『灰色の雨、始まりの火』

小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品

📅 公開日: 2026/5/2 📚 シリーズ: 『LUNARIS RE:CODE』 シーズン1 📝 3,154文字 🤖 AI創作支援作品 ✅ 全年齢

あらすじ

星導国家ルナリスは、突如現れた「黒蝕の徒」とその総帥クロウリーによる奇襲を受け、一夜にして王都の機能を喪失する。 第一王女のエリカは、王城の崩落から逃れ、戦斧を振るう放浪の巨漢ガハハ・ナイト、王室直属騎士ナイトゥ、宮廷魔導師セリアと共に、黒蝕の軍勢を打倒する為の行軍を開始する。(現在編:2026年) それから5年後。黒蝕の瘴気に覆い尽くされたルナリスは、太陽の光が届かない灰色の廃墟と化していた。 右目と多くの仲間を失った22歳のエリカは、獣人の生き残りである狙撃手フェンリルと共に、反逆戦線アストライアのリーダーとして、無限に増殖する無人兵器や異形との終わりのない抗争を続けていた。(未来編:2031年)

本文

Aパート:2031年(5年後)

冷たい水滴が、規則的な音を立てて鉄の残骸を叩いている。空は一面白い雲に覆われ、太陽の輪郭すら見えない。大地を埋め尽くすのは、黒く変色した石造りの残骸と、赤錆にまみれた巨大な鉄骨の山だ。風が吹き抜けるたび、折れ曲がった金属の標識が軋む音を立てる。かつて「月光の都」と呼ばれた星導国家ルナリスの王都は、巨大な廃棄物処理場のような姿をさらしていた。半ば崩落した時計塔の縁。文字盤の消えた時計の針が、六時の位置で止まったままのその場所に、一つの影があった。

「……また、雨か。あの日と同じやな」

エリカは、濡れたコンクリートの上に座り込み、灰色の空を見上げていた。肩口で切り揃えられた銀色の髪が、雨に打たれて額に張り付いている。右目は分厚い革の眼帯で覆われ、左の瞳だけが、冷えたガラス玉のように前方を映していた。彼女の着ている防刃コートは、随所に布を継ぎ当てた跡があり、右肩の装甲には深い爪痕のような傷が刻まれていた。彼女の傍らには、刃の数カ所が欠け、黒い染みがこびりついた長剣が置かれていた。

「姫。座り込んでいる時間はねえぞ」

背後の暗がりから、足音もなく歩み出てきた者がいた。フェンリルだ。濡れた狼の耳を一度だけ振って水を弾き飛ばすと、彼は手にした二丁の魔導銃のシリンダーをカチャリと回した。

「西の区画に反応があった。黒蝕の『粛清部隊』だ。数はおよそ二十。まっすぐこっちに向かってきている」

「わかっとる。……なぁ、フェンリル」

「なんだよ」

「もし、『あの日』に戻れたら。ウチは、別のやり方を選べたんやろか」

エリカの視線は、遠く霞む巨大な瓦礫の山――かつてのルナリス王城の跡地に向けられていた。

「昔話の相手なら、壁の染みにでもしてろ」

フェンリルは視線を逸らし、銃口を斜め下へ向けた。

「俺たちがやるのは、今日を生き延びて、あいつらの喉に風穴を開けることだけだ」

その言葉が終わるか終わらないかのうちに、重い駆動音が空気を震わせた。灰色の雲を突き抜け、赤く明滅する単眼を持つ無人飛行兵器の群れが、降下してくる。雨粒を切り裂きながら、赤い光が次々と時計塔の縁に照準を合わせた。エリカはゆっくりと立ち上がった。右手を伸ばし、濡れた長剣の柄を握り込む。彼女の背中には、かつて隣に立っていた生真面目な騎士の姿も、大口を開けて笑う巨漢の姿もない。

「……行くで、フェンリル。ウチらのやり方、見せたるわ」

エリカは塔の縁から身を躍らせた。灰色の雨の中、彼女の銀髪が一瞬だけ、失われた月光のように軌跡を描いた。

Bパート:2026年(現在)

――時計の針は、5年前に巻き戻る。

「あかん! こんなん許されへん!」

夜の闇を、燃え上がる炎の赤が塗り潰していた。星導国家ルナリスの城下町。空から突如として降り注いだ黒い雷光が城壁を穿ち、その穴から黒装束の兵士と異形の者がなだれ込んでいた。石畳の上を人々が走り、靴音と、建物が崩れ落ちる轟音が重なり合う。燃える大通りの中心に、銀色の長剣を握りしめたエリカが立っていた。彼女の腕を、騎士のナイトゥが強く掴んでいる。

