第12章 何もない場所
小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品
あらすじ
突如発表された「首都機能の出雲移転」。 日本中が混乱する中、それは遠いニュースのはずだった——地方の小さな町に暮らす遥にとっては。 しかし、カフェで働く日常の中に、少しずつ“変化”が入り込む。 移転関係者が現れ、人が動き出し、町の空気が変わっていく。 「選べる」という言葉に揺さぶられながらも、遥はまだ決断できずにいた。 やがて、周囲の人々が次々と出雲へ向かい、ついには店の店主・真琴までもが何も告げず去る。 残された遥は、初めて自分の意思で「行く」ことを選ぶ。 出雲で待っていたのは、“何もない場所”と、過酷な現実。 未完成の国家プロジェクトの最前線で、遥は肉体を削りながら現場に立つことになる。 そこで出会ったのは、過去の災害によってすべてを失い、「形に残すこと」に執着する現場責任者・真白。 彼女の背中に導かれるように、遥は“作る側”へと変わっていく。 しかしある日、現場事故が発生。 真白は他人を救い、その代わりに命を落とす。 悲劇の直後、それでも現場は止まらない。 「止めればすべてが止まる」という現実の中で、遥は問いを突きつけられる——逃げるのか、続けるのか。 そして遥は、再び立ち上がる。 真白の意志を引き継ぎ、自らが現場を回す側へと変わっていく。 一方その頃、東京でも静かに人材流出が進み、国家の重心そのものが移り始めていた。 これは、国家の転換点の物語であると同時に、 「選ばなかった人生」から「自分で選ぶ人生」へと踏み出す、一人の人間の物語である。
本文
※本作はAI生成を含みます。
降りた瞬間、空気が違った。
出雲。駅は、思ったより普通だった。新しくもない。古すぎもしない。地方の駅。それ以上でも、それ以下でもない。
「……ここか」遥は声に出す。テレビで見た場所。ニュースで騒がれている場所。そのはずなのに、目の前は静かだ。
人はいる。混雑しているわけではない。スーツ姿の人間もいる。観光客もいる。混ざっている。まだ、〝特別〟にはなっていない。
駅を出る。風が当たる。少し強い。空が広い。奥羽市よりも、少しだけ広く感じる。建物は低い。視界が開けている。
「……何もないな」正直な感想。〝これから〟の場所——それが、はっきり分かる。
道路。車はある。多くはない。店もある。並んでいるわけではない。余白が多い。それが、この場所の特徴だった。
遥はゆっくり歩く。特に目的はない。ただ、見る。この場所を。現実として。
しばらく歩くと、工事現場が見える。フェンス。重機。作業員。音がする。ここだけ、少し違う。動いている。
「ここか……」近づく。看板がある。「行政機能整備区域」シンプルな表示。意味は大きい。ここに、何かができる。これから。まだ何もない。着実に始まっている。
作業員が忙しそうに動く。誰も止まらない。誰も迷わない。やることが決まっている人間の動き。
遥は少し離れて立つ。見ているだけ。まだ、中には入っていない。ただの外の人間——その距離が、はっきり分かる。
「……来たんだな」実感が、遅れてくる。ここに来た。自分で選んで。その事実が、やっと形になる。
同時に思う。「で、どうする」目的はない。仕事もない。ただ来ただけ——それが、現実だった。甘くない。当たり前だ。来たからといって、何かが用意されているわけではない。
遥は空を見上げる。広い。雲が流れている。ゆっくりと。この場所も、同じように動いている。ゆっくり。着実に。
「……とりあえず、探すか」それしかない。仕事か。場所か。人か。分からない。動くしかない。
遥は歩き出す。知らない街を。知らない方向へ。それが、今の自分の位置だった——ゼロから。ここで。