全方位作戦2
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あらすじ
<p>――乱入者:朱雀</p><p>燃え上がる揚陸艦。</p><p>黒煙が夜空を覆い、海面は炎を映して赤く染まっていた。</p>
本文
――乱入者:朱雀
燃え上がる揚陸艦。
黒煙が夜空を覆い、海面は炎を映して赤く染まっていた。
小木偶の残骸が雨のように降り注ぐ中、
咲耶は静かに浮かんでいる。
「揚陸艦、三隻撃沈。残存戦力――」
アマツが淡々と戦果を報告しようとした、その瞬間だった。
――ノイズ。
通信が一瞬だけ歪む。
ムスビの声が割り込む。
「……アマツ、止まって」
その声音は、今までにない緊張を帯びていた。
「何か来る」
――圧
センサーに反応が出る。
だがそれは数値ではなかった。
“圧”。
ただそれだけが、空間を満たす。
次の瞬間。
海面が――割れた。
「――っ!?」
巨大な影が、水柱と共に跳ね上がる。
赤黒い装甲。
龍のようにうねるブースター。
そして、灼熱を孕んだ光。
紅龍重撃型――炎龍王。
「見つけたぞォ……!」
通信に割り込んできた声は、歪んでいた。
獣のように荒く、しかし明確な殺意を帯びている。
「小賢しい……ヒノモトの機体ァ!!」
ムスビが歯を食いしばる。
「来た……朱雀だ」
――暴力
炎龍王が動く。
その瞬間、空気が焼けた。
背部ブースターが爆ぜ、
巨体があり得ない速度で突っ込んでくる。
「速――」
アマツの言葉が終わる前に、
咲耶の視界が赤く染まった。
プラズマキャノン。
直撃寸前で機体を捻る。
かすめただけで、装甲が溶解する。
「温度……異常」
「当たったら終わりだよ、それ!」
ムスビが叫ぶ。
――衝突
アマツは即座に反撃へ移る。
エネルギーコントローラ展開。
収束。
射出。
だが――
炎龍王は止まらない。
直進。
回避なし。
被弾しながら突っ込んでくる。
「……?」
理解不能。
「効いてるのに、止まらない?」
次の瞬間。
巨腕が振り下ろされる。
咲耶が弾き飛ばされる。
海面を何度も跳ね、衝撃がコックピットを揺らす。
「ぐっ……!」
アマツの声が初めて乱れた。
――本質
「ハハハハァ!!」
朱雀の笑いが響く。
「それでいい!!それでいいんだよォ!!」
炎龍王がさらに加速する。
「数で潰す!力で押す!それが戦争だァ!!」
小木偶の残存機が一斉に突撃してくる。
完全な飽和攻撃。
ムスビが即座に対応する。
「アマツ!囲まれる!」
陽炎が上空からレーザーをばら撒く。
だが数が多すぎる。
「こいつ……群れを“使ってる”んじゃない」
ムスビが吐き捨てる。
「“群れそのもの”だ」
――限界
アマツは状況を演算する。
敵戦力、過剰。
自機損耗、増大。
作戦成功率――低下。
だが。
「……継続可能」
その瞬間。
炎龍王が、目の前にいた。
「見ているぞ……お前」
朱雀の声が、妙に静かになる。
「壊れねぇな……その機体」
巨大な爪が振り下ろされる。
咲耶が受ける。
エネルギーシールドが軋む。
「なら――壊れるまで殴るだけだ」
圧力。
出力限界。
警告音。
「アマツ!!離脱!!」
ムスビが叫ぶ。
――撤退判断
一瞬。
本当に一瞬だけ。
アマツは“迷った”。
戦うか。
離脱か。
その時、ムスビの声が届く。
「任務は達成してる!」
「これ以上は“無駄”だ!」
その言葉で、
アマツの中の何かが整理される。
「……了解」
咲耶の出力を一気に開放。
衝撃で炎龍王を弾き、後退。
「逃げるかァ!!」
朱雀が吠える。
ミサイルが一斉に放たれる。
だが――
「遅い」
ムスビが呟く。
陽炎が煙幕と電子妨害を展開。
海域が一瞬で“闇”に沈む。
その中を――
二機の影が、滑るように離脱していった。
――残響
炎の海に、一機だけが残る。
炎龍王。