「エリカ様! お待ちください。前線に出るのは無謀です!」

ナイトゥの額には汗が浮かび、呼吸は不規則になっていた。

「騎士団の主力は王城の防衛に回っています。城下町まで手が回りません。それに、敵の先陣には強力な術式を行使する者がいるとの報告が入っています!」

「そんなこと、わかっとるわ!」

エリカは、ナイトゥの手を力強く振り払った。

「せやけど、民が襲われとるのを黙って見てられへん! 城の中で隠れてるだけなんて、ウチはごめんや!」

「しかし……!」

「あんたは城に戻って、父様とセリアを守り! ウチは、ウチのやり方で前線に出る!」

エリカは、動きを妨げるドレスの長い裾を長剣で一閃して切り落とし、炎の上がる広場へと駆け出した。

「エリカ様……!」

ナイトゥは手を伸ばしたが、彼女の背中はすでに炎の向こうへと消えていた。彼は剣の柄を強く握り込み、その場に留まった。広場の中央。エリカは、黒いローブを着込んだ男と対峙していた。男の持つ杖の先端からは、黒い靄のような力が絶えず漏れ出している。彼の周囲には、四つ足で這いつくばる異形が数体、地を擦るような音を立てていた。

「王女自ら出向くとは。手間が省けたというものだ」

ローブの男が杖を掲げる。

「お前のその命ごと、この国を灰に変えてやろう」

「舐めんな!」

エリカは床の石畳を蹴り、一気に距離を詰める。長剣が空気を切り裂き、銀色の弧を描いた。

「月華烈斬っ!」

刃がローブの男に届く直前、男の杖から黒い障壁が展開された。金属が激突するような鈍い音が響き、エリカの身体は弾き返された。

「あっ……!」

エリカは宙を舞い、石畳の上を転がる。手から長剣が滑り落ち、数メートル先に乾いた音を立てて落ちた。

「お前の剣など、届きはしない。クロウリー様の圧倒的な力の前には、すべてが無に帰るのだ」

ローブの男が杖をエリカに向けた。杖の先端に、周囲の光を吸い込むような漆黒の球体が圧縮されていく。エリカは地面に手をつき、顔を上げた。黒い球体が放たれようとした、その時だった。

「ガハハハハハハ!!!」

空から、空気を震わせるような大音声が響いてきた。直後、エリカとローブの男の中間地点に、巨大な質量を持つ何かが落下した。ドゴォォォン!!という轟音と共に石畳が粉砕され、土煙が数メートルの高さまで舞い上がる。

「何者だ!」

ローブの男が杖の向きを変えた。土煙がゆっくりと晴れていく。そこに立っていたのは、身の丈ほどもある巨大な鋼の戦斧を肩に担いだ、筋骨隆々の巨漢だった。顔面には無数の傷跡。ボロボロの毛皮を羽織り、彼は口を大きく開けていた。

「ワシはガハハ・ナイト! 笑いの守護者よ!」

エリカは地面に座り込んだまま、その男を見上げた。

「暗い顔をしていては、運気が逃げるぞ姫さん! あんたのその笑顔を守るために、ワシはここに来たんじゃい!」

「何をやっている、やれ!」

ローブの男の合図で、周囲の異形たちが一斉にガハハ・ナイトへ飛びかかった。ガハハ・ナイトは一歩も引かず、肩に担いでいた戦斧を両手で握り直した。

「小細工無用! ガハハ・スマッシュ!!」

彼が戦斧を水平に薙ぎ払った。ただの力任せの一振り。しかし、それによって生じた突風と衝撃波が、飛びかかってきた異形たちを、そしてローブの男が展開していた黒い障壁ごと、後方へ吹き飛ばした。

「ぐあああっ!」

ローブの男は数十メートル先の建物の壁に激突し、そのまま崩れ落ちた。エリカは、その規格外の力に声を出せずにいた。

「今じゃ、姫さん!」

ガハハ・ナイトが振り返り、白い歯を見せて親指を立てた。エリカは立ち上がり、弾き飛ばされていた長剣を拾い上げた。

「ウチの笑顔、あんたが守ってくれるんやね。……ありがとう!」

エリカは剣を両手で構え、力を集中させる。彼女の全身から、眩いほどの銀色の光が放たれた。それは、この夜の暗闇を一時的に晴らすほどの光量だった。

「エリカ様!」

息を切らせて広場に駆け込んできたナイトゥが、その光景を目の当たりにして立ち止まった。その後ろには、大きな魔導書を抱えたセリアの姿もあった。

「いくで! 月華烈斬!!」

エリカが剣を振り下ろす。銀色の斬撃が広場を駆け抜け、残っていた異形たちを一掃した。炎の勢いが少しずつ収まり、静寂が戻りつつある広場。エリカは額の汗を拭い、ガハハ・ナイトに向かって笑いかけた。

「今日から、あんたもウチらの仲間や! 行くでナイトゥ、セリア、ガハハ! ウチらの反撃はこれからや!」

夜空を見上げれば、月が雲の隙間から光を放っていた。5年後、この空が灰色の雲に閉ざされ、光を失うことなど、今の彼女たちは知る由もなかった。

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爆裂疲れてる

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