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序章二 神代誠という男

小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品

📅 公開日: 2026/4/14 📚 シリーズ: 地方創世総理大臣 📝 1,354文字 🤖 AI創作支援作品 ✅ 全年齢

あらすじ

静かに、しかし確実に崩壊へと向かう日本――。 人口減少、高齢化、地方の消滅。誰もが「このままではまずい」と分かっていながら、誰も本気で変えようとはしなかった。 その構造に、たった一人で刃を向けた男がいる。 地方出身の総理大臣・神代誠。 「地方が死ねば、日本は終わる」 彼が打ち出したのは、常識を覆す国家改造だった。 首都機能の分散、税制の逆転、そして選挙制度の根本改革。 それは地方を救うための政策であると同時に、東京という“中心”を削る決断でもあった。 だが、その前に立ちはだかる存在がいる。 東京を守るために頂点へ上り詰めた女――東京都知事・黒崎玲子。 「東京を弱くすれば、日本は終わる」 地方を再生するために壊すべきか。 東京を守るために維持すべきか。 どちらも正しいからこそ、決着は残酷になる。 一方、地方の小さな町では、ひとりの女性・遥が現実と向き合っていた。 希望が生まれては消えていく日常の中で、「それでもここで生きる」と選ぶ人々。 政策の最前線ではなく、その“結果”の中で揺れる人生がある。 やがて改革は成功と失敗を同時に生み、国を分断していく。 生き残る町と、消えていく町。 救われる者と、切り捨てられる者。 それでも問われる。 ――すべてを守ることはできないとしたら、何を選ぶのか。 これは理想の物語ではない。 現実と正面から向き合い、未来を選び直そうとする人間たちの物語だ。 国家の構造を巡る壮絶な対立と、地方に生きる人々の静かな戦いを描く、社会派エンターテインメント。

本文

岩手県の山間部に、三沢という集落がある。

正確には「あった」と言うべきかもしれない。今はもう、地図から消えている。

神代誠が生まれたのは、その集落だった。

父は林業に携わる職人で、母は農協の事務員だった。貧しくはなかった。しかし豊かでもなかった。山の空気と、土の匂いと、夜になれば星しか見えない空。それが、神代の原風景だった。

「誠、東京の大学に行け」

父が言ったのは、神代が高校二年の春だった。夕飯の席で、突然。母は黙って箸を置いた。

「なんで」

「ここにいても、仕事がなくなる」父の声には感情がなかった。そのなさが、かえってすべてを語っていた。「俺みたいになるな」

神代は、その夜眠れなかった。

父を否定された気がした。この土地を否定された気がした。しかし同時に――父の言葉が正しいことも、分かっていた。同級生はひとり、またひとりと町を出ていく。残るのは年寄りばかりだ。

■ 帰れなかった春

大学進学のために上京した年の秋、祖父が倒れた。

神代は新幹線で帰った。在来線に乗り継いで、さらにバスで一時間。その道のりで、何かが変わっていることに気づいた。バス停が減っていた。かつて賑わっていた商店街が、半分ほどシャッターになっていた。

病室で、祖父は弱々しく笑った。

「誠、東京はどうだ」

「うん、まあ」

「そうか。……もう戻ってくるな」

「なんで」

「ここには、何もなくなる」祖父は天井を見ながら言った。「俺が死んだら、この集落で働き盛りの男は、もういなくなる」

その言葉は、刃のように刺さった。

祖父は翌春に死んだ。葬儀に来た人間は三十人ほどだった。かつての三沢集落を知る人間は、もうほとんどいなかった。神代は骨を拾いながら、何かを誓った。何を誓ったのか、うまく言葉にできなかった。しかしそれは確かに、胸の奥に刻まれた。

■ 官僚として見たもの

東大を卒業した神代は、財務省に入った。

最初の地方出張は、入省三年目の秋だった。岩手、青森、秋田。三週間かけて、地方自治体の財政状況を調査して回った。

そこで彼が見たのは、子供の頃に見た景色の、さらに深刻な版だった。

老いた町。消えた商店。閉じた学校。そして――東京から「指導」に来た若い官僚たちが、地元の首長に向かって淡々と数字を並べ、「自助努力が必要です」と言い放つ光景。

神代はその場で何も言えなかった。しかし宿に帰ってから、一人でビールを飲みながら思った。あの首長の目を。諦めと屈辱が混ざったあの目を。父の目に似ていた。「俺みたいになるな」と言った、あの夜の父の目に。

■ 政治家になった理由

神代が官僚を辞めて政治家を目指したのは、三十四歳のときだった。

きっかけは、一枚の資料だった。

「三沢集落、解散」

生まれた土地が、正式に地図から消えた。住民はゼロ。インフラ維持不能。行政区分としての三沢は、岩手県の書類の中で静かに抹消された。

彼はその資料を、官邸の執務室に今も持っている。

引き出しの一番奥に。誰にも見せたことのない場所に。

「三沢が消えたのは、誰かのせいじゃない」

神代はよくそう言う。「構造のせいだ。だから、構造を変える」

その言葉の裏に何があるか、誰も知らない。

ただ一つ、確かなことがある。

彼が地方のことを語るとき、その声はわずかに変わる。政治家の声ではなく、あの集落で育った少年の声に、少しだけ戻る。

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作者について

sola

sola

地方を題材とした社会派ストーリーテラー

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