第1話「音がバラバラな出会い」

小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品

📅 公開日: 2026/5/10 📚 シリーズ: 『Shine Stars』 📝 1,150文字 ✅ 全年齢

あらすじ

放課後の音楽室。まだ机の上には、ミオが使ったマイクが置かれたままだった。「……なんで逃げなかったんだろ」

本文

放課後の音楽室。

まだ机の上には、ミオが使ったマイクが置かれたままだった。

「……なんで逃げなかったんだろ」

天音ユウは、ドアの前で立ち尽くしていた。

普通なら関わらない。 関わる理由もない。

なのに――あの声が、頭から離れない。

『届けぇぇぇぇっ!!』

(……うるさかったのに)

心臓の奥が、少しだけ騒がしい。

そのとき。

ガラッ。

「おおー! ここが音楽室ですか!」

後ろから元気な声。

振り向くと、そこには朝比奈ミオが立っていた。

「えっ!? さっきの子!?」 「……」 「やっぱり見てたよね!? 絶対見てたよね!?」 「……別に」

ユウは視線を逸らす。

ミオは一瞬固まったあと、ぱぁっと笑った。

「ふーん! じゃあ運命だね!」 「……は?」

その瞬間、別の声。

「騒がしいな」

低く冷たい声。

教室の入口に、黒崎レイが立っていた。 ベースケースを肩にかけ、面倒そうにため息をつく。

「また変なの増えたのか」 「変なのってひどくない!?」 ミオが即ツッコミを入れる。

さらに――

「わぁ……ここが“バンドの部室”なんですね……!」

ふわっとした声とともに、白雪カノンが現れる。 お嬢様みたいな雰囲気で、目を輝かせている。

「ろっく……本物のロック……尊いです……」

「いや、まだバンドじゃない」 レイが即否定。

最後に――

ドタドタドタッ!

「すみません!! 遅れましたぁぁ!!」

勢いよく飛び込んできたのは夏川ソラ。 ドラムスティックを両手に持ち、汗だく。

「ここ、軽音部ですよね!? え!? もう始まってます!?」 「いや始まってない」

レイの声が冷たい。

ユウはその光景を、ただ見ていた。

(……なんだこれ)

バラバラ。

うるさい。

まとまりがない。

なのに。

なぜか――音が、聞こえる気がした。

「ねえ!」

ミオが手を叩いた。

「全員そろったしさ! バンドやろうよ!」 「は?」 「は?」 「え?」 「ええ!?」

一斉に声が重なる。

ユウだけが、小さく呟いた。

「……無理だろ」

ミオは真っ直ぐユウを見る。

「なんで?」 「……バラバラだ」 「うん、知ってる!」 「知ってるのかよ」 「でもさ!」

ミオは笑った。

「バラバラでも、音楽はできるよ!」

その言葉に。

一瞬だけ、音楽室が静かになった。

外では風が吹いて、桜の花びらが窓をかすめる。

レイが小さく舌打ちする。

「……くだらない」 「でも」 カノンがぽつりと言う。

「ちょっと、わくわくします」

ソラが手を挙げる。

「私、ドラムなら叩けます! 多分!」 「多分ってなんだよ」

ユウはギターケースを見た。

(また、始まるのか)

昔の記憶が、一瞬だけよぎる。

でも今は――

ミオが言った。

「ね、1回だけ合わせてみよ?」

沈黙。

そして――

ユウはゆっくりと、ギターケースに手をかけた。

「……1回だけだ」

その瞬間。

Shine Starsの“音”が、初めて動き出した。

ジャンル・タグ

,

作品統計

👁️ 閲覧数: 1 👍 いいね: 0 📚 本棚登録: 0

作者について