朱雀は、静かに息を吐いた。
「……いいな」
その瞳が細くなる。
「面白ぇ」
拳を握る。
「次は、逃がさねぇ」
――帰還航路
静かな海。
遠ざかる戦場。
「……ねえ」
ムスビがぽつりと呟く。
「どうだった?」
アマツは少しだけ間を置いて答える。
「……理解しました」
「何を?」
「戦争は――」
一瞬の沈黙。
そして、
「“勝てない戦いもある”」
ムスビは小さく笑った。
「違うよ」
「え?」
「“引くのも戦い”」
その言葉に、
アマツは何も返さなかった。
ただ――
その意味を、確かに記録していた。
ーーー
――南大東島:邂逅
雲の切れ間から、海が見える。
黒い水面に、わずかに浮かぶ影。
「……確認」
タカミムスヒは静かに呟いた。
咲耶のセンサーが捉えたのは――人工構造物。
「南大東島、施設化を確認。滑走路、補給設備……簡易基地レベル」
映像を拡大。
見慣れない構造。
だが、配置と効率は明らかに軍用。
「……アメリカ連邦政府軍」
断定。
「展開が速い……」
記録を取りながら、彼女は機体を低空で旋回させる。
写真偵察のみ。
それが今回の任務の限界だった。
――制約
「燃料残量、帰還限界まで余裕はありません」
機体の音声が淡々と告げる。
タカミムスヒは頷く。
「……十分」
本来なら、ここで破壊しておきたい。
だが――
「戦力が足りない」
それ以上に、
「帰還できなければ意味がない」
冷徹な判断だった。
「帰投ルートへ――」
機体を反転させた、その時。
――検知
「……?」
センサーが“何か”を捉える。
だが、曖昧だ。
通常の反応ではない。
「ステルス……?」
次の瞬間。
雲の中から、影が現れた。
ひとつ。
ふたつ。
みっつ。
編隊。
先頭に立つのは――
異様なシルエット。
逆関節。
大型機。
「……アパッチ」
タカミムスヒの声がわずかに低くなる。
――対峙
距離、数百メートル。
互いに減速。
そして――停止。
海上、低空。
風だけが吹き抜ける。
通信はない。
だが、分かる。
“いる”。
コックピットの向こうに。
「……あれが」
タカミムスヒは静かに呟く。
「敵の中核」
一方。
アパッチのコックピット。
ベクターは無言で咲耶を見ていた。
「……」
言葉はない。
だが、認識する。
細い機体。
異様なバランス。
そして――
“消えかける存在感”。
「……サクヤ」
小さく呟く。
その瞬間、世界が少しだけ“静か”になる。
――理解
両者とも、動かない。
動けない、ではない。
「動かない方が合理的」
それを理解している。
タカミムスヒが状況を整理する。
敵機:3
自機:1
燃料:帰還限界付近
「交戦した場合――」
勝率、低。
生存率、さらに低。
「……非合理」
ベクターも同じ結論に至る。
燃料。
距離。
任務。
全てが揃わない。
「……ここではない」
静かに、だが確実に。
――一瞬の殺気
それでも。
ほんの一瞬だけ。
互いに“踏み込む”気配を見せる。
咲耶の出力がわずかに上がる。
アパッチの脚部が沈む。
空気が張り詰める。
――やれば、やれる。
その確信だけが交差する。
――離脱
先に動いたのは――同時だった。
咲耶が後退する。
アパッチも同時に距離を取る。
追わない。
撃たない。
ただ、視線だけが残る。
――認識
すれ違う一瞬。
タカミムスヒは確信する。
「……強い」
言葉には出さない。
だが、理解する。
「あれは――“対等”」
ベクターもまた、同じだった。
「……次は」
小さく息を吐く。
「殺す」
感情ではない。
ただの“決定”。
――帰還
咲耶は加速する。
背後の気配が消える。
タカミムスヒは最後に一度だけ振り返る。
そこにはもう、何もいない。
「……」
だが確かに“敵”がいた。
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