前哨戦
小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品
あらすじ
<p>三つ巴戦 ― 台湾沖</p><p>空は曇天。</p><p>海は鈍く光り、戦場はすでに形成されていた。</p>
本文
三つ巴戦 ― 台湾沖
空は曇天。
海は鈍く光り、戦場はすでに形成されていた。
第一波 ― 紅龍、侵食
「突っ込めェッ!!」
朱雀の咆哮と共に、W30“小木偶”の群れが一斉に前進する。
数百。
いや、それ以上。
海面すれすれを滑るように進み、空を埋め尽くす。
その中央――
炎龍王が、重く、しかし確実に進んでいた。
「止まるな。止まった奴から死ぬぞ」
無線越しに冷たい声。
直後、先頭の数機が“蒸発”した。
第二波 ― 見えない死神
「……来たか」
ベクターは呟く。
HF23――ラプター3。
そのステルス機が、完全不可視のまま戦場に侵入していた。
僚機2機も同時展開。
三機編隊。
「分散。狩る」
短い命令。
返答は不要だった。
次の瞬間。
一機の小木偶の首が、音もなく“消えた”。
レーザーダガー。
さらに一機。
また一機。
群れの中に、静かに穴が空いていく。
「どこだァァァ!!」
朱雀が吠える。
だが見えない。
感じられない。
ただ――数が減る。
「……クソが」
だが朱雀は笑った。
「いいねぇ」
炎龍王が、ゆっくりと腕を上げる。
「なら――全部吹き飛ばす」
拡散グレネード。
無差別爆撃。
空間ごと削り取る。
ベクターの機体が、わずかに揺れる。
「……雑だ」
だが、それでいい。
位置は“割れた”。
「捕捉」
次の瞬間。
ラプター3のレーザーが、炎龍王の肩を掠めた。
衝突
「見つけたぞォ!!」
炎龍王が跳ぶ。
海面を砕き、巨体が宙を裂く。
だが、その動きは直線的。
ベクターは、最小限の動きで回避する。
「遅い」
返す刃。
レーザーダガーが炎龍王の腕を削る。
火花。
装甲が溶ける。
だが――
止まらない。
「効いてねぇなァ!!」
ショットガン。
至近距離。
空間ごと削る衝撃。
ベクターの機体が、初めて大きく後退した。
「……」
無言。
だが判断は早い。
「こいつは“当てる”敵だ」
均衡崩壊
その時だった。
上空――
音もなく影が差す。
「――識別信号、外縁独立機動部隊」
誰かが呟いた。
遅れて現れた第三勢力。
外縁、参戦
「状況は?」
ヤマトの声は冷静だった。
「混戦。三勢力」
タカミムスヒが即答する。
その視界にはすでに映っていた。
――見えない敵(ラプター3)
――数の暴力(小木偶)
――そして、その中心(炎龍王)
「……最悪だな」
だが、次の瞬間には切り替わる。
「やるぞ」
咲耶、解放
咲耶が滑る。
地上でも空でもない。
“その間”を。
ホバーとスラスターが、重力を裏切る。
両腕のエネルギーコントローラが展開。
光が収束する。
「――行く」
瞬間。
咲耶が消えた。
次に現れた時、小木偶の一群が“裂けていた”。
手刀。
刺突。
エネルギーブレード。
全てが一体化した動き。
「速っ……!」
朱雀が目を見開く。
「テメェが新型か!!」
咲耶は応じない。
ただ――
“切り崩す”。
見えない敵を見る者
「……捕まえた」
タカミムスヒの目が細まる。
ラプター3。
完全不可視。
だが――
“流れ”はある。
空気。
熱。
微細なノイズ。
「そこ」
エネルギー射撃。
空間を薙ぐ。
一瞬。
歪み。
ベクターの機体が、わずかに姿を晒した。
「……ほう」
初めて、ベクターが反応した。
「見えるのか」
次の瞬間。
二機が交差する。
邂逅
高速戦。
刹那の応酬。
エネルギー刃とレーザーダガーが火花を散らす。
「……いい」
ベクターが呟く。
「お前は“当たる”」
タカミムスヒは何も言わない。
ただ加速する。
咲耶の神経接続が極限まで同期する。
世界が遅くなる。
「――そこだ」
一閃。
ベクターの機体の肩部装甲が削れる。
同時に――
咲耶の側面が焼かれる。
互角。
完全な。
「……名前は?」
ベクターが問う。
戦闘中に。
異常な行為。
「――答えない」
即答。
だが、その瞬間。
ノイズが走る。
意識の奥。
(……アマツ)
一瞬だけ、声が重なる。
タカミムスヒの瞳が揺れた。
「……!」
ベクターはそれを見逃さない。
「そうか」
小さく笑う。
「“アマツ”か」
崩壊
その瞬間。
朱雀が突っ込んできた。
「よそ見してんじゃねぇぇ!!」
炎龍王の突撃。
三者が衝突する。
爆発。
衝撃。
