第10章 いなくなる日
小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品
あらすじ
突如発表された「首都機能の出雲移転」。 日本中が混乱する中、それは遠いニュースのはずだった——地方の小さな町に暮らす遥にとっては。 しかし、カフェで働く日常の中に、少しずつ“変化”が入り込む。 移転関係者が現れ、人が動き出し、町の空気が変わっていく。 「選べる」という言葉に揺さぶられながらも、遥はまだ決断できずにいた。 やがて、周囲の人々が次々と出雲へ向かい、ついには店の店主・真琴までもが何も告げず去る。 残された遥は、初めて自分の意思で「行く」ことを選ぶ。 出雲で待っていたのは、“何もない場所”と、過酷な現実。 未完成の国家プロジェクトの最前線で、遥は肉体を削りながら現場に立つことになる。 そこで出会ったのは、過去の災害によってすべてを失い、「形に残すこと」に執着する現場責任者・真白。 彼女の背中に導かれるように、遥は“作る側”へと変わっていく。 しかしある日、現場事故が発生。 真白は他人を救い、その代わりに命を落とす。 悲劇の直後、それでも現場は止まらない。 「止めればすべてが止まる」という現実の中で、遥は問いを突きつけられる——逃げるのか、続けるのか。 そして遥は、再び立ち上がる。 真白の意志を引き継ぎ、自らが現場を回す側へと変わっていく。 一方その頃、東京でも静かに人材流出が進み、国家の重心そのものが移り始めていた。 これは、国家の転換点の物語であると同時に、 「選ばなかった人生」から「自分で選ぶ人生」へと踏み出す、一人の人間の物語である。
本文
※本作はAI生成を含みます。
朝。カフェ《灯》。いつもより早い時間。静かだ。人の気配が少ない。
少し違和感を覚えながら扉を開ける。——チリン。音が鳴る。返事がない。「おはようございます」声をかける。返ってこない。
店内を見る。誰もいない。「……あれ?」真琴がいない。珍しい。いつも先にいる。準備をしている。それが当たり前だった。
カウンターに近づく。整理されすぎている。荷物がない——いつも置いてあるものが、いくつかない。胸の奥で、何かがざわついた。
カウンターの上に、一枚の紙がある。白い紙。手書き。
遥は、それを手に取る。読む。
「先に行ってる」
それだけ。一行。余計な説明はない。理由も、時間も、何も書いていない。
遥は、しばらく動けなかった。意味は、すぐに分かる。考えるまでもない——出雲。あちら側。
「……嘘だろ」声が出る。否定できない。準備された店。減っていた荷物。すべてが繋がる。
真琴は、行った。もう、ここにはいない。「……何も言わずに?」その言葉は、誰にも届かない。店は静かだ。いつもより、ずっと静かだ。
〝ここ〟だったものが、少しだけ違う場所になった。
遥はゆっくり座る。カウンターの内側。いつもの位置。何かが欠けている。当たり前だったもの——それがなくなると、こんなにも違う。
「……なんで」理由は分かる。分かりすぎるほど——見てみたい。選ぶ。動く。全部、聞いてきた言葉。真琴自身の言葉だった。だから、止められない。最初から。ただ、言わなかっただけ。
遥は、手紙を見る。もう一度。「先に行ってる」
それは、誘いでもあった。説明ではない。決断の報告でもない。ただの事実——そして、残された側への問い。来るか。来ないか。それだけ。
遥は、立ち上がる。ゆっくりと。店内を見る。すべてが、少しだけ違って見える。同じ場所。もう同じではない。昨日までの形には戻らない。
「……そういうことか」声に出た。この流れ——待ってくれない。誰も。みんな、もう動いている。止まっているのは、自分だけ。その現実が、はっきり見えた。
遥は深く息を吸う。そして、吐く。決めるしかない。もう、時間はない。
「……行くか」声に出す。小さく。はっきりと。それが、最初の決断だった。誰かに言われたわけではない。流されたわけでもない。自分で選んだ。初めて。
遥は、動き出す。ここから先は、もう戻らない。自分で選んだ道として。