。
それから父は少しずつ変わっていきました。
明るい場所を嫌がるようになりました。 蛍光灯を消して、薄暗い部屋にいることが増えました。 母が理由を聞いても「影がはっきり見えすぎる」と言うだけで、説明になっていませんでした。
12月になると、父は鏡を全部布で覆いました。 洗面所の鏡も、玄関の姿見も。 私が「なんで」と聞くと、
「鏡の中の影が、遅れるようになってきた」
と言いました。
今思えば、これは相当おかしい発言です。 でも当時の私は10歳で、父が怖かったので、それ以上聞けませんでした。
年が明けて2005年の1月。
父が仕事を休み始めました。 理由は「外に出ると影に追いかけられる気がする」でした。
母は精神科に連れて行こうとしましたが、父は頑として拒否しました。
「俺はおかしくない。影がおかしいんや」
と繰り返すだけで。
その頃、私はひとつのことが気になっていました。
父の影が、本当に、少しおかしかったのです。
気づいたのは、ある夕方です。
リビングで父がテレビを見ていました。 テレビの光が横から当たって、父の影が壁に映っていました。
私はその影を何気なく見ていて、気づきました。
父は両手を膝の上に置いていました。 でも壁の影は、片手が少し、持ち上がっていました。
カメラを構えているような形で。
私はそれを母に言いました。 母は「気のせいや」と言いました。 でも母の顔が少し青ざめていたのを、私は覚えています。
父が失踪したのは、2005年の3月です。
朝起きたら、いなかった。 玄関に靴はあるのに、父がいなかった。
警察に届けて、近所を探して、でも見つからなかった。 3日後に発見されたのは、荒本から南に2キロほど離れた、古い住宅街の外れにある空き地でした。
フェンスに寄りかかるようにして、座っていました。 意識はありました。でも父は、自分がそこに行ったことを覚えていませんでした。
ただひとつだけ、こう言いました。
「影を、返してもらいに行ったんや」
父はその後、入院しました。 診断名は書きません。でも簡単に言えば、現実と幻覚の区別がつかなくなる病気でした。
入院中、父は比較的穏やかでした。 薬が効いていたのか、影の話をしなくなりました。
私が面会に行くたびに、父は病室の窓から外を見ていました。 晴れた日も、曇った日も。
一度だけ、父が私にこう言いました。
「のりちゃん、知ってるか。影いうのはな、本体より正直なんや」
私は意味がわからなくて、曖昧に笑いました。
「本体が嘘ついても、影はちゃんと本当のことをしてる。――でもな、逆もあるんや」
「影が先に、別のもんになってしまうことが」
それが父と交わした、まともな会話の最後でした。
父が死んだのは去年の2015年2月です。 病院で、夜中に、静かに。 享年52歳でした。
死因は心不全ということになっています。
でも私には、ひとつだけ忘れられないことがあります。
父が亡くなった翌朝、母から電話で知らせを受けた私は、病院に向かいました。 早朝で、冬の低い日差しが斜めに差していました。
駐車場を歩きながら、ふと足元を見たとき。
私の影が、一瞬、変な形をしていました。
両手が、カメラを構えているような形に。
一秒だけ。
次に見たときは、普通の影に戻っていました。
これだけの話です。 怖い話としては落ちがないし、説明もできません。
ただ、あの空き地のことを最近また思い出したので書きました。
あそこ、今はコインパーキングになってるって聞きました。 夜中に草が生えてくるとか、都市伝説みたいな話も聞いたことあります。
父が「影を返してもらいに行った」と言ったあの場所。
父は結局、何を見ていたんでしょう。 そして、影から何を返してもらったんでしょう。
私には、今もわかりません。
noriko_hashi ◆ 2016/03/14(月) 02:47:33.18
長文失礼しました。 読んでくれた人、ありがとうございました。
名無しさん 2016/03/14(月) 02:53:17 のりこさん…お父さんのこと、ご冥福をお祈りします でも最後の一行が引っかかる 「何を返してもらったか」って 返してもらったとしたら、代わりに何かを置いてきたんじゃないのかな
名無しさん 2016/03/14(月) 02:55:41 荒本の南2キロの空き地ってどのへん? 布施寄りか?
noriko_hashi ◆ 2016/03/14(月) 02:58:09
布施寄りです 古い住宅が並んでる一角で、白いフェンスがあるところです もう9年以上前なので今もあるかはわかりません
名無しさん 2016/03/14(月) 03:01:44 ちょっと待って 布施南の白いフェンスの空き地って 2006年に若い男性が行方不明になった場所じゃないの カメラマン志望の人 携帯だけ見つかったやつ
noriko_hashi ◆ 2016/03/14(月) 03:04:52 え
(以降、noriko_hashiのレスは途絶えている)