視界が白に染まる。
離脱
「……ここまでだ」
ベクターが判断する。
僚機損耗。
戦況混濁。
目的達成。
「撤退」
ラプター3が、再び闇に溶ける。
「逃がすかァ!!」
朱雀が追おうとする。
だが――
咲耶が前に出る。
「……お前の相手は、私」
静かに。
確実に。
戦場は、まだ終わらない。
終幕への布石
三つ巴は終わらない。
ただ――
“認識”だけが残った。
ベクター:タカミムスヒとアマツを認知
朱雀:咲耶を標的として確定
タカミムスヒ:二つの異質な脅威を理解
そしてヤマトは、すでに次を見ていた。
「……戦争が、加速するな」
ーーー
乱入者 ― 白き騎士
爆煙がまだ晴れない。
海面は焼け、空は歪み、三勢力の残骸が漂っている。
その中で――
一つだけ、異質な“静寂”が降りてきた。
降臨
「……なんだ?」
朱雀が眉をひそめる。
センサーに映らない。
だが、いる。
“気配”だけがある。
その瞬間。
一筋の光が、戦場を貫いた。
小木偶が、触れた瞬間に“分解”される。
爆発ではない。
崩壊。
「……は?」
誰かが呟いた。
空から降りてきたそれは――
青白く輝く機体。
騎士のようなシルエット。
細く、美しく、そして冷たい。
バルドル。
アーロン
「……非効率だな」
無機質な声。
感情はない。
評価だけがある。
コックピット内で、アーロンはただ戦場を“処理”していた。
「無駄が多い」
一歩。
それだけで距離が消える。
次の瞬間、炎龍王の側面に出現していた。
「――ッ!?」
朱雀が反応する前に、
エネルギーランスが突き出される。
直撃。
炎龍王の装甲が“貫通”される。
「ぐっ……!」
初めて、朱雀が後退した。
「なんだテメェ……!」
「障害だ」
それだけ。
興味すらない。
四つ巴
「新手か」
ベクターが呟く。
ラプター3は既に距離を取っている。
だが、その視線は一点に固定されていた。
「……速いな」
咲耶。
そして――
バルドル。
「どちらも“使える”」
ベクターの評価は冷静だった。
だがその瞬間。
戦場が、さらに加速する。
交差
タカミムスヒは、すでに動いていた。
「――来る」
バルドルの軌道を読む。
直線ではない。
最短距離でもない。
“最適解”。
「……!」
咲耶が横に跳ぶ。
直後、さっきまでいた空間をランスが貫いた。
「回避したか」
初めて、アーロンが反応する。
「なら、二手」
残像。
一つではない。
三つ。
パルスコントローラ。
「分身……いや」
タカミムスヒの思考が加速する。
(違う、全部“本体に近い”)
理解が追いつく前に、
斬撃が来る。
「――ッ!」
エネルギーシールド展開。
衝撃。
だが、押し切られる。
「防御が甘い」
冷たい断定。
ゾーン深化
その瞬間。
タカミムスヒの世界が――“沈む”。
音が消える。
光が遅れる。
思考が、身体を追い越す。
(違う)
(まだ足りない)
咲耶との接続が、さらに深くなる。
神経ネットワークが“溶ける”。
境界が消える。
(私が――咲耶だ)
変化
次の瞬間。
咲耶が“消えた”。
いや――
見えない。
ベクターですら、視線をわずかに動かす。
「……加速したな」
朱雀が笑う。
「いいじゃねぇか!!」
再交差
バルドルが突きを放つ。
だが――
“空振り”。
「……?」
アーロンの瞳が、初めて揺れた。
背後。
咲耶。
「遅い」
一閃。
バルドルの肩装甲が裂ける。
「……なるほど」
アーロンは冷静に分析する。
「適応ではない」
「進化か」
臨界
三機が同時に動く。
バルドル。
咲耶。
炎龍王。
三方向からの衝突。
だが――
その瞬間。
遠方からのミサイル群。
戦域外からの砲撃。
「……介入か」
ヤマトが低く言う。
「これ以上は持たない」
離脱
「撤退する」
ヤマトの命令。
絶対だった。
「……了解」
タカミムスヒの声は静かだが、
どこか“遠い”。
咲耶が後退する。
バルドルは追わない。
「ここでいい」
アーロンはそれ以上を求めない。
ベクターも同様に消える。
朱雀だけが笑っていた。
「逃げるなよ」
余韻
戦場には、何も残らない。
だが――
確実に変わった。
タカミムスヒは“次の段階”へ入った。
ベクターは“標的”を定めた。
アーロンは“興味”を持った。
朱雀は“執着”を抱いた。
そして――
ヤマトだけが理解していた。
「……もう、後戻りはできないな」
ーーー
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